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10 兄の仕返し

コンコンッ


「お兄様、レミーです。入ってもよろしいですか?」


「いいよ」


兄の執務室に行くと、黒い笑顔のダーンさんが。

ついでに、目が笑っていないブリックさんとヤミツさんの兄の側近2人も。

事情を知ったんですね。はい。


「レミー様、災難でしたね」

「傷は本当に無くなったんですか?」


ブリックさんとヤミツさんが沈痛な面持ちでソファーに案内しがてら、頭を撫でてくれました。


「大丈夫よ。ほら、傷もないでしょ?」


にっこりと笑うと二人ともホッとした様子だった。

心配かけてごめんなさい。

でも、私が悪いんじゃないよ?

いきなりぶたれたんだよ?


ソファーに座ると、兄からあの状況と女の人の説明が聞けました。


「レミーが出掛けてからしばらくして、あのご令嬢がやって来たんだ」



*****(回想 オルコ)


「オルコ様、ラハト帝国のロンバルディ公爵令嬢のキャシー様とおっしゃる方がお見えになっています。いかがいたしましょうか?」


執務室で書類を捌いているとダーンが困った表情で訊きに来た。

ロンバルディ公爵家は確かに知っている。

しかし、直接交流した事はないし、我が家に来る約束もない。


「ダーンから見て、本当に公爵家のご令嬢だと思うか?」


「はい。本日面会のご予定はございませんのでお引き取り頂こうと思いましたが、ご本人がそうおっしゃいましたし、何より着ていらっしゃるドレスや装飾品が高級な物でした。また、扇に家紋があるのがチラリと見えましたので、一度オルコ様にお伺いしようと参りました」


「そうか……」


「あ、オルコ様、ロンバルディ公爵家って確か婚約の打診が来てなかったですか? 三か月ほど前に」


ヤミツがそう言って、書棚をガサゴソ漁ると、二つの手紙を取り出した。


「ほら。ダーンさん、家紋ってコレと一緒でした?」


「……チラリとしか見ておりませんが、よく似ています」


「オルコ様、ロンバルディ公爵令嬢っぽいですよ」


ヤミツから手紙を渡され、再度中身を確認してみた。

内容は他の貴族とほとんど同じで婚約の打診と断りへの返答だったが、角ばった字で率直な文面の武人らしい手紙だった。


「う~~~んと……ロンバルディ公爵家は、ラハト帝国の」


「国軍団長だろう?」


貴族年鑑を引っ張り出して調べていたヤミツに被せ気味に答えた。

流石に他国の国軍団長を知らないとは恥ずかしい事だ。

しかし、ご当主は知っているが娘がいるというのは、この手紙を貰って初めて知ったぐらいだ。


婚約はお断りしたし、ロンバルディ公爵様からも理解は得ている。

なのに、令嬢がやって来たのか?

一人で? 何をしに。


(―――あれか、我が家と無理にでも縁をつなぎたいってやつか)


だがしかし、ロンバルディ公爵様は婚約の件は了承されているし、あわよくばの打診だったので断られて当然だともお手紙に書かれていた。


(―――なら、なぜ今更?)


「父上に連絡してから、令嬢に会う。玄関から一番近い応接室にご案内してくれ」


「かしこまりました。ご令嬢は既に玄関横の応接室にご案内しております」


「俺はどうしましょうか?」


「令嬢に要らん勘ぐりも策略もされたくないからな。ヤミツは監視と状況証拠の確保をしてくれ」


言葉と共に、ダーンとヤミツが執務室を出て行く。


「面倒なご令嬢ですね。追い返してしまえば無礼になりますし、領内で怪我でもされたらこちらの責任にされ兼ねませんし、かと言って面会すればあちらの思惑通りになりますね」


黙々と書類の処理をしていたブリックが、つぶやいた。


「そうだな。しかし、約束も取り付けずに人の家に来るのは失礼だと思うが」


「それは、どうとでも取り繕うのではありませんか? 例えば、お会いしたくてたまらなくて来てしまいましたとか、手違いで手紙が届いてないとか」


「ふむ……」


「一番面倒なのは、恋心を前面に押し出してマナー違反を有耶無耶にし、既成事実を作られる事ではないでしょうか」


「……面倒だな」


「はい。面倒です」


書類を捌きながら告げてくる話は頭が痛くなるものだった。

実力行使すれば何とかなると思っている、頭の弱い令嬢かと思うと相手をしたくなくなる。


あまり待たせすぎるもの失礼になるので、仕方なく父に連絡をし、ラハト帝国の使者の方に伝言をお願いしておいた。

父は二回目の賠償金受け取りの手続き等の為に、丁度ゴアナ国に行っている。

罰金支払いが終わる7か月後までは、モンスタービート会議の面々もゴアナ国に居るので、手紙を送るよりも早く伝わるだろう。


仕方がない……気は向かないが、令嬢の思惑を確かめるか。


*****


公爵令嬢がやって来た時の兄達のやり取りや気持ちを聞いて、さすがだなと思う。

誰一人として焦っていない。


ただ、話している兄の顔がとても渋くなっている。

よっぽど嫌だったんだろう。


そして、続きを促すと、なぜか映写機とレコードプレーヤーが出てきた。


「え?」


「今から見せる物をロンバルディ公爵様にも送ったんだよ」


兄達4人が揃いも揃って、目に怒りを灯して口元をニヤッと歪めた。

うわ~……見たくない……。

この4人がこんな顔をするくらいだもん。

何かあったんだよね?


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