表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3.5章 白い連星、命の輝き
228/429

42 想定外

 恐らくマーカスはお得意の盤外戦術とやらで虎代さんを巻き込もうとしていたのだろう。


 山下さんは「ヨーコとカーチャ隊長の2人を天秤にかけさせる」という言い方をしていたが、実際はそんな甘っちょろいものではないだろう。


 何せそのヨーコたちの脱出計画にカーチャ隊長が手を貸しているという情報を伝えたのがマーカス。

 ホワイトナイト・ノーブルを奪った張本人なのだ。


 山下さんがそこまで虎代さんに伝えるかどうかは分からないが、どの道、虎代さんがログを確認してみれば今回のミッションの戦闘にノーブルが参戦していることは一発で分かる。


 ノーブルを奪った本人から「ヨーコとカーチャ隊長を天秤にかけさせる」という事は即ち、虎代さんに「そっちはどれほどノーブルを思っているのか?」という問いかけに等しい。


 私でなくとも動画配信サービスなんかの公式生放送でちょいちょい顔出ししている虎代さんがノーブルにご執心なのは良く知られている事。

 もちろんマーカスほどのプレイヤーならば山下さんから言われなくともその事を知っていてもおかしくはない。


 そりゃ別にヨーコを敵性NPCに成長させるにはヨーコの仲間たちを全滅させればいいだけで、護衛部隊に参加しているからといってカーチャ隊長自身には傷1つ付ける必要なんてないが、彼女の戦歴には傷が付く。

 もしかしたら今回の敗戦が彼女の精神に深く影響を及ぼすという事だって十分にあり得るのかもしれない。


 つまりマーカスは虎代さんに対してホワイトナイト・ノーブルの最も重要な構成パーツの1つであるパイロットを人質に取ったようなものだ。

 ノーブル自体はパクったままで。


 ところがどっこい。


 マーカスがヨーコとカーチャ隊長を天秤にかけさせようが、カーチャ隊長を人質に取ろうが関係無い。


 私だってあの人の事は嫌いではないが、それでも人にはできる事とできない事がある。

 そして虎代さんにHuMoに乗って敵と戦えというのはできない事だ。


 山下はそう言う。


「ホントはあの人にもランク6の専用機が用意されてたんだけどねぇ……。『ノーブルじゃなきゃ嫌っス!』とか駄々こねなきゃ……」


 当てが外れてあんぐりと口を半開きにしたマーカス。

 おどけて虎代さんのだいぶ誇張したモノマネをしてみせる山下。


 2人の姿を見て私は腹を抱えて笑い出してしまった。


 そんな中、ずしんずしんと重い振動が格納庫のコンクリートを振動させ、何事かと思い音の出所へと視線を向けると武装したセントリーが歩き出して駐機場のコルベット艦へと向かっていくところであった。


「よお、マーカス。もしかしてアレも想定外ってヤツか?」

「…………」


 さきほどと同じくマーカスの思惑が外れてしまった事を疑いつつも、さすがに今度は笑ってはいられなかった。


 セントリーをコルベットに載せるという事はアレがマモルたちの機体なのだろうが、その武装が問題である。


 最初、重く地の底から地面が震えているかのような錯覚を覚えるほどの振動が伝わってきて、私はその出所が細身のバランスタイプHuMoであるセントリーだとは思わなかったのであるが、見れば一瞬で納得がいくほどの重武装がセントリーには施されていた。


 2丁のバズーカを担いで機体各所のハードポイントにはバズーカの予備弾倉を取り付けた機体。

 亀の甲羅を思わせる重厚な背部オプション装備を背負った機体。

 リボルバー式のロケットランチャーやら大型ミサイルランチャーを装備した機体。

 正式サービス版ではまだ実装されていない事になっているハズの大口径スナイパーライフルを担いだ機体。

 背部バックパックに補助ジェネレーターを背負い、手には大型ビームカノンを担いだ機体。


 5人のマモルたちはよほどカミュやカーチャ隊長と共に戦える事が嬉しいのかガチガチの重武装をセントリーに施していたのだが、その重武装が問題なのである。


 バズーカにロケラン、スナイパーライフルにバズーカサイズの大型ビームカノンといずれも単発火力は高くても総弾数が少なかったり、射撃後のクールタイムが長い物ばかり。


 今日の戦闘を考えれば傭兵組合の輸送機やHuMoを蹴散らすのにあんな大火力は必要ない。ハッキリ言って過剰である。


 つまりは継戦能力の低さというデメリットばかりが目立つ事になるだろう。


 やはりマモルたちは数合わせというか、賑やかしにしかならないという事だろうか?


 これならまだVR療養所防衛戦の時に大隊長役をやってくれたヘンドリクスあたりを連れてった方が良かったのではないかという気がしてくる。


 だが意外にも格納庫から出ていく5機を眺めながらマーカスは何故かほくそ笑んでいるように見えた。


 まあ、コイツからしてみればマモルたちの事は自分のノーブルの他にカーチャ隊長とマサムネが無印ホワイトナイト、カミュの零式と爺さんのタケミナカタの穴を埋めるための戦力にしか考えていないのかもしれない。


 そういう意味では操縦技術に疑義のあるマモルたちが重武装構成で「やられる前にやる」を地でいくスタイルでいくのも納得というところであろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ