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見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る  作者: 通りすがりの冒険者


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第52話 『アンジローの決意』②


 マザーからサン・セバスチャンにある教会への紹介状を受け取った安藤はそのまま帰宅し、自室に入ると本棚からガイドブックを引っ張り出す。

 地図のページを開いてサン・セバスチャンの場所を確認すると、美食の街で知られるその街はバスク州の北部にあり、ビスケー湾に面していた。

 地図に指を走らせ、最寄りの空港を探す。


 ――ビアリッツ空港。


 スペインとフランスの境にある空港だ。

 おもむろにスマホを取り出して成田空港からピアリッツ空港までの経路を検索する。

 当然直行便はなく、まず成田空港からパリで降りてそこからビアリッツ行きの飛行機に乗り換えるそうだ。

 だが……


「やっぱり高いな……」


 現在、八月は旅行のハイシーズンだ。どの航空券も料金は値上がりしており、高校生の小遣いではとても(まかな)えない。

 ならば、と別の空港を探す。今度は反対側――スペインのビルバオ空港で再検索する。

 やはりこれも手が出せない。

 安藤は机の抽斗(ひきだし)を片っぱしから開け、中身を開ける。

 小銭、お年玉でもらった小遣いが出てきた。それでもまだ足りない。

 棚から貯金箱を取ると、蓋を外して机の上にぶちまける。

 紙幣と硬貨を分けたのちに数えるが、目標額には遠く及ばない。

 こんなことなら普段から節約するんだったと悔やむが、後悔してもはじまらない。

 ガイドブックをぱらぱらとめくり、なにか情報はないものかと探してみる。

 スペインの観光地の解説ページを次々に飛ばしていき、やがて最後のページ近くまできた時、めくる指が止まった。

 交通手段の解説ページだ。成田空港から飛行機で向かう手段とは別の交通手段が書かれている。

 多くは飛行機による乗り換えだが、安藤の目は最後のページに注がれていた。


『フランスからサン・セバスチャンへ鉄道で向かう場合』


 読み進めていくと、成田空港から直行便でパリへ向かい、そこからTGVと呼ばれるフランス国鉄が運行する高速鉄道に乗る。

 次に途中でアウスコスレン(バスク鉄道)に乗り換え、そのままサン・セバスチャンの最寄り駅に着けるとあった。


 ――――これだ!


 再度スマホを開いて、今度は成田空港からパリ行きの飛行機を検索する。

 当然ながらこれも高い。もっと安いものはないかと下へとロールしていく――


 あった。


 早朝、始発の便ならなんとか手が出せる。問題は……


「帰りの航空券と、旅費をどうするかなんだよな……」

 

 両親に頼んでも貸してはくれないだろうし、友人にも迷惑はかけたくない。

 ならば……


 安藤はスマホを開いて電話をかける。三度の呼び出し音で相手が出た。

 

「もしもし、次郎か?」


 安藤の兄、一郎だ。


「兄ちゃん、今からそっち行っていい?」

「どうした? 俺に頼み事か? いま仕事で忙しいんだけどな」

「うん。すごく大事な話なんだ。その、フランチェスカさんに関わること」


 少ししてから兄が「わかった」と返事。


「少し時間を作ってやる。すぐに来いよ」

「わかった。ありがとう兄ちゃん!」

 

 通話を切ると安藤はすぐさま部屋を出、靴を履くなりそのまま飛び出した。


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