表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/45

29話:会議は踊る、されど

 「では、一旦解散としよう」


 結局、決まらなかったわ。

 現状、一番可能性が高そうな提案としては『軍勢を動員して魔族軍を誘引、その間に精鋭をもって転移門を破壊』というのが上がった訳だが。

 ここで問題になったのは今回の探索の結果だった。

 なにせ、軍の特殊部隊は軒並み壊滅。魔獣との少数での戦いや、野山での活動を苦手としている事が明らかになってしまった。

 となると、転移門を破壊する『精鋭』というのが実質的に冒険者となってしまう。


 「それでは軍は単なる引き立て役ではないか!」


 という事なんだな。

 これが軍からも精鋭を派遣出来るならともかく、求められているのは「魔族と睨み合っての時間稼ぎ」でしかない。

 それに冒険者というのは「生きて帰ってきてなんぼの仕事」というのもネックだった。つまり、密偵らであれば「いざという時に命を捨ててでも任務を果たす」事が出来るだろうが、冒険者では身に染み付いた癖が邪魔するんじゃないか?って事だ。

 しかし、これに冒険者ギルドの代表が反発した。

 

 「依頼を果たすために我らは全力を尽くしている!」


 という事だね。

 どうやら「命を惜しむんじゃないか?」と看做されたのが誇りを汚されたように感じたらしい。

 ……そこからはもう互いのけなし合いだな。

 

 「ふん!貴様ら冒険者は命を捨ててでも任務をこなす事が出来るのか!?」

 「何だと!何故最初から命を捨てて依頼をこなす事を前提にせんといかんのだ!!」

 「はっ、性根がばれたな!所詮貴様らは金の為に仕事をしていて、命を投げ出す事など出来はせんのだろう!!」

 「最初から命を捨てる事を前提した物言いをするなと言っているのだ!!」

 「命を惜しんで任務がこなせるものか!!」

 「はっ、何をバカな事を。お前らは命と引き換えでなければ仕事の一つもこなせんだけだろう?」

 「なんだと、この野郎!!」

 「おう、やるか!!」


 と、あれよあれよという間に軍のお偉いさんと冒険者ギルドの代表が喧嘩腰になっていた。

 おまけにその勢いに巻き込まれて、軍側と冒険者ギルドの他の面子まで険悪な雰囲気になりだすし……。

 理由は分かっている。

 軍の側は自分達からも転移門破壊の為の精鋭を派遣したい。そうでなければ軍の面子が立たない。

 冒険者の側は今回の一件から、軍が魔の森での活動に向いてないと判断したので足手まといとなりかねないから連れて行きたくない。

 かといって、両者が別個に行動すると互いの足を引っ張る事になりかねない。大体、軍も今回失敗したのは理解しているからある程度冒険者に頼らざるをえないのは理解してるはずなんだが、なまじこれまで軍は冒険者にこうした主要な仕事を任せる事なくやってきたからそれに慣れていない。

 あれだな、これまで便利な下請けだと思ってたら、自分達が下請けなしじゃ何も出来ないと理解して「何とかしてください!」と頭を下げないといけなくなったエリートというのが近いんだろうか?

 そこで素直に自分達に足りないものを認めて頭を下げられりゃいいんだが、なまじ軍のお偉いさんって一部除いて貴族出身の、特に失敗とかもなくやってきた連中だからそういうのが出来ないんだ。

 この相手が同じ軍の上官だとか、王族とか、爵位が上とかならまだ下げれるんだろうが、冒険者って完全なる民間人だからな。軍でも下の方にいれば、民間人に頭下げるなんて事は幾らでもあるからそうでもないんだろうけど……。

 物資が足りないから商人に頭を下げて急遽不足する物資を掻き集めてもらう。

 優れた鍛冶師に頭を下げて、危険な魔獣に対抗する為の武器を打ってもらう。

 軍を支えるベテラン達はどれだけそういう緊急時とかに「お願い」出来る民間の伝手を持っているかが重要だ。

 

 一方、冒険者ギルドのお偉いさん達ってのはそうした下積みの経験がある。

 軍から頭を下げられて、無謀ではないが無茶というべき依頼をこなして、支えてきたという自負がある。

 そんな連中にしてみれば「現場を知らない奴らが何を偉そうに!」って事もあるんだろうな。

 お陰で、一番頭を抱えてるのは少数来ている軍の現場の責任者達だ。お偉いさん達から直接見えない後ろでペコペコと頭を下げている。実を言えば、冒険者達の側がまだ抑えられてるのは彼らのそんな真っ青な顔が見えるからだろう。

 ……どこの世界でも板挟みになる立場は大変だね。

 彼らからすりゃあ、軍の上官に逆らう訳にはいかない。けど、冒険者ギルドと関係悪化したらそれこそ彼らの仕事に支障を来す。

 モルテン将軍らが止めようとしてはいるんだが、言い方が難しいんだな。

 将軍とか現場を知る者からすれば、今回は冒険者に任せたいんだろうがそれを言うと今度は連中「それは我々が頼りないということですか!」と食ってかかってるし。下手に肯定すると後々面倒。

 かといって、「失敗したら、今度は軍も混ぜて」ととりなしたりすると、一部の馬鹿が冒険者が失敗するよう妨害しかねない。

 いるんだよな、どこにでもそういう馬鹿が……。


 かくして最後は「一旦ここで中断しよう、お互い方法を考えて時間をおいて会議の再開を」って事になった訳だ。

 にしても、これ……まとまるのか?

 いや、まとまらないと拙いんだけどね。

気温の差が激しいですね

ここのところ天気がよろしくないので寒くなったのもあいまって洗濯物が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ