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05 新開発? 2

あと開発したものとしては、プリンター。

テヨーワでは、数枚の書類や本をコピーするなら書写が主流なので、ちょっとお手軽に出来るようにしたかったのよ。


一応、版画印刷や活版印刷の技術はある。

ゴアナ国王都にも、印刷屋さんがあったらしい。


けれど、経費の掛かる紙を使用して同内容の大量の書類が必要になるのは、政務に携わるものや各ギルドなど限定的な職種で、個人で必要になるのは貴族くらい。

識字率が貴族や商人などの書類を多く扱う職種に集まっていて、庶民はさほど高くないから、庶民には必要になる事がまずない。


しかも、5枚1鉄貨(1ペー)もする紙を使用して、同じ内容の本を大量に印刷しても、売れなけりゃ紙代で大赤字。

少量の印刷だと、紙代よりも手間賃がお高い。

なので、個人的なものや少量のものに関しては、書写が主流になっている。


マルナ領も政務に関する型枠の書式を版画印刷しているが、全文同じ内容の書類を数枚作成する時は手書きである。

すぐに必要なのに、一々彫っている時間は無いし。


だけど、領政改革や領都改革で各案件書類が必要になって、部数は少量でも案件は大量で、文官の人達が軒並み書写によって腱鞘炎で苦しんでいたのを見て、作っちゃいました。

父にも兄にも好評で、なにより文官の方達から大絶賛です。


仕組みは簡単。

魔力を帯びたインク(魔インク)、魔力を感知し記憶する魔道具スキャナー、記憶した魔力を映し出す魔道具プロジェクター、感知した魔力にインクを噴き出す魔道具スパウターを使用します。


印刷台として、一般的な書類の大きさ―――たぶんA4?―――よりもほんの数ミリ大きい木箱(箱型)を使用。

用紙を出し入れするので、側板一か所が取り払ってあり、天板に3か所穴が開いています。

天板中央孔はスパウター、その上部にスキャナーとプロジェクター用の穴が作られていて、魔道具の脱着が可能にしてあります。


まず、魔インクで印刷したい原本を書きます。

それを台の中に置き、スキャナーでパシャリ。

これで、原本の記録はおしまい。


台の中の原本を取り出し、印刷したい枚数の用紙を替わりに設置。

今度はプロジェクターで原本を白紙に投影。

そのままでスパウターを起動すると一気にインクが噴き出し、原本と同じ物が印刷できる。

以上。


使い方も簡単だし、業務用と個人用の開発をしてみたら、個人用が邸宅に詰めている文官さんや役職持ちの方々に大人気。

まあ、スキャナーは写真機の、プロジェクターは映写機の応用です。


魔インクも込みでセットになっている商品だけど、ここルーナ商会に見当たらない。

なんでだろう?


「というわけで、ルーナ商会はここ商業区域の東門通りと行政区域の北門通りに2店舗お店を構えています」


それだ!!

ニールの説明をすっごい聞き流していたけど、開発したはずの商品が見当たらないのは客層に合わせて置いてないんだ。

一人で納得していると、ニールからヒンヤリとした空気が……。


「レミー様、お聞きになっていらっしゃいましたか?」

「……エエ、キイテマシタヨ」

「それならばよろしいですが……本当に?」


一重の目をさらに細めて訊かれて、降伏しました。


「ゴメンナサイ。キイテマセンデシタ」

「……はぁ……」

「ニールさん、いいじゃありませんか。レミー様も目新しい物がいっぱいで、気がそぞろになってしまうのもしょうがないと思いませんか?」


スーさん! ナイスフォロー!


「……そうですね。レミー様の楽しそうなお顔からすると納得いきませんが、スーさんの言われる事ももっともだと思いますので……仕方ありませんね」


よし! ニールのお説教がなくなった!


「レミー様、少し考えていらっしゃったように見えましたが、何か気になる事でもありましたか?」


ニコニコと優しそうな笑顔で尋ねてくるスーさん。

ありがとう! ニールを止めてくれて!

つられて私もニコニコしながら訊いてみた。


「ねえ、私、商会で開発した商品の特許料とか全く知らないんだけど、私の口座ってどうなってるの?」


スーさんとニールがキョトンとして目を合わせた。

え? スーさんとニールも知らないの?


「あの、私は存じ上げないのですが……。ニールさんは?」

「レミー様はお聞きになっていないのですか?」


え? 誰に訊いたら教えてくれるの?


「えっと、誰に訊いたらいいのか分からないし、訊かなくても平気だったから……」

「……そうですか」

「うん。音声レコーダーの利権書や他の開発した商品の利権書を私が持ってるって事は知ってるけれど、誰が管理してるのかとか、どれくらいの特許料だとか、誰が口座を管理してるのかとか、全く知らないの」

「「……」」


あれ? 二人とも可哀想な子を見る様な目で見つめないでほしいんだけど……。

そりゃあ訊かなかった私が悪いかもしれないけど。

いや、知らないというか覚えてないのかもしれないけども。


だって、開発する時にはルーナ商会の本部―――邸宅の敷地の隣―――に行って、必要な物を言えば用意して貰えたし、お出掛けの時にはスーさんやニールがお金払うから私持って無いし。

つうか、お金を必要とする機会があっても誰かが何とかしてくれるから、すっかり忘れてたんだよ。


「……えっと、でどうなのかしら?」

「……レミー様、ここでは不適切なので個室を借りて少しお話いたしましょうか」

「……はい……」


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