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ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3章 騎士王討伐に備えよ!
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22 金曜日

 そして金曜日。

 明日からのイベントに対し、私たちのチームメンバーはまだ3人しか決まっていなかった。


 残りは1人。


 イベントの成績は第一に勝利数、第二に勝利数が同数だった場合として勝率が使われるため、イベント期間中はとにかく固定メンバーでどんどん戦闘をこなしていくしかない。


 そういうわけで残り1人とはいえ、4人揃っていなければ意味がないのだ。


 さらにいうなら、残り1人はそれなりの腕前であることが求められる。


 以前に攻略WIKIの掲示板を見た時に分かった事だが、β版経験者でイベント入賞を狙っていく者たちはβ版経験者を求める傾向があるのだ。


 私としてはそういうのはどうかと思うが、それでもその理由は理解できる。


 戦闘経験豊富なメンバーでチームを固めてしまえばそれだけ勝利の可能性が増えるわけだ。逆に不慣れな者がチームに混ざってしまえばそいつがチームのウィークポイントになり、ひいてはチーム全体が勝利が遠ざかってしまう。


 中山さんが今も一人でミッションをこなして技量を磨いているのも自分が重荷にならないようにとの彼女なりの努力だ。


 だが、いかに腕前を磨いたところで私と中山さんが正式サービス開始後からプレイを始めた者だという事は変わらないわけで、それが足かせとなってメンバー募集は芳しくない。


 だが、朗報はヒロミチさんからもたらされた。


 中立都市内の喫茶店へと呼び出された私はイベント前日だというのにいまだメンバーが決まっていない申し訳なさで彼の顔をしっかりと見れないほど。


「やあ、呼び出してゴメンね」

「いえいえ。それでどうしました?」


 てっきり私はヒロミチさんに「やっぱ他の人に誘われたからそっち行くわ」とか言われるのだろうかと思いながらコーヒーゼリーを嬉しそうに頬張るマモル君を横目で見ていた。


「ああ、それじゃさっそく本題なんだけど、残り1人って決まったかい?」

「すいません、これといって。上位入賞を狙うとなると中々……」

「なるほど、そりゃ都合がいい」

「え?」


 彼の予想外の言葉に私は思わず顔を上げて向かいの席に座る男の顔を見た。

 ニンマリと笑うヒロミチさんはどこかホッとしたようでもあり、むしろまだ面子が決まっていなくて良かったとでも言わんばかり。


「ちょっと誘ってみたいヤツがいるんだ」

「というと、もしかしてβ版時代のフレンドさんとかですか?」

「いや、そういうわけじゃない。このゲームは正式サービスが始まってからだし、なんなら戦闘はほとんどやっていないんじゃないかな?」


 私はどういう顔をしていたのだろうか?

 落胆、疑念、予想外。その他もろもろの感情の入り混じった私の顔を見てヒロミチさんはクスリと笑って「安心しろ」と言わんばかりの笑顔を見せる。


「まず、そいつは仕事をクビになったばかりで週末のイベントにはがっつりと時間を割ける」

「まあ、それはありがたいですけど……」

「で、ここからが肝心なんだが、そいつはVRタイプのゲームが出てくるまで流行ってたFPSとか、初期のVRゲームで無類の強さを誇っていたプレイヤーなんだ」

「ほう……」


 彼の言葉を聞いて私は俄然そのプレイヤーに興味を引かれていた。


「様々なFPSタイトルを渡り歩いて、いずれのタイトルでも結果を出していたけど、長期間拘束されるようなイベントだと入賞できていたのは大学に入るまでかな? その後もチラホラと色んなゲームタイトルに首を突っ込んでは存在感を出してはいたんだがな、リアルの仕事が忙しかったらしくて……」


 で、そのプレイヤーが仕事をクビになって暇になったというわけだ。


「うん? でも、おかしくないですか? そんなプレイヤーがいたら他の人も黙ってないでしょう?」

「その事なんだがな。理由は道すがら話そう」


 そんなプレイヤーがいたら他の人たちからだって引く手数多だろうに。


 私の疑問を残したまま、マモル君のメロンソーダを飲み終えるのを待ってから私たちは呼び出した無人エアタクシーに乗り込んで喫茶店を後にする。


 ヒロミチさんは聞きなれない店舗名を音声入力装置に入力するとタクシーは宙に浮かんで走り出し、それから彼は話の続きを語り始めた。


「まあ、なんていうか、そいつ、仕事をクビになってやさぐれているっていうか……」

「はあ」

「いや、そいつとしてはあくまで現実(リアル)が大事で、ゲームはあくまで暇潰しだって言ってたのに、そのリアルの仕事をクビになっちまってな」

「まあ、分かりますよ」

「で、仕事をクビになってから、()()に入り浸っているってわけよ」


 すぐにタクシーは目的地に到着して道路脇に効果する。


 目の前にあったのは「パーラー テンゴク」とネオン管で装飾がなされた昭和チックな外装の建物。


「って、パチンコ屋じゃないですか!?」

「……そうなんだよなあ」


 てっきり店名に「パーラー」なんて付いているものだからフルーツパーラーかなんかだと思っていたのだけれど……。


 まあ、ただでさえ爛れた遊びだというのに、IRのカジノがオープンして以降、斜陽の業界であるパチンコなんてやさぐれた者の絶好の溜まり場であるように思える。


「はあ……。こんなトコにその『2丁拳銃のクリス』が?」




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