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43話:赤い夜8

魔族襲撃終了のお知らせ

 王城から出撃した部隊の壊滅は王城の兵の更なる出撃を躊躇わせた。

 中性子爆弾による攻撃は迅速に人の体を破壊し、死に追いやった。

 こうした手が取れたのは元々、魔族の側に王都を制圧する意志がなかったからでもあった。つまり、最悪、爆弾の制御が失敗して死の都となっても構わないという考えが根底にあったからこそ、こうした手が取れたとも言える。

 彼らにとって王都を含めた現在の都はいずれも住みづらい場所だった。

 当然だろう、滅亡寸前とはいえかつての栄華を極めていた時代の遺物とはいえ魔族達が暮らしていた場所は王都よりも快適な構造になっていた。当り前と言えば当り前の話ではあるのだが、今を生き抜く事が大事だった魔族達にとって歴史ある建築物などというものは大事にされるような物ではなくなっていた。

 もっとも、彼らが過去の遺物に敬意を払わないのは『その過去に生きた先祖達のせいで今、こうなっている』という面も大きかったのだが。

 彼らの生活に役に立つならまだしも、貴重な労力を使って保護するような奇特な考えを持つ者はほとんど皆無になっていた。


 さて、そんな彼らの前に新たに出現した大地。

 そこにある前の生活者達の築いた都。

 これが魔族にとって快適というならともかく、石造りの建物が立ち並び、道幅は狭く、貧しい人族の暮らす地区はスラム街と呼ぶべき場所が存在し、そうした地域は建築計画も何もない適当に雨風を凌ぐ為に構築された適当な木や石で構築された建物だ。

 やむをえない事としてスラムに一時潜んだものの、こうした地域には上下水道すらまともに通っていない。

 自然と魔族達は「こんな街住めるか!」となった。

 最初から「住めなくなるならそれでもいい」ぐらいにしか考えていないのだから、汚染するような兵器でも躊躇う理由がない。

 暴走させていないのもただ単に「最初の設定がそうなっているから」なのが理由だった。設定を変えるとなると自動工場のプログラムを確認し、それを修正し、回収機構を弄り……と色々な修正をかける必要があり、そんな面倒な事に手を回す余裕などなかったからだ。

 ただ、それらをさておいても魔族側の攻撃に、王城側が追加出撃に二の足を踏んだのだけは事実だった。


 この結果、王城と王都は完全に分断された。

 モルテン将軍も現状では出撃を命じる事は出来ない。

 どういう攻撃でやられたのか分からない状況で行かせるなど「死んで来い」と言っているようなものだ。


 「まあ、死刑囚を逃げられたら恩赦という条件で突っ込ませるという手はあるんじゃが本当に生き延びられたら面倒じゃしのう」

 「確かに。却下で」


 などという会話がどこかで為された気もするが、それはさておき。

 王都内部でもいくつかの場所に戦場は絞られつつあった。

 既に、王都でも有数の豪商と呼ばれる者達が暮らす場所は惨劇の舞台と化していた。

 もちろん、そうした連中はきちんと腕の立つ護衛を雇っている。

 だが、相手がれっきとした軍人だったらどうだろうか?

 それも同数どころか瞬間的に上回る程の数で静かに奇襲を仕掛けられたらどうか?

 彼らが豪商に雇われているのは盗賊対策であり、暗殺者対策だ。腕の良い彼らは当然、気配には気づいた。ただし、相手が豪商を殺しに来たのではなく、自分達を含めた皆殺しを図っているという事に気づけなかった事が彼らの生死を分けた。

 通常は幾ら豪商と呼ばれる男達で、対立する商人がいても皆殺しなどという手は取らない。

 ほとんどは盗賊であり、それも王都でとなれば盗賊ギルドが大抵手綱を握っている。

 だから、盗賊ギルドと繋がりをも持つ豪商達の所に忍び込むような奴はたいていがはぐれの盗賊であり、盗賊ギルドすら手に負えない凄腕か、馬鹿のどちらかだ。ただ、どちらにせよ彼らは盗賊であり、密かに盗みを行おうという目的であって護衛を殺戮する事を目的にしているような底抜けの間抜けはいない。

 暗殺者とて多数の護衛といちいち斬り合っていては肝心要のターゲットに逃げられかねない。

 やはり、こちらも護衛との戦闘は極力避けようとする。

 結果的に、護衛達は「庇って死ぬ」「見つけた結果、抵抗されて怪我をする」事は考慮していても最初から「自分達を殺すつもりで侵入してきた」相手と戦う事は長い事体験していなかったという事だ。そして、護衛が排除されれば、奇襲を受けた豪商達に生き延びる術はなかった。

 この件は後々、王都の流通の混乱、そしてその後釜を狙う者達がきっかけとなる商売の活性化へと繋がるのだがこれ以上は不要だろう。


 他に襲撃された場所の内、冒険者ギルドは遂に陥落した。

 最大の原因はほとんど中に人がいなかった事だ。

 さすがに夜遅くでは管理する者や少数の警備を務める冒険者以外に人がいなかった。むしろ、その状態でよく善戦したというべきだろう。

 次にギルド直営の施療院。

 こちらは今尚陥落していなかった。

 何故かと言えば、こちらへの攻撃は少し間を置いてから始まったからだ。その間に最初は冒険者ギルドに走って怪我をした者やそれを運んできた者を含めて多くの冒険者が集まっていた。時間差とその間に集まった人の数、それが現在の違いの原因だった。

 そして、時間がすぎるごとに魔族達は撤退を考慮に入れるようになっていた。

 原因は幾つかある。

 最大の理由は作戦目的を達成した為。

 敵首都へと奇襲攻撃を行い、敵上層部の行動に制約を課す。

 これは既に成功していた。

 次点で、敵インフラの破壊。

 こちらはそこそこだが、そもそも狙って破壊するような場所がほとんどないのだからどうしようもない。水道局みたいな場所もない。管理する省庁に相当するものは王城の内部。どこかを爆破するにしても割に合わない。

 他の作戦計画では可能なら「敵首都における流通網の混乱」「敵首都における大規模医療施設破壊による治療体制の混乱」などが挙げられていた。

 つまり、病院の破壊工作というのは比較的重要性が後だった。

 そうして、そこは現在他が陥落したり、王城の封鎖が成功した為に結果的に抵抗拠点となっている。

 中性子爆弾をぶち込む事も考えはしたが、その為には王城攻撃中の面々にしかそれらは渡されていない為に改めて呼ぶ必要がある。


 「これ以上はわりに合わんな……撤退する!」


 かくして隊長の決断が下った。

 それと共に速やかに魔族は撤退していったのだった。

 かくしてようやく王都には静けさが戻って来たのだった、甚大な被害と引き換えに。

 

という訳でいいように荒しまくった末に「これ以上は手間かけるだけの価値がない」と判断して撤退していきました

要は好き放題やられて、王都はあっちゃこっちゃで大きな被害出して、しかも一部除いて魔族を仕留める事も出来ずに逃げられたってー事ですね。しかも警備責任者は死亡というw

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