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ミュージカル

「はいどーもー、勇者のくせにハーレム嫌いって珍しいな、て褒められましてね、複雑な気分の勇者でーすよろしくおねがいしまーす」

「僕っ娘も王女もええねんけど、魔族ってわかりづらない?て思いまーすよろしくお願いしまーす」

「痛いところついてくるね、お前」

「はいそんなでね、僕ら、ハーレム狙いな召喚勇者と魔族な僕っ娘王女様、ていうコンビでね、やらせていただいてるんですけど」

「俺、別にハーレム狙ってないし、全部コイツの陰謀なんですけどね」

「そこやねんな」

「何、どしたどこにひっかかったん?」

「普通の漫才師と(ちご)てな、僕らには設定あるやん」

「設定っつかまあ、なんつうかな」

「普通の漫才コンビって設定なんかないやん。舞台の始まりから設定あるのってコントやん」

「まあコントはシチュエーションの中の笑いやからな」

「せやからコントの場合て、しょっぱなに説明するやん」

「説明せんでも、自然に設定受け入れられるよなんが上手いコントの入りやね」

「そんで、僕等もめっちゃ説明必要やん」

「そら普通、勇者と王女が漫才するんは、多少の説明要るんちゃう?」

「説明してる時点でアカンやん、そう思わへん?」

「それはそう思うけど、むしろ俺らって、勇者と王女がわざわざ漫才してるとことか、そこで笑いとってんねんからさ」

「それって、シチュエーションで笑いとってるやん」

「逆に、何も説明せんかったら笑えんやろ。なんも知らんお客さんの前でいきなりハーレムの話とか出来へんやん」

「お客さんがコンビ名見て、だいたい分かってくれてたらええけど」

「逆に、一気に情報詰め込み過ぎてわけわからんくなるかもしれんし」

「そやからね」

「うん」

「僕ら、実は漫才やってへんのと違うかって!」

「そしたら今俺らは何をしとんねん」

「コント、勇者と王女の漫才!や」

「わかりづら!どっちやねん」

「大枠としてはコントなんちゃうんかな、て」

「どっちでもええやん」

「コント集団ならコンビ名ちゃうくて、ユニット名て言うべきなんかな?て」

「どうでもええわ〜」

「大事やん!」

「どこが!二人やったら集団違うしコンビでもええし!」

「コントやったら他にも困るとこあんねん」

「俺は何も困らんけど」

「エーエムワンって奴狙われへんくなるやん!」

「待て、どやって狙うつもりか言え!」

「エーエムワンってなんで漫才コンクールそんな真夜中にやんねん!」

「そのボケわかりづらいし名前間違って覚えてるやん」

「そんでキングオブ・コントンって奴ねらわなアカンくなるやんか!」

「それも名前微妙に違うよ?」

「なんやねんカオスの王様って!」

「お前の覚え方がカオスやねん!」

「そらまあ、うろ覚えやから」

「狙ってるのがうろ覚えてどないやねん」

「寝る前にちょいちょいーって調べただけやから」

「なんでお前そんな事ばっか調べとんねん」

「そのエーメンだかキンゴンコンコンで優勝して、もっと売れたいんや僕は!」

「名前どんどんおかしくなってくな」

「あやっぱ違うんか、どんなんやったっけ?」

「それはええわ。そんなん、せいぜい二、三回戦いけたらええとこちゃうの俺ら」

「そんな向上心の無い気持ちでは、勝たれへんやろ!」

「出場するなんて聞いてなかったからな!」

「つうわけでな、エーメンゴンコン!とやらで勝てる漫才を考えよと思ってな」

「間違った上で混じりきってるわ」

「だって思い出されへんもん」

「まあしゃあないな」

「そんでな、僕がお客さんとして見てあげるから、自分漫才師やって?」

「お前どんだけ頭沸いてんねんオカシイやろ」

「何が」

「俺が一人で漫才やりながら、お前がお客さんやるのを、お客さんがただ眺めるんか?どこも面白くないぞ」

「あ、そや、お客さん既にいらっしゃるもんな」

「おいお客さん使おうとすんのやめろ」

「え、折角やし」

「こら。お客さんの前で練習とか絶対アカンからな」

「なんで?」

「勝てる売れるの前にな、しっかりプロ意識もてやお前!」

「自分一人で漫才やるとこはええんかそんで?」

「それは後でツッコミいれるとこや今言うな!」

「なんや、しっかり乗ってくれる気ではおったんやな?」

「都合のいい解釈やな」

「そやって文句言いながらついてきてくれるんは、嬉しいよ?」

「やめろそれも客の前でやるな」

「もー、自分のが我侭やん、困るわ〜」

「お前の手綱握らされてる俺は困るどころの話ちゃうねんぞ」

「じゃじゃ馬慣らしって定番やろ」

「シェークスピアをボケに使うな」

「なんで?インテリっぽくてええやん?」

「読んだことない人がポッカーンするだけやろ!」

「魔族の僕ですら読んでんねん!読んでない方が悪いわ!」

「知らんネタ言われても面白くないやろ!」

「僕は知っとるもん!」

「お客さんまで敵にまわすな!その我侭振り切れ具合、一体俺にどう対処しろちゅうねん!俺が何が悪いことしたか!なんで俺が悪いみたいな顔でみる!?全部お前が悪いんやろ!どう思われます!?おかしいでしょう!思うでしょ!なぜって!」

「そんなお客さんに向かって手え振って怒鳴ったらアカンやん自分」

「怒鳴ってへんねん。全力で助けを求めとんねん」

「そんな困ってんの?何に?まず、僕に言うて?」

「いやそらもうお前に困っとるって言うてるやん」

「しかも、なんでそんな急にミュージカルっぽく叫んだんや自分?」

「そこまでぎょーぎょーしくは言ってないやろ!」

「なぜ!とか普段絶対言わへんし」

「それが俺の魂の叫びなんじゃ!」

「じゃあ自分、そこミュージカルっぽく言うてみ?」

「なああああああぜえええええええ!」

「同じやん」

「全然違うやろ!」

「え、わからん」

「わかるやろ!俺の魂の叫びがこれじゃ、んんん、なぜ!」

「ふんふん」

「ミュージカルっぽいんはこうや。なああぜえええ!」

「そもそもな」

「なんや」

「肺活量が足りんな」

「そら俺まともにミュージカル役者狙ったことないからな!あくまでフリや!」

「動きもなんか違う」

「なんやミュージカルの人っぽく手え伸ばしてるやん」

「背筋が曲がってるし手もちゃんと伸びてないし」

「細かいな」

「自分もっと鏡の前で練習せな」

「一応鏡の前ではしてるっちゅうねん!いやちゃうわ!なぜの言い方や!それもちがう!なんでミュージカルやってんねん俺!」

「僕のボケに自分が乗ったから」

「俺のせいやんけ!」

「ボケた僕のせいにせんとこ、好きやで」

「くっそ、ノリツッコミはアカンな」

「自分で答えみつけられてえらいなあ、自分」

「その、小馬鹿にしてくるノリ、めっちゃ腹立つんやけど」

「ごめんて。けどノリがええ人も、僕好きやで」

「そんなん要らんねん」

「けど、好きやで」

「その後黙ってジッと俺の目、見にくるまでお前の手やな!知っとんねん!」

「そんなん、顔逸らしたまま言われても、かわいいな自分」

「なんなんそれ?」

「ほら、顔赤なってんで」

「あーかーくーなーいー」

「お、それミュージカルっぽいな」

「そんなことなーいーって語尾伸ばしてるだけや」

「僕の事ホンマはすーきー?」

「何を言っとんねん」

「けどホンマは?」

「すーきーって言うか!なんでミュージカルやねん漫才や漫才しとんねん!」

「ちゃうでコントかもしれん」

「ほんとうに、それ、どっちでもええから!」

「しかも今回この流れやと実はミュージカルかもしれん」

「え?」

「ミュージカル、ハーレム勇者と僕っ娘王女様の一幕かもしれへんやんか」

「どんなミュージカルやねん筋書きがわけわからんやろ」

「多分な、僕が攫われた王女様やねん」

「そんなタマか」

「ああ、まだ見ぬ勇者さーまー。どうか私をたーすーけーてー」

「歌わんでええ!」

「そや歌ってる暇あったら自力でにーげーなー!」

「ああもう好きにしろや」

「ちゃうわ自分、ちゃうよ」

「なんやねん」

「僕自力で逃げ切ってまうから、可愛い僕っ娘王女様にしかならん!」

「どーいうこと」

「自分が出演する理由がない!」

「ええよ、俺ミュージカルあんま知らんし」

「僕もあんまわからんし助けて?」

「どーすんねん!知らん同士でミュージカル始めてもうたやん!」

「どうにかなーるーわー」

「なーらーんー」

「どうしーてー」

「やめろ!」

「なーんー」

「やめい!(うと)てる(てい)なだけやん!語尾伸ばしてるだけやこれ!」

「そーれーがーどーうー」

「そんで長いねん、いちいち!」

「そやな歌うのは少しだけにしとこか」

「一切、歌わんでええねん」

「わかった、そしたら捕まって逃げたけど追っ手を振りきれんことにしよ」

「筋書き、続ける気やな」

「どうしよう、囲まれちゃった。逃げきれない!」

「ん、なに?」

「もう始まってんねん」

「え、ああ追っ手の話?」

「どうしーよーうー」

「歌う時点で、絶対余裕あるやん」

「違う、そこに自分が現れんねん、ハーレム勇者の登場や」

「とう!勇者参上!」

「ちゃうよ!そんな変身ヒーローみたいには出て来いへんから」

「そか」

「あとハーレムもちゃんと言うて」

「ハーレムは要らんと思うねんけど勇者だけでええやん」

「後々必要になんねん、いいから、颯爽と現れて自分」

「どんなんやねん」

「いつもみたいでええよ」

「はいどーもどーもハーレム勇者ですよろしくおねがいします!」

「それも違う!オフに、街中でナンパしてる時の自分でええねん」

「誰の話や!」

「自分やん」

「ナンパなんてしたことないって!」

「してることにして、そんな感じでお願い」

「むちゃくちゃやぞ、ええと、そしたらお嬢さん、どうしました?」

「あらすーてーきー、どーなーたーかしらー」

「歌が面倒いな」

「すーごーくすてきーなー、ぶさいくー」

「お前殺すぞ」

「たーすー、やっぱ歌うの面倒やな」

「お前が諦めんなや!」

「面倒い」

「なんでやねん!そんで不細工とか歌でも言うな!」

「素敵なって言うてる。自分のこと褒めてるし!」

「不細工つけたら悪口!」

「え!?」

「そこビックリするとこちゃうぞ」

「そしたらどしたらええの?素敵な恰好悪い人?」

「お前シバき倒すぞ何やそれ。薄笑いで言うなや」

「ふふ、かわいいな自分」

「なんなん!話通じひんのめっちゃ怖いんやけど」

「助けて下さい!」

「そんでなんでこのタイミングで続き始めんねん。どーしました!」

「追われてるんです!」

「誰に!」

「パパに!」

「んー逃げんとこか?」

「嫌です!もうパパにはうんざりなんです!毎日毎日勉強勉強って」

「親と喧嘩した娘さんやん」

「そう!僕もう、家出したろ!て思って逃げてきたんです!」

「俺、お前止めるしかないやんけ」

「なんで」

「未成年の家出助けたら最悪誘拐んなんねん」

「誘拐された勇者が魔王の娘を誘拐し返すんですか!?」

「は?」

「僕を誘拐して!ハーレムの一員にする気なんですか!」

「なにこれ」

「酷い!パパからも逃げられず、ハーレム勇者に攫われ!」

「一ミリも筋がわからん」

「それでも私は自由に生ーきーたーいー!」

「歌やめい!」

「なんで、良いストーリーやろ」

「なんか俺悪者扱いやんけ止めろ止めろ!」

「めっちゃ面白そうやん」

「どこが面白そやねん」

「そらわかるやろ。窮屈な暮らしに耐えかねた王女様をな」

「出だしからベッタベタやん」

「悪い勇者が誘拐すんねん」

「おかしいやろそれ」

「僕との出会いは誘拐やけどな」

「そこもベタやん」

「僕を助け僕に助けられ、一緒に暮らすうちに芽生える愛」

「だから未成年の女子と親の承諾なく一緒に暮らしたらアカンねん誘拐やねん」

「愛に目覚め、改心するハーレム勇者」

「そんなベタな展開のためにわざわざハーレム残したんかい」

「しかし二人の幸せは長く続かんかった」

「それ言い方すらベタやぞ」

「迫り来る父親と、ハーレムに誘われる新たな女の影!」

「おどろどろしく言うてるけど、メロドラマやん」

「突如鳴り響く警察からの電話!」

「えなんで?」

「次々と殺されるハーレム候補!」

「うそん!」

「そしてアリバイの無い勇者が捕まる!」

「え待って待って。俺犯人?」

「僕は無事、恋人を警察から取り戻し!」

「あ何か一応助けてはくれるんや」

「迫る敵を物理的に排除して勇者を独占できるのか!」

「真犯人!」

「ほら!壮大なドラマ!面白そやと思わん自分も?」

「メロドラマがいきなり最後ミステリっぽいやん」

「お前が犯人、かーなー?」

「だから歌わんでええし、指ささんでええし、聞くなそれを!」

「指も背もピンと伸びて、ミュージカルっぽいやろ?」

「そんなんどうでもええわ、お前犯人ちゃうん!?」

「なんで!僕にはちゃんとアリバイあんねんぞ!」

「しーらーん!俺探偵ちゃうし、推理できるほど材料ないし!」

「ふふ、それでも、僕が犯人やって気づいてしもたんやね」

「推理してへーん!」

「そやで、僕、最初から皆殺す気やってん」

「怖いしちょっとありそでホンマに怖いし!」

「それもこれも皆、自分が悪いんやで!」

「なんでやねん!」

「僕と言う正妻がおって、なんであんな変な女ばっか連れてくるん!」

「どんなんや!」

「全部劇場の出待ちで引っ掛けた女ばっかで!」

「まてもう漫才師に戻ってるやんけそれ!」

「もう、自分を殺して!」

「あ、なんかそれベタやな」

「僕もしーぬーほーどー、あーいー」

「そやから歌うなっちゅうねん!もうええわ!」

「ありがとうございましーたー!」

「歌うな!」

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