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36話:赤い夜1

 「とりあえず冒険者ギルドに……」

 

 言いかけて固まった。


 「あなた?」


 リエラの声にも構わず考える。

 現在爆発音が響いているのは主に城の方からだが、他にも街中からも聞こえている。

 奇襲にした所で、一国の首都を落とせる程の兵力を送りこむとなれば、さすがに大量の兵力の移動が必要になる。それこそ空輸でも出来なければまず無理だろう。秘密兵器代わりに秘匿しているという可能性がないではないが、現状空にそのような物体は見えない時点でその可能性は除いていいだろう。

 となると、少数の部隊を送り込んでの奇襲攻撃と判断するとして……。


 (王城はそうそう簡単には陥落しない。魔族が早々入り込めるとも思えない)

 

 大体、占領した所で長期的に維持出来なければ意味はない。

 王を暗殺する気ならもっと静かに行動するだろう。

 となると今回の行動の理由として考えられるのは報復。そして、牽制。王都が奇襲されたとなれば今後兵力を大規模に動かすにも制約がかかる。一定以上の戦力を王都に置いておかねばならないからだ。

 さて、王城の陥落を目標としていないと考えると……。


 (今行われてる攻撃はなんだ?嫌がらせ、だけじゃないな。王城からの援軍が出るのを妨害している?)


 王城というのは早々簡単に入る事は出来ない。城壁が周囲を取り囲み、限られた門からしか出入り出来ないようになっているからだ。その門できちんと検査が行われれば早々簡単に入り込む事も難しいが、逆に言えばそれは門を抑えられれば出る事も難しいという事でもある。

 爆発というものがこの世界において見慣れないものである以上、警戒して下手に動けない。そんな可能性はおおいにある。大体、王城警備の兵の役目は王城を守る事が仕事であって、王城が攻撃されている最中に下手に外に出ていくというのは考えづらい。

 どこの誰が今働いている職場が火事の最中に、余所の火事の消火に行くというのか。

 

 (となると、街中で聞こえている音はどこを攻撃する音だ?)


 街中の重要拠点の一つでもある冒険者ギルドを放置するか?

 いや、そんな訳がない。

 となると……冒険者ギルドに向かうのは危険か?


 「ギルドの診療院に行こう。冒険者ギルドも攻撃の対象になってる可能性がある」

 「ギルドも……?」


 それにそうなっていたら間違いなく怪我人が出る。

 ギルドの診療院はギルドに負けず劣らず頑丈な作りになっている。

 問題があるとすればあそこもあちらこちらから怪我人が集まって来るという点では重要性が劣る訳ではない、という点だが、だからといって街中をうろうろするのも危険だ。どこかで魔族の軍隊と遭遇する可能性がある。家に閉じこもっている事も考えたが、最悪、ごく少数の集団がランダムに家庭を攻撃し恐怖を撒き散らしているという可能性もある。

 それならまだ……。

 後にそれが正しかった事を知る事になるが、この時はまだそれに確証がある訳じゃなかった。 

 静かに外に出ると、辺りは静まり返っている。

 どうやら周囲のお宅は閉じ籠っているようだ。

 かすかな灯りを灯して、ギルドの診療院へと急ぐ。

 何時でも結界を張れるように準備してはいたが、幸運にも誰にも出くわす事なく診療院へと到着出来た。


 「誰だ!!」

 

 診療院傍で呼び止められたが、ちょくちょくこちらに顔を出してお手伝いしている事もあってすぐに相手も気づいてくれた。

 独立しはしたが、なまじ国一番の腕の治癒術師!なんて持て囃されたお陰でギルドからお願いされての事だったが、そのお陰で警備のギルドに雇われた元冒険者(怪我などで急遽引退した冒険者などを仕事が見つかるまで雇用したりしている。ただし信用性の高い一部冒険者のみ)もすぐ気づいてくれたのだから何が幸いするか分かったものじゃない。


 「和真先生でしたか。無事だったんですね」

 「ああ、何とかね」 


 診療院へ向かうまでに確認してみれば、やはり冒険者ギルドは攻撃を受けているらしい。

 当初冒険者ギルドへと駆け付けた冒険者達もいたようだが……問題だったのは駆け付けたのが散発的だったことだ。しょうがないといえばしょうがない。チームにしたって王都内に家があれば俺みたいに家に戻るし、全員が同じ宿に泊まっている訳でもない。

 例えば、ある冒険者チームでいえば女性陣は警備もしっかりした、ただしその分お高い宿に泊まり、諸事情から節約している男性はより安い宿に泊まっている。

 これらが各自の判断で動いたらどうだろう?

 散発的な到着になり、まさに「戦力の逐次投入」そのものになる。

 大空から襲撃があると分かった上で護衛をつけて突入するならともかく、爆発音が攻撃だと分からず、魔族の襲撃だと考えずにとりあえず駆け付けただけだとすれば。ミッドウェーみたいなまさかもなく、集団戦に長けて待ち構えている軍隊相手では太刀打ちできないだろう。大体、全員が全員凄腕な訳ではなく、むしろ術がまだまだ未熟な奴の方が多いんだから攻撃を受けて死んだ奴もきっと多いはずだ。

 そう思いつつ診療院に入れば、凄惨な事になっていた。

 怪我で呻く冒険者、重傷を負った一般人が多数、寝かせる場所がないのか廊下にも敷物を敷いて寝転がり、一部は場所がないのか床に座り込んでいる有様だ。

 

 (奥さんはこちらが案内します。職員の家族が集まる場所を確保してあるんで)

 (お願いします)


 さて、こっからは治癒術師としての仕事だ!

それぞれの戦闘が開始します

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