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騎士団長の脳内は乙女である

 

 ──さて、話は少し前に遡る。


 腹ごなしに公園に行くことにしたアマリアとキグナスだが……


「……団長」

「なんだ、キグナス君」

「なんか……つけられてますね」

「ああ、うん……そうだな」


 結構前から後ろのふたりに気付いていた。




 アマリアとキグナスは優秀な騎士団員である。


 超ハイスペックヤンデレ腹黒ショタもどきであるヨルナスは、超ハイスペックヤンデレだけにちょっとした密偵レベル。それにエルシィも、気配を消すのが上手い。


 ──だが……そりゃふたりになれば目立つ。


 いくら華やかな服や、それを纏った憧れの相手との散歩に浮かれていようが、流石に気付かないわけがないのだった。




 アマリアはつけてきているのがヨルナスだということを、実はキグナスよりも大分前に気付いていた。

 だが、敢えて黙っていたのだ。


 何故なら──


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 ヨルナス:『アマリアさん!』

 アマリア:『ヨルナス君? どうしてここに?』


(質問には答えず、キグナスを睨み付けるヨルナス)


 キグナス:『騎士団長、この方は?』

 アマリア:『ええと……キャッ?!』


(突然、ヨルナスがアマリアの腰を引き寄せる)


 ヨルナス:『私は……彼女の婚約者ですが? 貴方こそ誰なんです?』

 キグナス:『えっ! あっ、いや僕はただの部下ですよ!』

 ヨルナス:『……えっ』

 アマリア:『ヨルナス君……』

 ヨルナス:『……あっ、ごめんなさい!』


(恥ずかしそうにアマリアから離れるヨルナス)


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



 ……などという、『嫉妬をあらわに駆け付ける』というシチュエーションを仄かに期待していたのである。


 ちなみに妄想の続きは以下。



 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 アマリア:『ふふ……嫉妬したのか?』


(バツの悪そうな顔をするヨルナス)


 ヨルナス:『だって……アマリアさん、そんな可愛らしい恰好で』

 アマリア:『ふっ、安心しろヨルナス君。 これは君とのデートの為に買ったうちのひとつさ』


(驚いた顔をしたあとで恥ずかしがるヨルナス)


 ヨルナス:『嬉しい、です──じゃあ』


(照れながら手を差し出すヨルナス)


 ヨルナス:『……今から誘っても?』



(唐突に公園で追いかけっこに興じるふたり)


 ヨルナス:『あはははは♡ 待て~♡』

 アマリア:『ふふふ♡』


(そして壁ドンならぬ、木ドン)


 ヨルナス:『アマリアさん……』


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼




「…………ナンチャッテ──!!」


 突如顔を隠して奇声をあげたアマリアに、キグナスは肩をビクリと震わす。


「どっどうしました?!」

「…………コホン、いや、なんでもない。 キグナス君、つけてきているのは私の……婚約者だ。 安心したまえ」

「え?」


 そう……色々物騒なことを考えていたヨルナスだが、実は公園に向かう道中で既に恋敵(キグナス)は失恋していた。まあ、彼がフラれるのは時間の問題なので、どうということでもないのだが。



 問題なのはある理由から、キグナスは純粋に失恋の痛みを感じることが出来ずにいたこと……



 ──そう、キグナスの視界に入っているのは普段から何かと可愛がっている、()()


『アマリアの婚約者=エル』という誤解が彼の中で発生していたのである。



 最初の出会いでキグナスがエルシィを助けた時のこと。

 名前を聞いたキグナスに、彼女が『エルシィ』と答えた瞬間に彼は会話を被せてしまっており、『エル』だと勘違いしたのが『男の子だ』と勘違いした要因の一つだ。


 色々と残念なキグナスだが、エルシィから向けられる『好意』は理解していた。

 それは『もしかしたら自分に対する恋心なのでは?』と思っては、『いや勘違いだろう……』と打ち消すくらい。


 女子の扱いが下手くそなキグナスだが、モテないわけではない。女心の機微には疎くても、好意に凄まじく鈍感なわけではなかった。


『いや勘違いだろう……』に続く言葉は勿論、『だって、男の子だし……』だ。


 当然ながら男性が好きな男はいるし、女性が好きな女もいる。


 キグナスはそれを殊更嫌悪したことはないが、まさか自分がその対象になるとは思ったことがなく、イメージができなかったのだ。



 ……まあ、そもそもエルシィは女の子なわけだが。


題名にそこはかとない既視感……(レイヴェンタールの騎士団長ってこんなんばっかりかな?)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主要人物の誤解が誤解を呼んで波乱が起きる! ラブコメのお約束ですが、こうも見事に連鎖すると本当に面白いです。 然も、皆さんの固有属性が“濃い”“深い”“仄暗い”と三拍子揃っていてもう大変。…
[良い点] ナンチヤッテーーー!!って笑!!実際にはそんなことできないだろうなってところがまた乙女なんだけどね!! こじれるの上手だなぁ……上手にこじれてみたい。 どうなるのか楽しみにしてます。
[良い点] さすが、武人としては優秀だ……! でも妄想がザンネンだ!(笑) そしてああ、ヘンな方向に誤解するヤツがまた一人……。(笑) [一言] ……ホントに、騎士団長は脳内乙女ばっかり――と言お…
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