第二十四話「湖と情報」
「とにかくここを出ることを考えよう。話はそれからだ」
そうだね、と小味は頷いた。
いつの間にか他の子ドラゴンたちはいなくなっていた。
それからしばらく小味、カリマ、怪我をした子ドラゴンは歩いた。
どれくらい歩いただろうか、気づいた時には湖のような大きい空間に出ていた。
周囲は水で覆われていて中央の真上には地上に出られそうな空間が空いていた。
「見てみて、あそこから出られそうだよ」
小味は嬉しそうにそう言った。
「そういうのはまだ早いみたいだぞ」
カリマは普通の空間ではない異変を感じていた。
それは、とある匂いであった。
火薬の乾いた鼻に来る匂い。
左目を撃たれた時に感じた匂いが空間に充満していた。
「よう、また出会ったな」
すると以前に会ったまた悪い男性が脇道から出てきた。
手にはピストルを持ち、こちらを向いている。
「お前は! どうしてここに」
小味を後ろに遠ざけてカリマは前に出た。
「ここは俺達の根城なんでね、地上や地下を行き来してるってわけよ」
「俺達? 他に誰かいるのか」
「なんだ貴様ら」
中央の外へ出れる空間より少し奥の岩場から見覚えのあるドラゴンが出てきた。
それはまさしく先程の黒いドラゴンであった。
「あのドラゴン悪い奴だったのか」
カリマはそう呟くとゆっくりと姿を見せている黒いドラゴンを見続けた。
「貴様、さっきの人間の小娘とつるんでた奴だな」
黒いドラゴンはようやく岩場から全姿を現した。
「そういうあんただって人間とつるんでるようだが?」
銃を持ってる人間と仲間だと思わせるのでカリマは問い詰める。
「なぬっ。どこに人間がいるというのだ」
黒いドラゴンは周囲を見渡す。
だが、カリマの近くにいた銃を持ってた男性はとっくにいなくなっていた。
「逃げ足の速い奴め」
「そんなことより先程も先生の顔をそんなに見たくてここまで来たのか?」
「先生ということはここは竜校か?」
カリマはそう聞くと黒いドラゴンは少しずつ自分の後ろを気にしながら動き出した。
すると先程の子ドラゴンたちが後ろから出てきた。
「いかにも」
「そうだったのか。最初ここに来た時薄っすら思い出したんだ。他のドラゴン達は忘れているからな」
「貴様さっき何て言った?」
「最初ここに来た時」
「違う。忘れてると言ったのか?」
「そうだ」
「それはおかしい。私はこの子達を卒業する時大人になっても忘れないようとある注射をしている」
黒いドラゴンからそういわれるとカリマは驚いた。
「何だと!?」
「驚くのも無理ない。私以外のドラゴンで伝えたことはないからな」
「じゃあ、何で他のドラゴンたちは忘れているのだ?」
「それは分からん。何か原因があるとしか私は考えられん」
黒いドラゴンはお腹の底から深く息を吐いた。
二十一話で最初に登場したドラゴンの謎も銃を持った男性も地上でカリマたちを突き落とした女性もどうこれからのお話で繋げて登場させるか考えてます。
なるべく戦いにさせないように考えてますが、どうしても書いていく内にそうなっちゃいますね。
小味とカリマも無事に旅をさせたいですがまだまだ先になりそうです。
それでは。




