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見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る  作者: 通りすがりの冒険者


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第29話 『HAPPY EASTER!』①


 イースター、それはイエス・キリストの復活を祝う、キリスト教では最も重要な行事のひとつである。


 聖ミカエル教会が運営する幼稚園――聖ミカエル幼稚園のクラスのひとつ、カトレア組では担当の吉岡先生がパンパンと手を叩く。


「はーい、みんな集まってね!」

 

 園児たちが遊ぶのをやめて、ととと、と先生の下に集まっていく。

 以前は問題児だらけだったのだが、今や先生の言うことをよく聞く模範的なクラスとなっていた。


「今日はこないだ言ったように、イースターのお祭りをやります。そこで今日は特別に先生を呼んできました」


 吉岡先生がにこりと微笑む。


「いーすたーってなに?」

「よしおかせんせーのほかにせんせーくるの?」

「そのしぇんしぇーだれ?」


 園児たちから矢継ぎ早の質問攻めだ。吉岡先生が落ち着いてねとなんとか静かにさせる。


「では先生に来てもらいましょう。みんなで呼ぼうか?」

「「「うん!!」」」

 

 せーのでタイミングを合わせ、「「「おねがいしまーす!!」」」と七人の園児たちによる混声合唱(コーラス)

 すると、がらりと引き戸が開かれた。そこから出てきたのは園児たちには懐かしい、馴染みのある人物だ。


「みんな、ひさしぶりね!」

 

 にこりと笑いかけるその人物に園児たちの顔がぱあっと明るくなった。


「「「ふらんしぇんしぇー!!!」」」


 わああっと園児たちが修道服(スカプラリオ)に身を包んだ見習いシスター、フランチェスカの下へと集まっていく。

 半年ぶりの再会だ。(第6話参照)


「ふらんしぇんしぇー!」

「げんきだったー?」

「サッカーやろーぜ!」

 

 修道服のスカートに抱きつきながら、りりなとゆながぴょんぴょん跳び、あやが嬉しさのあまりに涙を流し、サッカーボールを手にしたれおの隣には、るいとたかおの二人組が。

 そして……


「せんせー、おひさしぶりです!」


 半年前までは喋れなかったまさとが元気よく挨拶を。


「まさとくん!」


 フランチェスカがまさとの下へと、そして頭を撫でる。


「まさとくんも元気そうね」

「フランチェスカ先生のおかげでこの子、前より明るくなったんですよ」

「そうなんですね。でもよかった」


 再びにこりと微笑むと、すっくと立ち上がる。


「さあみんな! 今日はイースターやるわよ!」

「「「はーい!!!」」」


 †††


「これでよし……っと」


 チョークを置いて、ぱんぱんと粉を手についた粉をはたく。

 そこには黒板に可愛らしくデフォルメされたキリストと色とりどりのチョークで「HAPPY

EASTER!」のカラフルなロゴが目を引く。


「じゃあまずはイースターがどういうものなのか教えましょうか」


 わかりやすいよう噛み砕いて説明し、園児たちがうん、うんと頷く。


「――というわけで、イースターはイエスの復活を祝うお祭りなのよ。今日はみんなでこの卵に色を塗りましょ!」

「せんせー、なんでたまごなの?」


 手を上げたまさとからの質問にフランチェスカが答える。


「それはね、色々あるんだけどイエスが復活したときの様子が卵からひよこが(かえ)ったように見えたって言われてるらしいの」

 

 説明しながらフランチェスカが筆で卵に色を付けていく。卵はすでに中身は抜いてある。


「それと、こうやって色をつけるのもちゃんと意味があるのよ。昔、ゆで卵と生玉子の違いがわかるように色をつけたのが始まりだとされてるの(諸説あり)」


 ぺたぺたと色がつけられ、「はい、これでおしまい」と置くとカラフルな飾り卵の完成だ。

 園児たちが色とりどりの卵にわああと目を輝かせる。

 めいめいが筆を取ると、好きなキャラやサッカーボールを描いたり、なかには手を絵の具で塗りたくると卵に手形をつけたりした。

 しばらくして園児たちの作品がテーブル上に並べられた。


「はーい、じゃみんな笑ってねー」


 吉岡先生がフランチェスカのスマホを手にして、もっと詰めるように手を動かす。

 カラフルな飾り卵を前にフランチェスカと園児たちの笑顔をスマホに収めた。


 †††


「楽しくやってるようですよ」


 フランチェスカから送られてきた画像をマザーに見せる。


「良い笑顔ですね。本当に楽しんでる雰囲気が伝わってきますよ」


 フランチェスカに会いに教会にやってきた安藤にマザーがにこりと微笑む。

 たったいま彼女は幼稚園に行っていると聞かされたばかりだ。

 マザーがふと思い出したように安藤に話しかける。


「安藤さん、今日ここに来られたのもきっと何かの縁。実はあなたにお願いしたいことがあるのです」

 

 マザーから話を聞いた安藤は大きく頷いた。


「――――というわけで、ぜひあなたにお願いしたいのです。私は本部での仕事がありますので……」

「そういうことでしたら喜んでやらせていただきます」

「ありがとうございます。あなたのような良き友人を持って、あの子は幸せ者ですわ」

 

 そう言うとマザーはにこりと聖母のような笑みを浮かべた。


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