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見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る  作者: 通りすがりの冒険者


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第31話 『サンフランシスコのシスター』③


「それで? 用件は?」

「は、はい……」


 カフェを出てピーターと名乗る学生に声をかけられたフランチェスカは大学内のベンチに腰かけるなり、そう言った。


「そ、そのシスターはマティアス教授とお知り合いなんですよね?」

「元恩師よ。神学校のときのね」

「実はカフェでお二人の話を聞いてて……ドイツ語でしたけど、来週の講義で仮説の検証をするところまではわかりました。実は、あなたにぼくの仮説を聞いてほしくて……」

「そんなのあなたが直接マティアス先生に言えばいいじゃない! 言っとくけど、あたしこれから図書館で仕事あるんだからね」

「そ、それはそうなのですが……」


 うじうじするピーターにフランチェスカはだんだんと苛立ちを募らせる。


「男ならハッキリ言いなさいよ! あたしはね、あんたみたいなうじうじしてる人がキライなの。言いたいことが言えないようならもう行くわよ」

 

 見習いシスターがすっくと立ちあがったので、ピーターが「ま、待ってください!」と引き留める。


「実は、マティアス教授が苦手で……ぼくの仮説が笑われるのが恐くて……それで、あなたならぼくの話を聞いてくれるかと……」

 

 どかりと音がしたので顔をあげると、フランチェスカがベンチに腰かけていた。


「話くらいなら聞くわよ。それにマティアス先生はあたしもちょっと苦手だったしね……さ、フランシスコ・ザビエルの末裔(まつえい)であるあたしにあんたの仮説を聞かせてちょうだい」とウインク。

 ピーターの顔がぱあっと明るくなる。


「はい!」


 †††


「……すごいじゃない! 大胆な仮説だわ!」

「ホントですか!?」

 

 ピーターの仮説を聞き終えたフランチェスカは興奮気味だ。

 それほどまでにピーターの仮説は斬新だった。


「でも今の説はいまいち現実性に欠けるわね。マティアス先生なら『実に面白い仮説だ。だが、ところどころに穴がある』と言うわよ」


 フランチェスカがマティアス教授の真似をしたので、ピーターがぷっと吹き出した。


「ね、良かったらこれから図書館でその仮説をとことん突き詰めてみない? “よく相談しなければ計画は倒れる。多くの助言者によって、それは成功する”(箴言(しんげん)第15章22節)と聖書にもあることだし」

「え、でも仕事があるんでは……」

「いーのいーの。どっちみちあとでまとめて片づけることになるんだから。それに」


 すっくと立ちあがってスカートに付いた埃をぱっぱっとはたく。


「マティアス先生の鼻をあかしてやりたいのよ」


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