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ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3.5章 白い連星、命の輝き
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15 試製零式汎用HuMo

 カミュの乗るコルベットが加速して編隊から離れていく。


「コルベット1番艦に続いて編隊各機、転進!」

「各機、慌てるなよ! まだ敵機の有効射程に入るまで十分な余裕がある!」


 私たちの編隊では先頭を飛ぶカーチャ隊長のコルベットを一番艦としていた。

 最左翼のカミュが2番艦、最右翼の私の艦が3番艦という形である。


 その一番艦が艦体を左右に振ってバンクしてからゆっくりと右旋回を始めた。


 やはりカーチャ隊長もマーカスと同じように空中船団の各機長たちの練度に配慮しているようだ。


「23番、49番、51番、それから35番、機体を安定させろ! 慌てなくていい。ゆっくりと、精確に、だ!」

「17番、もう少し左によってやれ! 右隣と距離が詰まっているぞ!」

「8番、速度を落とし過ぎだ! 貴様が乗っているのは船ではなく航空機なんだ。翼が付いているんだぞ、速度を上げた方が機体は安定する!」


 カーチャ隊長のコルベットに引き連れられて方向転換を始めた編隊を後ろから見張るのは最後列にいるマーカスの役目。


 それにしても一体、アイツの顔に付いている目玉はいくつだったか?

 60機以上もの編隊全てに目を付けているかのように各機に指示を飛ばしていく。


「20番、貴様は速度を上げすぎだ! 副機長と一緒に少しずつ速度を落とせ!」


 まあ、そうせざるをえないというのも分かる。

 これまでやっと形だけの編隊飛行を行っていたのに、ただ一度の進行方向を変えただけだというのに各機はあっちにいったりこっちに来たりと慌ただしい。


 これではマーカスはマップ画面を確認する余裕もないのではないだろうか?


「カミュ君、ミサイルの援護射撃はいるか?」

「ハハッ! そんな心配なんかいらねっての! それよりオッサンはヒヨっ子どもをしっかり見守ってやっとけ!」


 データリンクシステムにより敵集団に向かっていったカミュのコルベットから送られてきたデータによるとカミュの艦はあと30kmほどで敵の先頭とかち合うようだ。


 その前にマーカスが援護射撃の必要性を問うが、一笑に付した少年の機体はコルベットから発進していく。


「随分と速いな……」

「サブリナさん、2番艦からの映像を1番モニターに出します」

「ああ、頼む」


 レーダー画面に表示されたカミュの零式があまりにも速くて驚かされる。

 零式はトヨトミ系の機体で、昨日見た時には増加スラスターの類は装備しているようには見えなかったのだが……。


 トヨトミ系の機体は小型故に機体性能はミニマムで、任務に必要な性能をオプション兵装で補うという常識からはあまりにかけ離れた光景であった。


 気を利かせた艦長役のアシモフが2番艦から送られてきた映像を艦橋天井の大型ディスプレーに表示させてくれるも、やはり降り注ぐ矢のように一直線に地上に向かっていくカミュの零式には増加スラスターは無い。


 そこでやっと編隊の微調整が終わったマーカスが解説を挟み込んでくれる。


「……どうなってんだ?」

「ああ、カミュの試製零式汎用HuMoはオプションパーツを用いる事無くサムソン系の機体と同等の性能になる事を目指して開発された機体だからね。詳しくは……、『雷撃ホビーワールド』の何月号に書いてあったかな?」

「なんだよ? お前、模型誌とか読む趣味あったのか?」

「そら模型誌にもプレモデルキットを使った作例と、ジオラマショートストリーとか載ってるからね。サブちゃんも出てこないかな~ってチェック済みだよ!」

「はいはい。お生憎様、こちとらそんな戦場やらに縁のあるキャラ設定じゃねぇんだよ!」


 私の記憶ならマンガ版の主人公機ことカミュの試製零式汎用HuMoはキット化されてはいないのだが、模型誌で雷電のキットを使った作例が掲載されていた事があったのだとか。


 私がカミュの機体を見てもすぐに気付く事ができなかったのに対してマーカスの方が先に気付く事ができたのは、私がマンガという二次元でしかあの機体を知らなかったのに対して、アイツは先に模型という3次元での立体物を目にした事があったからかもしれない。


「ほう。詳しいな。アレの事を知る者はそう多くはないというのに……」


 そういえばマーカスの野郎、確か「人たらし」とかいうスキルを取っていたっけ。


「さすがはマーカスさん。その歳になって傭兵稼業に飛び込むのもその見識があってのことという事か?」

「ふふっ……」


 パイロットスキル「人たらし」の効果はNPCの好感度が上がり易くなるというものだったハズ。


 それがカーチャ隊長にも通用するというのはスキル取得時に織り込み済みだったのだろうか?


 そんな事を考えていた私は天井のディスプレーが発した閃光によって一瞬でド肝を抜かれていた。


「い゛っ……!?」

「うん? ビームライフル?」

「ああ、あの機体は新世代の高出力ジェネレーターを装備していながらトヨトミ系らしく機体重量は軽いんだ」

「つまり機体自体にエネルギーをあまり取られないから武装に多くのエネルギーを回せると?」

「ふっ、そういう事だ」


 物分かりの良いように思えるマーカスの返事にカーチャ隊長も満足気に笑う。


 まあ、実際はマンガやら模型誌やらで事前に情報を知っていたというだけなのだが。


 そんな事より、コルベットから発艦し、スラスターを吹かしながら真っ直ぐに敵集団へと向かっていった零式はビームライフルで先制攻撃を仕掛けたのだ。


 敵集団は3機小隊が3つの計9機。

 最後段の3機小隊はランク2のキロbis、前段と中段の2個小隊はランク3から4の様々な機種のもの。


 だが理解できないのはカミュが撃ったのがこれから真っ先に接敵するであろう前段の小隊の機体ではなく、中段の小隊の機体であったという事。


 だが、それすらマーカスとカーチャ隊長の2人にはすぐに理解しうるものであったようだ。


「マーカスさんはどう見るかね?」

「真ん中の小隊の指揮官を1射で潰す事によって前中後の連携を絶つ。前列の3機とは1対3でも十分に戦えるウデと機体性能があるって自信の表れかな?」


 事実、中段の小隊の先頭を走っていたHuMoは上空から降り注いだターボ・ビームの奔流に貫かれて一瞬にして爆散していた。


 そして減速もそこそこに地上に降り立った零式はライフルを腰のハードポイントに固定して両手にそれぞれビームダガーに持ち替えると先頭を走る小隊へと襲いかかっていく。

ワイもな、ニムロッドを既製品のプラモを改造して作ってみようと思ったこともあったんや。できたら挿絵として使うつもりで。胸像と思えば頭と胴体だけあればいいやろみたいな軽い気持ちで。

MGとかRGとかには手を付けられるほどの腕なんかないからRe100のプロトタイプガンイージをネット通販で買ってな。

でも、ワイの腕じゃどうやってもガンイージやしモビルスーツなんや。

そんなわけでブン投げたわ!

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