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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第9話 川か山か、それが問題だ

 朝食(ケーキ)を堪能して、お腹もふくれ気分も晴れやかになったところで、今後の話をしっかり決めていこう!


 バッグからノクが器用に地図を取り出して、テーブルに広げる。


「さてティエナ、どっちからいこうか?」


 シルマークさんから貰った地図には二箇所に印が付けられている。

 ひとつはここから北に向かった山岳地。ノクの出自に関わるかもしれない洞窟。

 もうひとつは西の帝国領に入った先の川沿いの土地。わたしの出自に関わるかもしれない村。


「川沿いに山を登って行って帝国領に侵入するのは良くないよねぇ〜?」


「まず見つかったらタダじゃ済まないよね」


「だとするとスタトに戻って街道を西に行き、手続きして帝国領に入る事になるよね」


 随分前だけど、スタトで初めてレオに会った時に「帝国領がきな臭いから西に行くなら気をつけな」って言ってたんだよねぇ。

 特に帝国領に行く予定無かったからあの時はあまり気にしてなかったけど……、どういう意味だったのかな。


「帝国領に踏み込む前に、こちらでやれることやった方が良いよね? 先にノクの洞窟かなー?」


「このまま山岳地帯に向かうとしても、季節的にはちょっと危険かもしれないよ? 標高も高いし、雪が降ってるかも……。防寒と雪の対策は最低限するとしても、大丈夫かな?」


 地図を見ながらノクが首を傾げる。そして帝国領を手の先でちょんちょんとつついた。


「春まで待つなら帝国領を先に行くという手もあるよ?」


 うーん、確かにそうだけど。

 腕を組んでわたしも首を傾げる。


「まぁでも、雪山になってたとしても、ダンジョンの凍結回廊よりはマシでしょ。大丈夫、きっとなんとかなるよ」


 天井も床も凍りつき、絶えず冷気が押し寄せてくるダンジョンの階層。

 氷も溶かしてやってきたんだし、いざとなれば雪も溶かせば大丈夫! ……たぶん。


「じゃあ、山岳地帯からでいい? 行くなら早い方がいいね」


「うん、防寒着ならこの家にもあるし、それ持ってささっと行っちゃおう」


 その後は昔使ってた防寒着を探すため、部屋の収納をひっくり返すことになった。

 どこにしまってたかなぁ? そもそもわたしが片付けたんじゃなくてじいちゃんが片付けてくれてたのかも。

 は! それに、昔のやつってまだ着れるかな?

 わたしもメキメキ成長してるから、着れないかもー?


「甘いものばかり食べてて着れなくなった時の言い訳?」


「そ、そんなことないもんっ……!」


 むくれて言い返してみたけど、自分でもちょっと心当たりがあるのがくやしい。

 着れる。絶対着れる。そう念じながら探す。


 その時に、じいちゃんの持ち物と思われる薄汚れた袋を見つけた。袋にはルーンの刻印が刻まれている。

 えっ、これって? 手に持ちノクに見せてみる。


「これ……収納袋だね。イグネアが使ってたのと似たような感じするけど」


「だよね。じいちゃんが冒険者の時に使ってたやつかな? そういえばスタトのギルド職員さんも『じいちゃんが持ってた』みたいな事言ってたよね」


「折角だし使わせて貰ったら? 権能(神の力)を隠すならアリだと思うよ」


「そうだよねー。中は何か入ってるのかな?」


 じいちゃんのだから面白そうなものは入ってない気はするけど。ちょーっと見させてもらおうかなー?


「……ちょっとティエナ。悪い顔してるよ?」


「ノクだって、じいちゃんの持ち物気になるでしょ? 何が出てくるかなぁー?」


 ほいっ、ひとつめ! ランタン! 火打石! あぁん、つまんない!

 次! 魔導水筒! え、いいのもってんじゃん?


「搭載された水マナが切れるまで水が湧き出る水筒だよね。冒険にあると便利だよね。もうマナ切れしてるかもしれないけど」


「わたしは飲水も出せるから要らないけどね。じいちゃんには必需品だったんだろうねぇ」


 他にもポーションや毒消しと言った応急処置アイテムや、タオルやメモに筆記用具、内側にもこもこした毛がついたコートに、撥水性の良さそうなフード付きマントなど、冒険に役立ちそうな物が色々出てきた。

 マントとかは丈が長すぎてわたしが着ると引き摺っちゃうけどね。

 魔力が込められた矢尻を持つ矢なんかはわたしでも使えそう。着弾時に、炎や雷を放ったり、凍結させたりできる様々な矢が複数本効果別に矢筒で管理されており、使い勝手が良さそうだった。

 あとは狩人には似つかない装丁が綺麗な日記帳のような物も入っていたけど、字が汚くて読めなかった。なんだこのうにゃうにゃした文字はー!


「はぁー、防寒具……収納袋から出てきたじいちゃんのやつで良いかな、もう」


 袖を通してみる。もちろん袖はあまるし、裾は床ギリギリまで届いてしまう。

 前を閉じると、懐の中はふわふわと暖かくて、なんだか昔、じいちゃんに抱きしめられてた時のことを思い出しそうになった。

 ……うん、これでいいや。なんならノクもコートの中に入れれそうだし。


「じゃあ、さくっと竜信仰の洞窟にいってみよー!」


「おー!」

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