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13 ザンニ国貴族の報告

遅くなりましたm(__)m

朝日が登り、澄んだ空気に包まれた爽やかな朝。

テヨーワは、地域によって多少の違いはあるけど、雨季と乾期と温季が必ずある。

ラハト帝国やホザ王国の北部は、温季と雨季の間に寒季があるらしく、雪が降るみたい。

見たことないけど、前世の記憶にはあるので、是非一度は生で見てみたい。

私は、今日のような穏やかな天気の温季が一番好き。

穏やかな気候が、私を応援してくれている気がするから。


(……昨日一日が濃すぎて、爽やかさが身に染みる……)


気疲れした昨日の事を思い出すと色々な感情が胸で渦を巻くけど、気を取り直して。

兄の婚約者の正体がものすごく気になるが、訊いたってどうせ教えて貰えないだろうしね。

さあ今日は、昨日買った魔道具について色々としてみよう!



私の今日の予定はガラ空き―――いつも予定が無いともいう―――なので、朝食を食べ終えると、早速作業場へと向かった。

以前、暇つぶしでピザ窯みたいなのを作ってから、部屋で何かしようとすると怒られるんだよ。


作業場は領邸の敷地の隣に建てられた二階建ての一軒家の一室。

この建物は、ルーナ商会の建物で、地下もあって、店舗としては大きい方だと思う。

地下は、素材置き場・完成品置き場・作業場(小)の三部屋。

一階は、商談スペース・執務室(小)・給湯室・作業場(大)×2の五部屋。

二階は、重役部屋×3・執務室(大)の四部屋。

防犯上カギがついている部屋ももちろんあるけど、私は全てフリーパス♪


魔道具の解析や開発をするには、二階の重役部屋の1つのマイ執務室を使っている。

もちろん残りの重役部屋は、父(会頭)部屋と兄(開発者)部屋である。


お土産三人組とミアン・ウェルナを連れて、ゾロゾロとマイ執務室へ歩いていく。

専属護衛のエドワードとアルバートもついて来ているけど、彼等は建物の周りや執務室以外の警戒のために、用事がない限り部屋へは入ってこない。


四人掛けのテーブルと作業台、執務机という、至ってシンプルな20畳程のマイ執務室に入ると、ニールとスーさんとジョンにはテーブルについてもらい、ミアンとウェルナにはお茶と作業準備をしてもらった。


私も四人掛けのテーブルにつき、昨日一日の事について話に花を咲かせる。


「ねえ、昨日のザンニ国の貴族の人ってどうなったの?」


「はい、レミー様。詰め所で注意を受けた後は、そのまま貴族街の方へ案内されたそうです。商業地区の混乱というのが、今回のように マルナ領地の風習と 他国の風習の食い違いから起こっております。商人などの平民には大変喜ばれておりますが、貴族の方々は馴染みがないせいか、抗議などをしてこられる方もいらっしゃいます。また、我が領地の貴族街は他国と比べて質素ですので、皮肉や蔑みの言葉を言われる方もいらっしゃるようです。」


スラスラ答えてくれるニールに、感心する。さすが臣下代表。

私専属の臣下は、貴族3(ニール・エドワード・アルバート)・半貴族1(スーさん)・平民3(ジョン・ミアン・ウェルナ)という構成。


ニールはイラルド国の男爵家の三男だし、エドワードとアルバートはバルフェ家が家臣に与えた“準子爵”の爵位を持つ家の次男と三男。

貴族の息子だから貴族っちゃあ貴族なんだけど、彼等の兄弟の誰かが家を継げば3人は自力か誰かの家に仕えるかして爵位をもぎ取らないと身分が平民に落ちる。

だからどうしても、家を継がない私よりも次期当主の兄に仕えた方がいいんじゃないかと思うんだけど……。


スーさんは、一代限りの名誉貴族になった旦那さんのお陰で貴族夫人。

しかし、爵位は旦那さんのみに授与されたので、スーさんの身分は平民。

なのに、“名誉貴族夫人”“名誉貴族の未亡人”という肩書きはあるので、貴族扱いされる場合がある。

この“場合によって”というのが面倒で、スーさんはちょっと微妙な立場にある。


なので、私の臣下で一番位の高いニールが必然的に臣下代表となり、皆を纏めている。

そして、スーさんが年の功でその補佐をしている。

護衛の纏め役がエドワードで、侍女・従者の纏め役がスーさん、魔道具関連の纏め役もスーさん、でニールが全てを纏めているのだ。


っと、考え事が横道に逸れちゃった。


「えっと、うちの風習が馴染みがなくて文句を言ってくる貴族がいるってことね?」


「ええ、そうです。レミー様はバルフェ家のご令嬢ですので、その文句をぶつけられる可能性も高かったので、外出を控えていただいておりました」


「ふう~ん」


「また、昨日の貴族のように子供だろうが容赦なく突き飛ばしてくる輩も居ますので、騒動に巻き込まれないように、という事も配慮いたしました」


「え?昨日の人って私にぶつかってこようとしてたの?」


「はい。エドワードとアルバートによりますと、レミー様がキョロキョロしながら歩いていた事を見ていたはずですが、避けるなどはせずにむしろレミー様に向かって歩いてきていたそうです」


「え゛。性格悪い」


「そうですね。周囲の平民より身なりが良かったので、お金でも踏んだくろうとしたのかもしれません」


「うわっ」


「今までの入国者と言えば冒険者などの荒くれ者が多く、マルナ領地の平民は貴族などの高貴な方々の相手をあまりしたことがありません。ですので、そこをついて平民を落とし入れようとなさる方がいらっしゃってもおかしくありません。しかも、そのような事をされようとするのは爵位の低い方が多いようで、バルフェ家に何らかの落ち度を被せて優先的貿易権や賠償金等の獲得を狙っていますね」


こりゃあ、いきなり有名になった弊害だね。

今まで身近に居なかった“貴族”に対する平民の意識を徐々に変えていく期間がなかったもんね。

“マルナ領地を国として扱う”ように急に意識を変えろと言われたのは、マルナ領民も一緒だ。


「大丈夫なの?」


「ええ、今回のような懸念も考えられましたので、貴族街と平民地区の間に領兵を立たせてあるのです」


「だから、“きちんと説明を行いました”という建前が通るのね」


なるほど~と納得していると、ニールが口元をニヤッとして、


「ついでに、各国に通達をしてあるそうです。」


なんと用意のいいことで。

まあ、うちも急な変革を起こしたので、領民がついてこれない可能性を考えてたんだろうな。

昨日の貴族は自国で通達を受けているはずだし、マルナ領地でも説明を受けているのにもかかわらず、ヤっちまった痛い貴族というレッテルが貼られるんだ。うん、いい気味。


ザンニ国の貴族の話は理解したので、ここら辺でいいかな。

気になることは、また訊けばいいし。

ミアンが淹れてくれたお茶を飲んで、一息。

扉の横に立っているウェルナに顔を向けて口を開く。


「そっか。ウェルナ、他国の貴族がどれぐらいうちの領地に入国してるのか聞いておいてくれる?」


「はい。解りました。領都は、今日中に。大きな街は四日程かかるかと思います。厳密な数をと言われるのでしたら、十日いただけますか?」


「う~ん‥‥‥厳密な数がいいかな。場所(街名)・一週間ごと・入国数・出国数・出身国・爵位がほしいかな。モンスタービート会議後から今日までのでいいわ」


昨日みたいな事が各街で起こっているなら、大体何割の人が問題行動を起こしるのか、何処の国の人が多いのか、知っておいた方がいいだろう。

もしかしたら兄が既に調べてるかもしれないけど。

あまりにも目に余るようなら、国に抗議しとかないと、何時まで経っても減らないもんね。


「それでしたら、ウェルナでなく私の方がよろしいのではないですか?」


ウェルナが“かしこまりました”と礼をしていると、ニールが口を挟んできた。


「ニールには、違うことをお願いしたいの」


「どの様なことですか?」


「ウェルナと同じ項目で、調べるのは詰め所に呼ばれた貴族、つまり、我が領民に何か損害を与えようとした人を調べて欲しいの。入出国の人数なら突っ込まれても言い訳が出来るけど、ウェルナが他国の貴族の事を調べると身分的にマズイでしょ?」


ニールとウェルナの顔を交互に見て考えを伝えると、二人とも瞳がキラキラしてきた。

これで、「国別」・「街別」の入出国者の推移や、「国別」詰め所行き者数などがバッチリわかるだろう。

調べたら、父上や兄に渡してお任せしてしまえばいいや。そしたら、対策に役立つだろうし、混乱が減れば私が出掛け易くなるはず。うふふ。


「「かしこまりました」」


私の思惑に気付かない二人は、「ご配慮感謝します」とか「さすがです」とかこぼしながら返事をしてくれた。

後々見易いように表計算の記入例を説明して、この話を終わろうとするが、ニールが興奮してしまった。


「レミー様!これは素晴らしいですね!見易くて解りやすいですね!」


ニール興奮しすぎ‥‥‥‥。

この世界では、表になっているものは上から下に合計するだけで、左から右へ合計することはないらしい。

ちょちょいのちょいと簡単な表計算を書いて見せ、グラフにする事を言ってしまってから、ニールがうるさい。

グラフだってモンスタービート会議で披露したし、そんなに目新しいもんじゃないだろうに……。

“教えてください!”って講義を迫るんじゃない。


……あ……機密情報だからニール達は関わってなかったっけ……。

ま、一緒に書類を作成する時にやり方は分かるんだから今はいいじゃん。


「ニール、もういいから。この話はもう終わり。今度は、二人が調べてきてから!」


この問題は二人が調べてきてくれてからじゃないと検討できないので、もう話すことはない。


昨日しかめっ面をしてたスーさんに聞きたいこともあるし、魔道具の開発もしたいのに、表計算やグラフの話で今日一日が潰れるなんて嫌だ。

ニールの暴走ぶりに頭を抱えている私を見て、スーさんがポツリと言った。


「ニールさん。レミー様が嫌がられております。そろそろお気付きになった方がよろしいですよ?」


冷ややかな声とヒタヒタと流れてくる冷気に、ニールの言動がピタリと止まった。

スーさん、さすがです!

興奮した顔はそのままで、なんとか言動は落ち着いたニール。

ニールには、まだ頼みたいことがあるので、意識の切り替えをしてもらいたいんだけど‥‥‥イケるかな?

それに引き換え、ウェルナは早速調べに部屋を出ていった。


「違う話に移るから、ニールも落ち着いて頭を切り換えて」


気を取り直してニールに注意を促し、次の話題へと意識を向かせる。


「この前お兄様がね、外出の危険性を教えて下さったの。その時に、魔道具作製者について商業ギルドに問い合わせが沢山きてるって言ってたの。昨日のラハト帝国の商人さんが言ってた事と合わせて考えると、ちょっと気にかかる事があるの‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥ツサメ子爵」


眉間にシワを寄せて、ボソッとスーさんが呟く。それを聞いて、ニールもジョンも思案顔になった。


「それでね、スーに聞きたいことがあるんだ」


「魔道具の事ですか?」


硬い声で聞いてくるスーさん。


「それもあるんだけどね、旦那さんが亡くなった後、何かなかった? 確か、魔道具の権利書は献上したんだったよね?」


段々と表情が歪み、心底嫌そうな顔をして、スーさんが口を開いた。


読んで下さりありがとうございます(* ̄∇ ̄*)

そして、遅くなって申し訳ありませんm(__)m


活動報告に載せた体調不良は治りました。

更新を待ってくださった方、ご心配してくださった方、皆さま本当にありがとうございます。


これからは、週一で更新していく予定です。

当作品を優先するつもりですが、ストックがなくなったり執筆が滞ったりした場合は『面倒事はいつでもやってくる』の方を更新しますのでご了承下さい(;・ω・)


そして、メカスキルが低く、更新が飛んでしまう事の多い作者をこれからもどうぞよろしくお願いいたします(´・ω・`)

・・・きっと作者はノートパソコンに呪われてる・・・重たくて動きゃしねえorz

コピペで更新するのに3日かかった・・・(。´Д⊂)

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