30話:方針決定?
はい、遅れた理由はいつも通り、疲労で寝込んだだけです……
明日は竜に生まれましてを更新予定なので、こちらはお休みです
※10/17誤字修正
最終的に作戦はまとまった。
まとまったと言えるのかは分からないが……。
結果から言えば、休憩を挟んでもまとまらなかった。
冒険者ギルドからすれば、軍の足手まといを引き連れて現地まで到達するなんてまっぴらごめん。それこそ依頼を果たせなくなる!との主張を崩す事はなかった。無論、冒険者ギルドは営利企業的な面がある。代替案として、「足手まといを連れていけというなら、その分割り増し料金を寄越せ!」と主張した。
分からんでもない。
冒険者への依頼の中には、「危険なモンスターが狩られる所を見てみたい!」「自分もそんなモンスターにトドメを刺したい」なんて希望を言ってくる金持ちもある。そんなろくに自分で剣を持って戦った事もない奴らを連れて、危険地帯へと赴き、そして現場を見せるなんて仕事も実際にあるが、これらはその難易度に応じて報酬金額が跳ね上がる。待遇、というか馬鹿な金持ちの中には危険地帯に踏み込んでも食事なんかに文句をつける奴とか、豪華な馬車を持ち込もうとする奴までいる。
俺からすれば「金をもらってもごめんだ」と思うんだが、そういう連中を専門に護衛し、金を稼ぐ連中もいる。
結局の所、リスクとリターン。無論、ギルドもそうした金持ち相手の依頼を駆け出しだの、信用度の低い連中、依頼失敗の回数が多い奴なんかに任せるような事はせず、そうした連中相手には専門の連中を育成してはいる。
経験豊富でそういう連中の相手も出来るベテランに、見習いとして冒険者からの希望者を組み込み、育てる。見習い扱いであっても金持ちに怒鳴られたり無茶振りされても耐えてきちんと仕事をこなす事が出来れば、彼らのレベルでは通常見込めないような報酬が得られる。
とはいえ、危険地帯で無茶を言う馬鹿の相手は疲れるし、護衛をしながらというのも大変だ。
そして、目的の危険な生物を下手すれば危険エリアに入り込みそうな馬鹿を護衛しながら、後方に逸らさないように戦い倒す。
非常に疲れ、危険なのは間違いなく、金と苦労、双方を天秤にかけて頑張ってみようと考える者もいれば、無理だと諦める者もまたいる。
今回も同じだ。
軍を足手まといと考えるなら、その分割り増し料金を支払うならば冒険者の中には引き受ける者がいるだろう。
しかし、だ。
軍からすればそれは納得いく訳がない。
仮にも軍隊で鍛えられている連中が、それも精鋭とされる連中が「お前らは足手まといだから金を払えば連れてってやるよ」。そんな事を言われて、納得できる訳がない。
冒険者ギルドにも責任がない訳じゃない。渉外担当ならもっとうまくやったんじゃないかと思うんだが、かなりの喧嘩腰と言われても仕方のない対応だった。相手の顔を立てながら、値段を釣り上げていくという対応が出来ていればまだマシだったんだが……。
結局は、ギルドも頭に血が昇ったままだったんだろうな。
一部の幹部がうなだれた、というかがっくり来てる様子だったが、あの人達がそういう渉外担当だったんだろう……。
軍側も頭では理解していただろう。
彼らはこれまで精鋭といっても調査部隊は都市部や各貴族領への潜入といった任務が主体で魔の森みたいな場所での探索は苦手だと。
軍全体で見ても、魔獣への対応は軍という組織を利用しての集団戦が基本で、魔族という敵に気づかれないように迅速且つ静かに仕留める、なんてやり方は慣れていないんだと。冒険者なら、少数で潜入するから下手に音で他の魔獣を招かないよう、そうした技術ややり方も身に着けてるんだが、軍は「次?来るなら来い!」だからなあ。
分かっていても感情が納得出来ない。結果、ふざけるな!という事になり、双方から怒号が飛び交う有様になっていた。
お陰で、モルテン将軍とかギルドの先に述べたような人達がますます頭を抱える事になって、途中からは彼らも諦めたのか無言になっていた。
さて、そうなると結論なんて分かりきっている。
『お互いを尊重しつつ、双方より精鋭を派遣しての破壊工作』
言ってる事は立派なように思えるかもしれないが、実情は。
「お前らは勝手にやれ!俺らも勝手にやる!あ、でも森の中で出くわしても喧嘩とか妨害はなしな」
という事に他ならない。
まあ、これがギリギリの妥協点だったんだろう、あの状況では。
というか、これでもモルテン将軍やギルドの一部が頑張ったんだ、うん。特に、「お互いを尊重しつつ」という点と、妨害や喧嘩をした場合の厳しい罰則とかな。軍側でも冒険者側でもそれを証明する為に記録用の魔道具を持たせて、妨害なりを行った場合は処刑!ときたもんだ。
魔道具の貸し出しも軍が持っていくのは冒険者ギルドが用意したもので、冒険者が持っていくのは軍が用意したもの。
細工なんかがされてないか双方の責任者がいる立ち会う状況で事前にチェックを行う、と定められた。
というか、そこまでしないと双方の不信感が拭えなかったんだな……現場連中にそんな馬鹿な事をする連中はいないと信じたいんだが、上にいないとは断言出来ないし、命令だったり金だったり脅しだったりと可能性を考えるとないとは言えないのがまた辛い。
魔の森を包囲する三国の内、連合王国は崩壊、王国はこのザマ。残りは帝国なんだが……どうもあちらも似たり寄ったりな有様らしい。
「大丈夫なのかな、これ」
俺の言葉にアシュタールらも厳しい表情だった。
「……破壊工作自体が上手くいくとも限らないのにその時点でこれでは……」
破壊は転移門と同じと考えて、それを乱す術式を込めた道具、いわば転移門専用の爆弾が用意される事になった。
人って奴はこの世界でも「作るより壊す」方が得意なのは変わらないらしく、転移門の魔法を使うより、それを壊す魔法の方が楽に覚えられるお陰でそうした道具も用意出来たらしい。
もっとも、各国の極めて重要な宝物とも言える転移門の破壊は重罪で、そうした道具も通常はまた違法。
魔法もまた通常は覚えられるようなものではなく、厳重管理された禁書庫に収められてるだけ、とされている。
なので、今回も王宮筆頭魔術師(転移魔法の)にだけ明かされて、一括で造るなんて事になってるらしい。
……せめて、その作成の間に軍の実行部隊と関係深められればいいんだが、それも無理そうだ。こうなれば、せめて冒険者の側だけでも親交を深めておかねば
仕事疲れました……
あのクソ上司、何が「疲れてるから先休ませてもらうわ」だ!他が疲れてねえと思ってんのか!!
あっちがこっちより長時間労働になってるのは分かってるが、その分多めに休憩取ってただろうに




