10話:幕間/魔族の事情1
侵略者側の事情
昨日は夜勤の眠気に負けて、夜アップ
今日は何とか耐えてアップ出来ました
「アルジュ!お前、現地住人と戦闘に至ったというのは本当か!」
「ルオーネか……ああ、そうだ」
同僚の将を見つけて思わず叫んだ彼女を見たアルジュは何だそんな事か、とばかりに頷いた。
もっとも同僚と言ってもルオーネが政治担当の文官であるのに対し、アルジュは軍事の担当である軍人だ。しかし、共に同じグループの育成装置から出て、まだ生き残っている数少ない相手として何だかんだで付き合いは深い物があった。そのはずだった。
「何故だ、我々はどう言いつくろった所で侵略者に他ならぬ!それをいきなり攻撃するなど……それでは交渉の余地すらなくなってしまうではないか!」
「ある訳ねえだろ、そんなもん」
歩みを止めない友人にルオーネが尚言いつのろうとした瞬間だった。
足を止めたアルジュが振り返るとルオーネの襟首を掴み取った。
「いい加減にしろ!!」
思わず目を瞬いたルオーネに対し、アルジュは言葉を続けた。
「いいか、俺達の世界はお前も重々承知の通り、くそったれなご先祖様のお陰で生きるのが不可能になるのもそう遠い話じゃねえんだ!」
「そうだ、だから……」
新たな世界への移住を試みていると続けようとしたルオーネの声にかぶせるようにしてアルジュは言葉を続けた。
「あちらの世界の奴らが俺達の移住を了承すると本気で思ってんのか!?少数ならともかく、俺達の世界の住人の内半分でも、だ!」
「それ、は……」
「無理なんだよ!!あの人がいねえ森だけで暮らしていけるなら何とかなったかもしれねえけどな!!どうやった所でそれだけじゃ足りねえんだ!!」
彼らの世界が汚染され尽して長い。
かつては繁栄していたという世界は、だがアルジュの呼ぶ所の『くそったれなご先祖様』達の起こした戦争のもたらした深刻極まる汚染によって共倒れの形で終わりを告げた。最初のきっかけは何だったのかは分からないが、一つだけはっきりしているのは現在の世界は人がそのまま暮らすには厳しすぎる土地だった。
人は生き延びる為に戦争をやめ、その繁栄を生き延びる為に消費していった。せざるをえなかった。
だが、それも限界に来ていた。かつて人が保有していた技術の大半は失われ、遺失技術で構築された建造物に住み、汚染から逃れる日々だった。既にその建造物を再度構築する技術どころか整備する技術すら失われ、故障した所を修理する技術も資源も既に大半が失われた。
このままでは滅ぶのを待つだけ。
そんな絶望の中、長い時間の間に汚染が落ち着いて、人が住めるようになった地はないかと、せめて生き延びる事の出来る土地はないかと決死の覚悟で捜索を行っていた軍が探索の中、汚染の薄い土地が発見された。
それでも、人が浄化装置も何もなしに長期間暮らせる程ではなかったが、これならもしかして周辺にそのような土地があるのではないか?そう考え、徹底的に周辺が調査された。汚染なき土地がなかったにせよ、汚染が少ないのならば、その原因を見つける事が出来れば何等かの手段が取れるのではと淡い期待を抱いてもいた。
そんな中発見されたのが一つの洞窟だった。
この世界の汚染が流れ込むその中を調べた彼らはその中で汚染が流れ込む穴を発見。その穴を潜った瞬間、異世界へと転移していたのだった。
そこは確かにうっすらと汚染が漂ってはいたが、十分今の多少なりとも汚染に対して耐性の与えられた人類には生存可能な領域だった。
この発見は迅速に発表され、そして人々は歓喜した。
迫る絶望に怯えながら生活する人々にとって、この情報は正に希望だったのだ。
「そんな所へ『あっちにも人が住んでたから一部の人しか移住出来ません』なんて言ってみろ。暴動が起きるぞ」
「それは……確かにそうだが……」
「大体、相手が認める訳ねえだろうが!こっちの世界の全員が移住して暮らせるだけの土地を分けてくれ、って言われたってな!あの広い森が幾ついると思ってる!!」
「………」
ルオーネにはもう反論出来なかった。
確かに、彼らが長年暮らしているであろう土地をくれ、と言った所で「はい、どうぞ」とくれる訳がない。交渉を行うにしても間違いなく十分な土地の確保は出来まい。
そもそも、交渉にはどれだけ時間がかかるのか。それまでこの世界はもつのか……それすら分からなかった。
「分かっただろうが。どのみち戦うしかねえんだよ」
「だが、勝てるのか?今の所、我々はあの洞窟を通るしかないんだ。補給はもつのか?」
「どのみち遺失兵器は持ち込めないからな。今じゃ俺達も昔ながらの剣や槍だがあちらもそれは同じだった。獲物はこちらの合成食品じゃない新鮮な肉が得られるから狩る際の危険はあっても志願者が多数いるのが現状だよ」
本来なら一気に移住を行いたい。
しかし、こちらとあちら、双方の状況がそれを許さない。
洞窟までは未だ動き続ける遺失兵器の殺戮機械がうろつき、それを抜けた先も奇妙な力を使う動物が襲い掛かって来る。
幸いなのはこちらと異なり、あちらの動物は食えるという点な事だが。味気ない、栄養だけを考えた合成食料より間違いなく美味いのだが、狩りで多数の住人の食を賄うのは不可能だ。
したがって現在は何とかあちらの世界の出入り口近辺に要塞を構築し、次第に領域を広げていくべく活動を続けている。
「こうなった以上仕方ない。どれだけの領域が必要なのか早急に数字を出す」
「ああ、頼む。……汚染があちらにも噴き出しているのが気になる。塞ぐ方法も考えておかないと汚染から逃れた先がまた汚染されたって事になりかねん」
その為の要塞ではあるが……。
「全員が幸せになれる方法があればいいのにな……」
「ありゃあいいんだがな。生憎そんなもんは夢物語だ」
やきうセパ両リーグ同時優勝か?とも言われてたんですけどね
台風が台無しにしてしまいそうです




