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ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3章 騎士王討伐に備えよ!
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25 私のポジションは……

 中山さんからのメールの内容は「私もメンバー探しを手伝いましょうか?」というもの。

 丁度、4人目のメンバーが見つかったばかりだと返信すると中山さんも顔合わせのためにこちらに来るという。


 ならばクリスさんも機体の用意をしてきたいという事で1時間後に同じ居酒屋で再び集合という流れになる。


 私とヒロミチさん、アシモフはただ待っているだけだったので適当にこれまでやってきたゲームの話なんかをしながら集合を待つ。


 最初にやってきたのは中山さんとトミー&ジーナの兄弟。

 それから近くのマンガ喫茶で待機していたマモル君が到着する。

 それから栗栖さんが集合時間まで後5分というところで到着。メディカルポッドにでも入ってきたのかすっかりと酔いは抜けている。


「あ~、このゲームでのハンドルネームはヒロミチでやってる。相棒はこのポンコツ。機体はランク3の烈風。一応、β版からやっているんで分からない事があったら聞いてくれ」


 最後にやってきたクリスさんにコーラが運ばれてくるとヒロミチさんが音頭を取って自己紹介を始めた。


 彼の横に座るアシモフがタブレット端末からヒロミチさんの烈風のホログラフを出して一同に見える位置に置く。


 それにならって次はクリスさん。

 アシモフにホログラフの出し方を教えてもらいウライコフ系独特のシルエットの機体の立体映像を烈風の隣に並べた。


「私はクリス。乗機はランク4のカリーニン。と言っても、ついさっき買ってきたばかりなんだけどな。相棒はガレージに引きこもってるんでそこらへんはヨロシク」


 それに続いて事前にホログラフをジーナちゃんが用意しておいた中山さんが続く。

 こういうとこを見るとジーナちゃんは兄のトミー君よりもしっかり者なんだなと感じる。


「サンタモニカでごぜぇますわ。今回のイベントは基本的にはランク4の紫電改を、場合に応じてランク3の双月カスタムⅡとランク2の雷電重装型を使い分けようと思っております」


 最後になったのはマモル君がホログラフの用意に手間取っていた私。


「で、私がランク4.5のニムロッドってわけね」


 とりあえず私も「ライオネスです」というところから始めようかと思ったものの、そういえば私だけはこの場の皆がハンドルネームを知っているのを思い出して変に思われるかと思って止めておいた。


 それからはフライドポテトなんかを摘まみながら互いの機体の事について話をする。

 アルコールを抜いてきたクリスさんだけではなく、先ほどまでビールを飲んでいたヒロミチさんもアイスコーヒーに切り替えて真剣なまなざし。


「ヒロミチさんの烈風が持ってる銃ってどういうヤツなんでごぜえますか?」と中山さんが聞けば「課金機の飛燕から取り外してきたヤツだよ。ランク5の武装だけど、口径が小さい分、単発火力は低いけど連射間隔は短い」と返し、今度は逆に「君の雷電重装型はどんな構成?」と聞かれて中山さんはもう1台のタブレットに雷電のホログラフを出してミサイル主体の構成である事を説明する。


「そういえば、クリスさんの機体のライフルってどうやって固定しているんですか?」


 私が気になっていたのはクリスさんのカリーニン。


 深い紫色一色で塗装されたその機体の胸部に折り畳み式のショルダーストックが特徴的なライフルが固定されていたのだ。


 そんなトコにライフルを固定してしまったら、一々、ライフルを取り外さなければコックピットハッチも開く事ができないだろう。


「ああ、これはバックパックの左肩の部分と右腋の部分に高速ウィンチを付けているんだ。ウィンチから伸びたワイヤーがライフルに取り付けてあって、銃から手を離した時にウィンチが作動して胸部に固定されるようになっている」

「ああ、弾切れの時にすぐに拳銃に手を伸ばせるように?」

「そういうこったな」


 カリーニンの腰部サイドアーマーには左右それぞれ1丁ずつの大型拳銃が取り付けてある。


 武装を変更する時に「ライフルをハードポイントに固定する」という動作をウィンチに任せる事で瞬時に拳銃に手を伸ばせるようにしたというわけだ。


 もちろんウィンチが無くとも一時的にライフルを捨てる事で同じような事はできるが、その場合でも再びライフルを使いたい時にはライフルを拾い上げる動作が必要になってくるわけだからやはり手放さないに越したことはないという考えなのだろう。


 そしてひとしきりの話題が出た後で、ヒロミチさんがまるで決まりきったかのように自然な流れで呟いた。


「……となるとライオネスさんのニムロッドが中距離での援護役か」

「え……?」


 その言葉はあくまで私にとっては予想外なものであったが、ヒロミチさんは何の悪気も無いように、いや、むしろなぜ私が驚いているのか疑問であるかのように話を続ける。

 まず自分の烈風の立体映像を指差して。


「俺の烈風は大量のスラスターを装備して敵を引っ掻き回す役……」


 うん。それは分かる。

 彼の烈風の機動戦術の頼もしさもつい先日、私自身で納得させられていた。


 そして彼は続いて中山さんの紫電改とクリスさんのカリーニンをそれぞれ指さした。


「クリスの機体はアサルトカービンとハンドガン2丁、これは距離を詰めての戦いに向いている構成だよね?

 で、サンタモニカさんの紫電改はサブマシンガンにオリジナルの大剣。こっちも接近戦用の武装……」


 うん。これも分かる。

 最後にヒロミチさんは私のニムロッドを指差した。


「となるとフォーメーションを考えた時にバトルライフルを装備したニムロッドが援護役になるのが妥当じゃない?」


 ……うん。これも理解できた。


 ニムロッドが装備する84mmバトルライフルは単発火力が大きいだけではなく、砲身が長いために砲口初速と弾道特性に優れ、砲弾の重量も大きい分、貫通力の距離減衰は他のメンバーが装備する銃器に比べて小さい。


 β版で存在していたスナイパーライフルに比べればそれらの利点は小さいものではあったが確かに存在する長所を捨てるのもどうかと思う。


 ただ……。


「いやぁ~……、私、援護役とかやったこと無いんスけど……」

「おっ、良かったじゃないか。経験を積む事ができて。援護役をやってみれば他の人がどう考えるかというのも分かるんじゃないか? 味方の援護をもらいやすいように動く事を考えるのも大事だと思うよ?」


 確かに彼の言う事はいちいちもっともであった。


「俺たちは目指す先はもっと遠くにあるんだろ? 今回のイベントで楽して勝つ事だけ考えてたってしょうがない。そうだろ?」


 まったくもって反論の余地が無い。

 事実、私自身、彼の言葉で発奮してこれを機にステップアップをしてやろうという気もあるのだが、それでも不安が拭いきれないのだ。


「それにほれ。ニムロッドならピンチに陥った味方のとこに駆けつけるにしても、少しくらいの被弾くらい平気で戦えるだろ?」

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