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24話:遭遇

喉の痛みが治まったと思ったら、今度は鼻が酷い

まだまだ風邪は治らない模様……辛い

 「むう、こりゃいかんな」


 モルテン将軍のそんな呟きと。


 「ばれましたかね?」


 そう答えるアシュタールと。

 二人の声が重なった瞬間、俺達は一斉に身を潜めた。

 長年の戦働きに長けたモルテン将軍と、異世界ながら勇者と呼ばれるまで戦い続けてきたアシュタールと。両者とも歴戦の強者と呼ぶに相応しい。そんな二人が揃ってそんな事を呟いて、それを聞き流せる程、この場にいる面々はバカじゃなかった。

 

 「気を配ってはいたつもりでしたが」

 「あちらがどんな魔法を使っているのか分からんからのう。もしかしたら、わし等の知らぬ魔法で感知したのかもしれん」


 そんな事を緊張感のない声で呟きつつも、両者とも何時でも魔法を発動出来るよう準備しているのが分かる。

 それは後ろにいる者も同じだ。

 何しろ今回見つかった場合、襲ってくる相手は女子供にいたるまで皆殺しにしている魔族(仮称)だ。当然、こちらに向かってきた場合交戦する事になるだろう。


 (数が多ければ転移魔法も駆使して一気に逃走、その場合お荷物となる俺や凱嶮さんは強化術師が荷物として担ぐ)

 (少なければ、モルテン将軍らが一気に飛び出して、報告される前に潰して逃げる)


 そして、もう一つは。


 (……俺達以外の誰かが見つかった可能性)


 この森には軍の一団だけではなく、冒険者達もまた踏み込んでいる。

 軍の方は慣れぬ地と仕事ゆえに失敗したが、冒険者達はそうではないだろう。

 今回、動いた偵察部隊は軍から五つ、冒険者から五つ。合わせて十。その内、二つはここにあり、軍の内三つは壊滅して不確実なものが一つ(合流した生き残りは五名いたが、内二名は同じチームだった)。冒険者達は何も情報がない。

 すなわち最大で魔の森には六つのグループが存在している事になる。

 その内どれが魔族に捕捉されたのか?可能性は六分の一だ。そして、もし、自分達以外の誰かが見つかったのなら。


 (最悪、見捨てる事になる……)


 それが取り決めだ。

 誰かが逃げ出して、倒れていたなら助ける。だが、もし魔族に襲撃をかけられた場所に居合わせたなら助ける必要はない。

 襲撃をかけた魔族はその後どうするか?見回り?それとも……一つだけはっきりしている事は彼らの戻るべき場所、本拠地に戻るという事。見回りの部隊で数日戻らなかったとしても、何時かは必ず戻る。だから、知り合いが襲撃を受けたとしても自分達が気づかれていないのならば手を出さず、後を追う。

 はっきり言うが、精神的には自分達が見つかって、脱出を図る方が遥かに楽だ。

 目の前で知り合いが殺される場面を見せつけられて、その相手をぶっ飛ばす事も出来ずに神経をすり減らして追跡するなぞ考えただけで気が滅入る。何せ、俺はこれまで何年にも渡って冒険者ギルドで働き、ギルドと関係を持っていたから知り合いもそれなりに多い。今回、魔の森の奥に入り込めるような腕利きだと数が少ない上、何かあった時を考えて、こっちとしてもあっちとしてもその方が都合がいいから互いに顔見知りぐらいの関係は築いている。

 そして、世の中、嫌な予想ばかり当たるものだ。これもマーフィーの法則という奴なんだろうか?


 (……静かに、追撃を受けているようじゃ)


 アシュタールなどは完全に気配を周囲に溶け込ませて、傍にいるのに少し目を逸らせば分からなくなりそうだ。当人曰く「出来なけりゃ死ぬだけって状況が結構あったから」だそうだが。

 しかし、追撃という事は……。

 嫌な予感が当たったか、そう考えた時だった。

 この時俺達は軽い傾斜地に潜んでいた。少々歩きにくくはあるが、そこは転移魔術で補う。樹木が生えていないならともかく、こうした場所の方が魔族の通り道で運悪くばったりという危険性がないだろうと考えての事だったが、その甲斐はあったようだ。やや下方、道のようになっている場所を冒険者達が駆けて来た。


 (あいつらは)

 (知り合いか?)


 黙って頷く。

 軍人であるモルテン将軍達に、他国の冒険者だったアシュタール達。今回、共に動いている冒険者に対して一番知識を持っているのは間違いなく俺だ。


 (ランクCパーティ、『翠の狩人』)


 あまり戦闘力自体は高くなかったパーティ。少しずつ実力を磨いてCまで上がって来た面々。幾度か怪我人の対応もした事がある。気のいい奴らだった。

 追われているのが魔獣であれば、助けるにも問題はないが、魔族であったなら……。

 そして、姿を見せた追手は魔族だった。

 

ぶり返したら、どうしよう

という訳で、更新してなかったら「あ、また風邪でぶっ倒れやがった」と思って下され

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