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38話:赤い夜3

先に書いておきます

今週日曜は出かける用事がある為、更新が出来ません

申し訳ありません

 ベルクトはといえば、追撃を逃れるべく走っていた。

 

 「すまん」

 「気にするな」


 背負われているのは凱嶮がいけんだった。

 彼ら四人はこの王都に家のある和真かずま以外は共通の宿に泊まっている。これは彼らはこの国の王都には詳しくない為、和真から紹介された宿に全員が泊まっていただけだったが。

 何しろ、王都は北部要衝が陥落し、そこに至るまで魔族が皆殺しにした、という事実が広まるにつれて避難する者が急増していた。結果、宿泊施設がオーバーフローを起こしていた。つまり、泊まりたいと希望する人の数が宿屋の宿泊可能な人数を上回ってしまい、泊まれない者が続出していたという事だ。

 そんな中で、和真という王都でもそれなりの顔と伝手を持つ人物が紹介した宿は以前に宿の主人の危機的な病状を救った事で大きな感謝を得ていた高級旅館だった。

 こうした高級な旅館はいざという高い地位の人が泊まる時の為、多少の空き部屋を確保してある。

 そうした部屋は紹介なしではまず泊まれないが、和真と実質滅んだとはいえ一国の王女、双方の紹介状があれば話は異なる。かくして四人一緒とはいえ広々とした一室を借りる事が出来ていた。この規模の部屋ならば四人でも狭いという事はないし、一室と言っても複数の部屋を備えている為に男女が入り混じってという事もない。もっとも、そこは何日も野営を余儀なくされる冒険者、そこまで気にしてはいなかったのだが。

 とにかく、現状、この宿を出て各自が好きな場所に宿をとるという事は出来なかった。

 このお陰で、冒険者ギルドに一斉に駆けつける事が出来たのだが、彼らも和真に科学兵器に関しては話を聞いていたものの、爆発というものに対して実感がなかった。さすがに爆発が実際に目の前で起きれば対応も取れるが、この時反応が遅れたのが凱嶮だった。

 通常は誰かが庇うのだが、想定外の攻撃に誰もが反応が遅れてしまった。

 幸い、というか位置の関係上命に関わるというまではなかったが、重傷を負った凱嶮をベルクトが背負って離脱し、これをアシュタールが補助。カイラが状況を探ってから合流という手筈に切り換えたのだった。

 そして、今、ベルクトが一人走っている理由は一つ、魔族の追撃を受けたのだった。


 (無事でいろよ、アシュタール、カイラ)

 

 診療院に向かって、ベルクトは走るのだった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 (敵は三名。ベルクト達は無事に離脱中)

  

 周囲に灯りはないが、相手の動きに迷いはない。

 おそらく夜目が利いているのだろう。


 (さて、これが和真の言っていた科学とやらの技なのか、それとも単純に種族としての特徴か?)


 現時点ではそれが判断出来ない。

 武器にした所で和真が言っていたのは「銃というか、れーざーらいふるみたいな武器」という程度。

 もっとも、和真は武器の性質など細かい所までは知らなかった。

 例えば、れーざーらいふる、というものがれーざーとかいうものを使って敵を倒す武器で、それは光を集めるかどうかしてという事は知っていた。

 だが、それ以外、具体的にどういう仕組みでそれが行われ、どの程度の射程を持ち、どうすれば防げるのか、となるとろくに知識がなかった。そもそも、れーざーらいふるとかいうものと確定した訳ではなく、びーむらいふるかも、とも言っていた。

 そして、そちらの説明になると更に説明がうろ覚えになっていた。

 仲間の言う事とはいえ、必要な部分がさっぱり不明ではさすがに役に立たないと言うしかない。


 (さて、とはいえ)


 すっと距離を一人が縮めてくる。

 開けた場所ではこちらの死角を突いてくる可能性があるとわざと街中の通りに移動している。ここならば回り込まれない限りは後ろからの攻撃はない。

 無論、相手が回り込もうとする可能性がないとは言わないが、奴らとてこの街の地理を完全に把握している訳ではないだろう。迷って想定外の時間がかかるのは避けたいはずだ。

 距離を縮めてくるのに合わせて、こちらも前に出る。

 あちらの武器はナイフ。

 こちらの武器は剣。

 攻撃範囲はこちらの方が上だが、小回りは相手の方が上。加えて、僅かに羽音のような音がナイフからはしている上、赤く熱を発しているようだ。強化している訳でもない自分の武器では幾ら一国の宝剣レベルとはいえ拙いかもしれない。いや、宝剣だからこそ拙いだろう。

 

 (ならかわす)


 受けるのも、受け流すのも封じられるとなると普通ならば厳しい。

 だが、アシュタールにしてみればどうという事はない。彼女が戦っていた元の世界の敵は受ければ死ぬ、受け流そうとすれば死ぬ。そんな攻撃をしてくるような化け物がゴロゴロいて、死にたくなければ避けるしか道はなかった。おまけに攻撃の余波に巻き込まれないよう文字通りの意味で必死の回避だった。速度も一振りすれば豪風が巻き起こるような速度だった。

 それに比べればしょせんナイフ一本、高熱を発しているのかもしれないが、ナイフの周囲に鉄をも溶かす炎の竜巻が吹き荒れている訳でもない。当たれば麻痺するような雷を撒き散らしている訳でもない。

 互いに加速した所で、アシュタールは。


 (進行方向操作)


 姿勢も重心も変える事なく、突如前触れもなく進行方向を変える。

 これには対応が遅れ、慌ててこちらに向き直ろうとしているし、後方の二人もまた慌てて手持ちの武器をこちらに向けようとしているが、もう遅い。

 ラインに乗せ、武器の速度を加速。

 相手の脇腹へと直撃が入る、が。


 (手ごたえなし)


 斬ったという感覚がない。

 防がれた、という事だろう。事実、血を流すでもなく、距離を取り直している。どうやらただ斬っただけでは自分にはあの鎧を突破出来ないようだ。

 幸いなのは動きは鈍っているという事か。

 

 (さあ、次はどうでる?)

 

 逃げるか戦うか、それとも別の攻撃手段を繰り出すか?

 口元に僅かな笑みが浮かぶ中、アシュタールは彼らと対峙を続けていた。

アシュタールは本気出してません

探りながら、攻撃しております

あと、主人公の武器に対する説明がまだまともに取られてないのはこうした事情からです

「射程どんだけ?何発ぐらい撃てるの?」「分からない」では兵に警告しようがない

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