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ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3章 騎士王討伐に備えよ!
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47 意外な決着

 さて、どうする?

 私の勝ち筋はどっちだ?


 前には銃剣付きのライフルを持ったニムロッドU2、後ろには機関銃を捨ててやってきたニムロッドU2。


 決まっている。

 先に倒すべきは前方のライフル持ち。


 私はスラスターも脚力も全力で駆けだしていた。


 やはり84mmバトルライフルの火力は脅威であるし、ライフル持ちのニムロッドのHPはだいぶ削られている。

 とっとと目の前の敵を片付けて1対1の状況に持ち込むのが手っ取り早い。


 だが当然、敵だって黙ってはいない。

 前から、後ろから。

 バトルライフルとマシンピストルの連射が(ニムロッド)へ迫ってくる。


「だあぁぁぁぁぁッッッ!! せぇぇぇぇぇい!!!!」


 全身のスラスターは全開のまま、私は姿勢を低くして足をわざと雪で滑らせ、あるいは爪先だけで大地を蹴り上げて思い定めた敵へと距離を詰める。


 ちょっとやそっとの被弾など気にしない。

 むしろ後ろから撃たれたマシンピストルの弾を非貫通で弾けたのがラッキーと思えるくらいだ。


 というか、あのマシンピストル、ちょっと距離を空けたくらいでもっとも装甲が薄いハズの背面すら撃ち抜けないほど貫通力が無いのか?

 まあ、あんな拳銃を一回り大きくしたような銃器で連射したせいで狙いがブレにブレてものすごく甘い入射角になってしまったのかもしれないが。


 拳銃も、ライフルも、ビームソードも、弾倉も、全ての装備を走りながら捨てた私は体を軽くしてさらに速度を増して敵の懐へと潜り込もうとするが、敵もライフルの先端の銃剣を突き出してくる。


 なるほど、ライフルでの銃撃からほぼ間を置かずに近接戦闘に以降できるのが銃剣のウリか。

 確かに個人技に自身アリのトップランカー連中ならば隙の小さい武装を好みそうなものだ。

 生憎と私の好みは一発逆転が狙えるようなデカいリターンが得られるようなものだから趣味は合わないな。


「シャオラっっっ!!」

 鋭い銃剣の突きを硬い体を捩じってなんとか躱しながらは私は跳ぶように、滑るように回り込む。

 正面から側面へ、側面から敵の背後へと。


 足が雪で滑り過ぎてそのまま転びそうになるが大地を殴りつけるよう手を付いてそのまま跳ね上がるように立ち上がる。


「へっ、トップランカーでもフレンドリーファイアとかするんだ……?」


 そのまま敵機を後ろから羽交い絞めにすると予想通りにマシンピストル持ちの連射が私ではなく羽交い絞めにしている敵機へと当たっていく。


 条件さえ良ければ背面でも弾けてしまうような弾だ。

 ニムロッドU2型の正面装甲は見事に全ての弾を弾いて跳弾させていたが、それでもさすが同士討ちは躊躇われたのかマシンピストルの連射は止んでいた。


 そして私は敵の右腋を通すようにして右手を差し込んで左手を掴む。

 そのまま腕を引くとまるでダンスのように敵機は無理矢理にこちらへと向きをかえられていた。


「これからどうなるか分かってればもう少し抵抗する事も考えたんでしょうけどね、っと。……とうッ!!」


 そのまま私はその場で飛び上がって両脚を揃えたドロップキックを敵機の胸板へと見舞う。


 《クリティカル! ニムロッドU2型:本ゴーヤを撃破しましたTecPt:14を取得、SkillPt:1を取得。》


 ニムロッドU2型の胸部装甲はひしゃげて潰れ、蹴りの衝撃はほとんどそのままコックピットブロックへと伝わりパイロットは即死判定を食らったのだろう。


 レインメーカー式ドロップキック。


 私の得意技(フェイバリッド)の1つである。

 元々は他のJKプロレスラーに対して体格的に劣る私が有効打を与えるために使っていた打撃技のバリエーションの1つ。

 キンシャサが打点をズラして虚を突くための技、シャイニング・ウィザードが機先を制して敵の行動を阻害しながら攻撃を加えるための技とするならば、レインメーカー式に無理矢理に攻撃を受けさせる条件を作って全体重を乗せたドロップキックを浴びせるための技である。

 いかに私の体重が軽くてパンチもキックも威力が無いとしても、全体重を乗せたドロップキックならばそれなりの威力が出せるのだ。


 なによりニムロッドU2型と今の私は体格的にほぼ同等。

 十分なダメージが期待できるのだ。


「さて、残りは1機。1対1ね……」


 得意技で敵を雪原に沈めた私は残る敵へと視線を向ける。

 すでに敵は先ほどまでの場所にはいない。

 だが私のレーダーセンサーは移動する敵機を捕捉し続けていた。


 敵は逃げたわけではない。

 敵は前へと進んでいた。

 かといって真っ直ぐ私に向かってきたわけでもない。


 敵はすでに倒れた僚機のバトルライフルを拾い上げて私に銃口を向けようとしていたのだ。

 もしこれが私の捨てたライフルだったならばロックを解除するのにいくらか時間を有するのだろうが、元々が味方の物ならば何の問題は無い。


 なにより厄介なのは敵のHP量。

 敵のHPは10,000以上。そして私に残されたHPは3,000もない。


 バトルライフルの単発火力1.250を考えれば2発の被弾までは許される。

 3発目の被弾をする前に敵を撃破しなければならない。

 ならばHPを削り切るというよりはパイロット狙いのクリティカルか?


 そもそも敵が拾ったライフルには十分に弾が残されているのか?


 敵ニムロッドと私の視線が交わり紫電を散らしているのではないかと錯覚するほどの緊張感。

 たとえここのゲームの世界の仮想現実だとしても身を震わせるほどの緊張感に私は歓喜していた。


 難民キャンプで戦った月光。

 姉さんとこのマサムネさん。

 果たしてヒロミチさんが「トップランカー」と称する目の前の敵は彼らほどの悦びを私に与えてくれるのだろうか?

 どうやって私を喜ばせてくれるのだろうか?


 だが、私は敵ニムロッドのアイカメラが私を向いていない事に気付いてしまった。


 その瞬間、私は爆発してしまっていた。

 あらゆる感情が一瞬にして沸騰し、私の理性という器を破壊しつくしていた。


「私と貴方の戦いに()()は関係無いでしょうがッッッ!?」


 私だってとうに気付いていた。

 私たちの上空、6,000mほどの高さを数十隻のフライング・シップが通過していたのだ。


 それらはいかにも航空機然とした輸送機や空間効率のみを追い求めたような箱型の物など形式は様々、それでも速度を合わせて南方から現れて北へと向かっていくのは同様。空中船団(コンボイ)とでもいうべきか?


 だが、それが何だというのだろう?

 私だってそんなものセンサー類が捕えている。

 でも私の敵は目の前のニムロッドU2型だし、目の前の敵だって倒すべきはただ私1人だろう。


 激情に突き動かされて私はまっすぐ一直線に敵へと飛び掛かっていた。


「私を、私を無視するな!! 私と戦え!! でなければ、死ね!!」


 敵も我に返ったのか私にライフルを発射。

 咄嗟撃ちにも関わらずに敵の砲弾は私の右胸の上、CIWSが格納されている辺りを撃ち抜いていた。


「そうだ! それでいい! 次はどうする!?」


 ったく、今回の対戦相手はゲームばっかやってる大学生のチームだったか?

 なら女性の扱い方も知らなくて当然か。

 ならばこちらからリードしてあげないとな。


 すでに距離は十分に詰めている。

 敵も射撃で私を仕留めるのは諦めたかライフルを小脇に抱えるようにしてから機体のスラスターと脚力を乗せた突きを繰り出してきた。


「おいおい、そら駄目でしょお? 味方が同じ事して躱されたのを見てなかったかしらぁ?」


 突き込まれた銃剣付きライフルの砲口近くを私は掴んでいた。

 もちろんそのまま銃を撃たれてもかなわないので砲口の前には体を置かないようにズラしつつローキックで敵の膝関節を破壊。


 どうやらHuMoの間接は人間に比べて脆いようだ。いや、硬いが粘りが無いというべきか?


 そして崩れ落ちる敵機からライフルを奪って私は両手でもったライフルの銃床を敵の頭部へと叩きつける。


 そのまま大地に倒れた敵の後頭部を、背を、思いの限りを乗せてストンピング風に踏みつける。

 何度も。

 何度も。


 背部バックパックの装甲面が割れた箇所に持ち替えたライフルの銃剣を突き立て、それからまた頭部であった残骸を踏みつける。


≪ニムロッドU2型:ケンジを撃破しました。TecPt:14を取得、SkillPt:1を取得≫ 

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