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34話:爆破結果

 強化術師の投げつけた転移門破壊爆弾(そう呼ぶのがしっくりくるのでそう呼ぶ)は魔族が気づいた時には既に手遅れの状態にあった。

 あっ、という声が誰かから上がったが最早止める事も出来ず、それは転移門へと到達。

 瞬間、空間が歪んだ。

 かのように見えた。

 

 「なにっ!?」


 思わず、といった様子でベルクトから小さな声が漏れた。

 けど、気持ちは分かる。

 あくまで声が出たのがベルクトなだけで、カイラも凱嶮も、そしてアシュタールも全員が驚愕しているという点では変わらない。そして、それは俺、霧生和真きりゅうかずまも変わらない。誰だって目の前の光景を目にすればそう思うだろう。

 転移門を破壊するはずだった爆弾。

 それは僅かな揺らぎをもたらしただけで、転移門は尚も健在だった。

 唖然としていた俺達の中で真っ先に正気に戻ったのはやはりアシュタールだった。


 「戻るぞ。魔族が動き出している」


 ……作戦は失敗だ。完全なる失敗だと言っていいだろう。

 あの爆弾がたまたま不発だった、と考えて、俺達の爆弾をぶち込むという事も出来なくはないけれど、俺にはそうは思えなかった。少なくとも、爆弾であの転移門が破壊出来なかった以上、俺達の手持ちをぶつけても意味はないだろう。

 そうである以上、作戦は根幹から崩壊したと言っていい。

 撤退は当然だった。

 そして、失敗した上、魔族が迅速に混乱から立て直していた以上、敵地深くにまで踏み込んでいた冒険者二人に助かる術はおそらく、ない。

 転移魔法の高位魔法に短距離転移の魔法があるが、それを使えるだけの術者である事を願うばかりだ。

 まだ、幻影などの魔法があれば、あそこからの脱出も可能だったかもしれないが、前に述べた通りこの世界の魔法に幻や精神操作に関わる魔法はない。潜入や脱出に便利なそんな魔法がない以上、後は彼ら自身の奮闘を祈るしかない……。


 そうして、距離を取りながらも誰もが沈黙を保っていた。

 肩に荷物のように担がれた状態という実に見た目的にはアレじゃあるが、俺は口を開いた。


 「アシュタール、一つ聞きたいんだけど」

 「なんでしょう」

 「あれは転移門なのか?それとも」


 転移門を破壊する為の爆弾で破壊出来なかった。

 通常ならば「じゃあ、あれは転移門じゃなかった」と考えるべきなんだろうが、そう断定するには転移魔法にこの中でもっとも詳しいアシュタールに聞くのが一番だろう。

 俺の問いにしばらく黙っていたアシュタールは少し考えながら口を開いた。


 「……あれが転移門の一種なのは間違いないと思います」


 転移門破壊爆弾で揺らいだ。

 あの時の揺らぎは間違いなく、転移門破壊の術式が作用した結果だったという。

 そうである以上、あれが転移門である事は間違いない。もし、まったく別の物であればそもそも揺らぎ自体が起きないはずだ。

 アシュタールはそう告げた。


 「破壊の術式というのは鍵ですからね。異なる鍵を差し込んだ所でそもそも反応すらしません」


 うーむ、ジグソーパズルのピースみたいなもの、か?

 ぴったり合うピース同士ならすんなり嵌るが、異なるピースだと似たようなピースでも嵌めるのは無理やりになる。

 

 「ですので私の推測ではありますが」

 「構わんさ、今はとにかく情報が欲しい」


 躊躇いがちなアシュタールに、凱嶮がそう声をかける。それにベルクトとカイラも頷く。無論俺もだ。


 「分かりました。おそらく相手が巨大すぎたんです。見た目だけなら十分なはずでしたがおそらく繋がり、言い換えるなら奥行きが予想よりずっと強かった」


 あー……。

 他の皆はまだしっくり来てないみたいだが、分かった。岩を破壊しようとしたら実は相手は山だった、という類だ。

 こちらは車か精々トラックサイズの岩を破壊するつもりで来たのに、相手が実は山そのものだったらどうか?

 爆弾を仕掛けた所で予想通りの結果が出る訳がない。

 車をふっ飛ばすぐらいの爆弾で、山一つ崩せるなら誰も苦労はしない。

 俺が攻撃術師の魔法に例えて、そう告げると他の皆も納得したようだった。


 「じゃあ、どうするんだ?」

 「一旦戻りましょう。本音を言えば他の冒険者達にもこの事実を告げたい所ですが……」


 連絡取る手段がない。

 そうだ、思い出したが潜入しているのは俺達だけじゃない。

 俺達はちょうど別の冒険者達が破壊しようとした所を見る事が出来たお陰で、こうして撤退も出来た。

 けど、他の冒険者達はどうだろう?

 あの光景を見ていない冒険者はきっと何とか破壊を試みるだろう。それが依頼なんだから当然だ。

 それが出来るだけの強化術師と移動術師が何人失われる事になるのか……。考えたくはないが、どうする事も出来ない。


 「急いで戻りましょう。どう対応するにせよ早急に話を伝える必要があります」


 そうだな。北部要塞都市で魔族と対峙してる軍だっているんだもんな……。

 俺達は重い足取りを動かして、魔の森から撤退していくのだった。いや、足を動かすのは俺じゃないけどさ。

何ででしょうね、頭痛が本日も続いてます

昨日ほどじゃないんですがまた薬頼り……

どっか体が疲労してるんですかねえ……

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