表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/45

33話:到着

頭痛の為、投稿遅れました

 「見えた」


 結局、俺達の通ったコースは結構厳しいルートになった。

 もっともこれは別段俺達が好き好んでそういうルートを通ったからじゃない。冒険者達は軍とは異なり、事前に打ち合わせを行い、それぞれがおおまかに決めたルートを通って目的地に向かう事にしていた。その際極力互いのルートが重ならないようにしてだ。

 そうなるとスタート地点付近が進みやすいかどうかは関係ない。

 初めて攻略される山やロッククライミングのルートにおいて、当初予定していたルートが様々な要因で「登攀不能」と判断し、トラバースといった方法でルートを変更するのはよくある事だ。魔の森も同じで当初策定したおおまかなルートにどんな困難が待ち受けているかはっきり理解している者は誰もいない。いたとしても、魔の森のそこまで奥地の地図というのは彼らにとって文字通り命を賭けて生み出した宝だ、さすがに明かす訳もない。

 道の先に思わぬ崖が見つかるかもしれないし、滝や急流が姿を現すかもしれない。或いは俺達みたいに山岳が姿を現すかもしれない。

 幸いというか、そうした自然による障害の大半は移動術師と強化術師が協力すれば乗り越える事が可能だ。

 魔法のない世界の登山家が初めて登ったルートの先で崖にぶつかったらどうか?普通は迂回ルートを探すだろう。重い荷物を背負い、人が跳び越えられるレベルを超えた崖を無理に渡ろうなどと考える奴はまずいないはずだ。

 だが、この世界では強化術師が他の者を抱えて、そこに移動術師が魔法で補助を行えばそれなりの幅の崖であっても軽く跳び越える事が出来る。

 荷物にしたって移動術師がいれば、大量の荷物を収納して軽く運ぶ事が出来る。

 何より、元の世界と違って科学の恩恵の薄いこの世界では移動一つにとっても街から街へと長距離を歩くのは当然だ。自然と共に生きる民族と、科学技術によって構築された交通網が張り巡らされた都会で生きる人々の体力が大きく異なるのは当然の話。

 そして、それは俺の元いた世界と、この世界の住人にもあてはまる。

 強行軍で突破した晩の疲れを取るのは治癒術師である俺の仕事。

 移動時には移動術師と強化術師に負担がかかるので、自然と野営時には俺と攻撃術師である凱嶮がいけんが調理などを担当する。テントなどは張らない。そうした肉体作業はざっと疲れを回復魔法で取ってから強化術師が作業した方が圧倒的に早く終わるからだ。

 力仕事は強化術師が早い早い。

 この間、移動術師は見張りにつく。

 俺も料理時は多少の手伝いはするが、最後の調理自体は凱嶮任せだ。料理上手いんだ、凱嶮。

 どうしても彼が料理を担当する事が多かったせいで、「出来れば美味い料理を」と研鑽してる内にほとんど趣味の一環となっていたらしい。


 「初めて訪れた都市での食べ歩きも好きだな」


 とは凱嶮の台詞。

 あるいはもっと昔から俺も彼らの仲間だったら同じように料理上手になっていたのかもしれない。

 結婚してからは手伝いこそすれ基本、奥さんにまかせっきりだったからなあ。休みの日ぐらい手伝おうとしても、奥さんに怒られるんだよな。俺達の時代と違って、台所とか家は奥さんの職場であり戦場という意識があるみたいで、簡単な手伝いぐらいしかさせてくれなかった。


 とはいえ、可能だなんだといっても、ルートがきつければ時間はさすがにかかる。

 こればっかりはどうしようもない。

 あの手この手で道なき道を越え(まあ、元から道なんてないんだが)、何とか魔族の駐屯地を見れる場所まで到達した。

 さすがに近くなると高台に監視がいたりして、更なる回り道を要求されたりした。


 (欺瞞系の魔法ってないものかね)


 この世界に来て思った事だが、この世界には幻惑系や精神系の魔法というものがない。

 幻で相手をおびき寄せるとか、魅了した相手で同士討ちを行わせるといった事が出来ない。

 この世界に来て、色々調べはしたが、精々移動術師が一定範囲を動かなければ姿や臭いを隠せる魔法を持っている程度だ。主に野営時に用いる魔法といえる。

 

 (あればこういう時は楽なんだが)


 索敵の魔法ならば攻撃術師に熱を探る魔法だとか、治癒術師であれば生命そのものを探る魔法などがある。

 もっとも、俺の想定通り、相手が、魔族が科学技術のある、或いはあった世界からの来訪者というなら赤外線探知といった手段を持っている可能性は十分にある。

 全員に持たせるだけはない貴重なアイテムだとしても、こうした重要拠点には設置されていたとしてもおかしくはない。


 「さて、ここまで来てなんだけどどうやら先を越されたみたいだよ」


 そうアシュタールが言った事で改めて魔族の拠点に視線を向けた。

 ……分からん。

 強化術師の二人、カイラとベルクトもしばらくしてから「おお、いたいた」「うまく潜入出来たみたいだね」などと言っている。

 俺、霧生和真きりゅうかずまはといえば……。


 「なあ、分かる?」

 「すまん、俺にも分からん」


 と攻撃術師である凱嶮と話していた。

 俺達、こういう時は弱いんだよなあ。

 索敵系の魔法を使うにしてもそれはあくまで「あそこに生命がある」「あそこに熱を発する何かがある」と分かるだけで、個別に「これは魔族で、これは冒険者」と区別がつく訳じゃないんだよね。実際に視力を強化して探す事の出来る強化術師と比べられても困る。

 アシュタール?

 あいつは、ほら。元々こそこそ動きながら元の世界で戦ってきたお陰かそうした経験が物凄く豊富なんだ……。

 鍛え上げられた技術は魔法を上回る好例だな。

 それによると移動術師と強化術師が二人で巧妙に魔族の駐屯地に入り込んでいるらしい。

 なるほど、攻撃術師とか治癒術師は多分、もう一人の強化術師を護衛役につけて留守番か。まあ、強化術師でも盗賊系と戦士系では潜入となると巧みさが異なるからね……。

 転移門と思われる場所は周囲に何もない。

 そうする事で侵入者が近づけないようにしているんだろうが、生憎破壊のためのアイテムを投擲するならば話は別。

 そして、投げるだけなら強化術師ならば通常考えるよりずっと遠くまで投げる事が出来る。


 「え、なんで、どうして」


 けれど、その後起きた事は俺達の想定外だった……。 

頭痛くて、夕方まで寝てました

軽い頭痛だと思って、すぐ治るだろうと少し横になったら悪化した……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ