特務団員の分かれ道③―――貴族
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蒸し暑い季節になりましたので、熱中症にお気をつけください。
―――――ある貴族の三男の場合
‥‥‥国が潰れるって。
うちの家ヤバイんじゃないかな。
でも、言っちゃいけないしな。どうするか‥‥‥。
‥‥‥いいか。マルナ領地に行くか。
家の繋がりを広げるために生きろ、次期当主のスペアですらない三男だから家には迷惑をかけるな、と教育され、政略結婚の駒にされそうだったのを特務団に所属して回避したもんだから、今や俺は家族からは身内として扱われてないし。
特務団は、貴族からすると「危険・キツイ・汚い・気持ち悪い」の四拍子揃ったハズレ職業だ。
騎士総団の入団試験には喜色満面だったくせに、特務団所属になった途端に出ていけコールが親戚中からも来たしな。
もう、家族とは言えないだろう。
心機一転、マルナ領地で頑張るか。
金が無くなったときだけすり寄ってくる身内も面倒くさいし。
この際、お互い自立するべく、離れるのが一番だな。
「俺、マルナ領地に行きます。」
――――――ある貴族の長男の場合
ふむ。バルフェさんキレたな。
聞けば聞くほどゴアナ国に呆れるばかりだ。
俺の領地は、モンスタービート討伐に部隊を派遣しているし、マルナ領地とも友好的な関係を築いているから、あの領地の悲惨さをよく知っている。
本来、国から出すはずの支援金も無く、今までよくもったなと思うほど、領地経費の支出のやりくりが本当に素晴らしい。
ただ、領地の混乱はな‥‥‥。
これは父上に相談せねば。
モンスタービート会議に参加していなくとも、王都には来ているだろう。
父上から、バルフェさんに探りを入れてもらえば、今聞いた情報をだしても大丈夫だろう。
まずは、モンスタービート会議決定事項の詳しい内容を知らなければならないな。
うーむ‥‥‥国を残すなら、借金まみれを覚悟の上でないといけないか。
しかも、モンスタービート条約に基づいた国作りも必要になる。
金髪至上主義よりも討伐至上主義に変換か‥‥‥。
こりゃ、確かに混乱するな。
今までの価値観が一気に下落、野蛮だの汚いだの言われていた魔物討伐仕事が、重要な国際的任務だからな。
今この国で一番のキーポイントは「討伐参加」だろう。
モンスタービート討伐参加領地と結束したら、この国の上層部にのし上がれるのではないかと思うが、国を残すより俺達も独立した方が領地被害が少なくて済むような気もするな。
まあ、まずは、父上に探りを入れてもらおう。
「ロン。お前長男だったな。どうするんだ?」
その前に、他の貴族子息と情報交換だな。
「ああ、俺は父上に相談しなくては、まず国から離れられないからな。」
「そうだよな。俺は四男だし、身内からどうでもいい扱いだから、迷ってる。」
「自分の未来を決めかねない重要な決断になると思うから、じっくり考えた方がいいな。」
「?どう言うことだ?」
「モンスタービート会議で決定されたと言うことは、国際的にこの国が悪いという認識になっているのは解ってるな?なら、その国に所属しているだけでも、国際的にはいい印象が無いようなもんだからな。そこに、限定的に良い印象を持たれているのは、魔物討伐参加者だ。俺達はその枠に入ってる為に、他の貴族や国民よりもはっきり言って待遇がいいのかも知れないぞ。恐らく俺達以外は国外脱出が出来ないということだろう。」
「そうか。そうなれば、身内や市民から嫉妬の嵐だな。しかも、国の借金があるから税金が上がるか‥‥‥。」
「恐らくな。ちょっとやそっとの借金じゃ無いから、国が潰れると言ったんじゃないか?副団長は。そう考えると、貴族もだろうがそれよりも一気に国民が貧しくなる。物価高騰ってことは、略奪やら盗難やらがあふれて治安も悪化するだろう。」
「うわ~ぁ‥‥‥この国終わってんね‥‥‥。」
「‥‥‥そうだな‥‥‥。」
「ああ、だからか。俺らに選択させるの。」
「何がだ?」
「この国に残って国を建て直すのに尽力するか、マルナ領地で魔物討伐に尽力するか、他国に行って心機一転新生活を始めるのか、ってことだろう?まあ、俺も、もうちょっと考えてみるわ。」
「ああ、そうか。」
(―――――国に残るからと言って、建て直しに尽力するとは限らないけどな‥‥‥)
『特務団員の分かれ道』はこれで終わりです。
マルナ領地に転職する特務団員って、そんなに早く来れるもんかな?と思って書いてみました。
あと数話、閑話をアップしたら、第二部に取り掛かります。
ぜひ、おつきあいいただければと思います(* ̄∇ ̄*)




