だりぃ
少年少女が大冒険をするのは、小5、中2、高2がベストだと学会でも専らの定説である。
もう既に自我が確立し、新しい環境にも慣れ、卒業が差し迫っている訳でもない。ただ漠然と、漠然とした未来に思いを馳せるだけの空白地帯。
県市から北西にしばらく離れた軛村から、帝は高校に通っている。便の悪い列車に揺られること数時間、故に部活動なりなんなり、県市内でのあれこれに興じる時間的な余裕はほとんどない。
そんな帝にとってよくつるむ相手は、大体同じ方面に帰宅し、大体同じような気怠い放課後を貪っている篝と鼎だ。グレていると言えばグレてるし、そうでもないと言えばそうでもない。そういうラインの三人。
「帝ってさあ、将来なにやりたい訳?」
騒々しい寂れた駅前のゲーセンで、中学生たちが戯れ合いながら太鼓を叩いているのを見るでもなく眺めつつ、股ぐらを掻きながらなんのけなし篝が聞いた。一般的なレディの作法としてはしたないとされる範疇である。
「大雑把な質問、好きだよなみんな」
「でも、大雑把に聞くしかないじゃん。未来のことなんて誰も分からないんだし」
「その通りだ。だから俺に聞かれても分からないし、なにも答えられない。お前が分からないことはみんな分からない」
「おいおい、しっかりしてくれよ帝先生よお!!あんたは私と違って頭いい側の人間として生きていくんだからさあ」
「まだ学生の時期は残ってるんだ……。お前も諦めるな」
「いいや、ギャルはある程度馬鹿なのが必須条件だから。それが嗜みだから」
うんざりする帝に更なる追撃を与えるのは、不健康そうな双眸をぶら下げた死んだ魚のようなノッポ、鼎だ。彼はすごい寒がりなので余程の真夏でもない限り結構な厚着をしている。
「篝、教えてやる。帝は将来的に、星の数ほどの女を泣かす」
「ああ、それな!それは納得だわ」
「将来どうなってそうか、って話題でマイナス方面の予測出すなよ……」
「いや……。そうだな、俺が浅はかだった。既に帝キュンは現行犯よ!!」
「かー!!罪な男だぜっ」
「マジでいい加減にしろ、お前ら……」
そんな、グレてるのかグレてないのかグレーなラインを過ごしながら、帝は拭い難い退屈と、それに伴う生暖かい充足を噛み殺していた。
目覚めの日はまだ遠い。




