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実演販売・陸

今月の投稿になります。

今回はいわゆるお披露目会ですね。周辺国の力を高めて、同盟を組んで、大規模国家にも対抗できるようにしようという試みです。


 旭日たちがオルファスター王国に圧勝してから2ヶ月以上が経過していたが、意外にもヴェルモント皇国はまだ動きがなかった。

 日本が保有している諜報組織によれば、陸軍と海軍が港湾部に続々と集結しているという情報はあるものの、弾薬を含めた補給物資の手配に時間がかかっているらしく、オルファスター王国への侵攻にはもうしばらく時間がかかるだろうと推測されていた。

 また、オルファスター王国とヴェルモント皇国は地続きになっているため、陸から攻めることを重視しているのかもしれない、という話も出ていた。

 日本にとっては思わぬ時間の余裕ができたので、その間に『松型駆逐艦』の3番艦、『梅』を就役させ、さらに『秋月型駆逐艦』の2番艦である『照月』が就役していた。

 現在はドックで『薩摩型巡洋戦艦』を含めて航空母艦も建造中である。国内のドックは港のある4箇所に多数増加しており、日夜を問わず船の建造が行われている。

 旭日としては、港湾都市に近いポイントにもういくつかドックを設立して、軍民問わず大規模な造船能力を手に入れるつもりだ。

 いずれはあきつ丸のような兵員輸送艦兼近接支援航空機を搭載可能な船舶も建造しなければならないからである。

 そんな時に大日本皇国から『販売したい武器についての実演を行いたい』という通達が届いた文明圏に属さない弱小国の多くは、『列強国による理不尽を跳ねのけられる可能性が少しでも高くなるなら』とそれに応じる姿勢を見せた。

 その結果、先述の8ヵ国に加えて、オルファスター王国に支配されていたケナシュルム王国とボンパコ共和国の2ヵ国、さらに数ヵ国もこの招待に応じることになった。

 各国の武官と技術士官、そしてお財布を握る財務関係者が大日本皇国の港湾都市キイの西部にある練兵場に集まり、そこに用意された標的をしげしげと見つめている。

 そこに、大日本皇国の陸軍兵士たちが現れた。

 甲冑具足が正式な姿だったこれまでとは全く異なるカーキ色の軍服姿に、思わず『おぉ』という声があちこちから漏れていた。

 その中から、1人の若い男性が進み出た。

「各国の皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。私は今回の実演販売に当たりまして解説役を仰せつかりました大日本皇国陸軍第一師団第3歩兵連隊所属の黒部渉少尉であります」

 彼は大蔵艦隊に随伴していた陸軍軍人の1人である。

 黒部少尉の敬礼に各国関係者も敬礼で返す。

「さて、早速ですが……まずは歩兵が携行する兵器についての実演です。皆様は『銃』はご存知ですよね?」

 すると、フレッチャー共和国の武官が声を上げた。

「あなた方やオルファスター王国が使っていた火縄銃に、列強であるヴェルモント皇国も銃を採用しているとは聞いたことがありますが……今あなた方が背負っているものも銃ですよね?」

 フレッチャー共和国の武官が指さしたのは、陸軍兵士の背中にかけられている小銃だ。

「はい。これは『九九式小銃』と言います。では、まずは射撃の具合を火縄銃と比較していただきましょう」

 そう言うと、兵の1人が火縄銃を取り出す。

「構えっ‼」

 素早く構えるその動きは洗練されている。

 各国の武官たちはその動きを見るだけでも、この銃を扱う兵が高い訓練を積んだ存在だと気付いた。

 そんな兵士が狙うのは、50m先の的だ。

 弓矢で狙おうと思うと、直射では威力が落ち始める部分で、曲射するにはかなり近い。

 そんな微妙な距離を狙おうということらしい。

 そして、兵士が己のタイミングで引き金を引く。

 


――パァンッ‼



 派手な音と煙と爆炎が吹き上がるが、これは現代兵器と異なり黒色火薬を用いているが故の『無駄の多さ』が原因である。

 もっとも、そのお陰で威力は現代の銃より高そうに『見える』のだが。

 実際のところ、有効射程内で命中した鉛の円形弾は肉を抉るように体に食い込むため、場合によっては現代銃の弾丸より摘出が難しいという特徴もあるという。

 日本では明治時代に入ってから無色火薬が用いられるようになっていたが、代表的な例は日露戦争における大日本帝国海軍である。

 この頃には信頼性が高く高い威力を発揮するピクリン酸を主体とした下瀬火薬が開発されており、黒色火薬による問題の多かったバルチック艦隊より上手であった。

 その代わり、鋭敏な信管と火薬のせいで腔発も多かったのは難点だったが。

 それはさておき。

 火縄銃から発射された弾丸は、『バキッ!』という破裂音と共に標的の板を打ち砕いた。

 この板は各国にわかりやすく表現するために、鉄砲を採用していない各国が使用している矢避けの板と同じ材質、厚みのものを使用している。

「「「おぉ~……」」」

 微妙な距離でありながら1発で命中させたことに各国武官が驚く中で、次の兵士が九九式小銃を手に前へ出る。

「皆さんに今ご覧いただいたように、火縄銃は50mから100m以内の距離であれば『それなり』の命中率と、甲冑も木製の矢避けの盾も貫く威力を誇ります。しかし、これをご覧いただきましょう」

 九九式小銃を見たボンパコ共和国の武官が呟く。

「あの銃……火縄銃やマスケット銃より遥かに先進的な形状をしているように見えるな」

「そうなのですか?」

「私は列強国であるヴェルモント皇国の銃……マスケット銃が進化したという『スナイドル銃』を見たことがありますが……それに近いです」

 スナイドル銃は、幕末頃に日本にも入ってきた先込め式の銃、『シュナイダー銃』に近い性能の、魔導着火式銃である。

 それなりの大国とはいえ、文明圏に属していない大日本皇国が、列強に近い銃を持っているかもしれない。

 それだけでも、各国関係者の期待は否が応にも高まった。

 そんな兵士が狙う目標は、なんと300m先の目標だ。

「そんな!」

「あんな距離を狙うなんて……」

「もはや的が豆粒にしか見えませんよ……」

「まさか……当たるというのか?」

 そんな武官たちの期待の視線を浴びながら、訓練通りに狙いを定めて兵士が引き金を引いた。



――バンッ……!



 目標の板は……『バキッ』と軽い音を立てて割れると、上半分が吹き飛んだ。

「「「おお~‼」」」

 この時、今の射撃の真の恐ろしさに気づいたのは、オルファスター王国の属国として銃に触れる機会のあったボンパコ共和国とケナシュルム王国の武官だけであった。

「な、なんということだっ‼」

「あの距離で……あの威力を維持している、だとぉっ!?」

 他の国の武官たちは何がそんなにすごいのかがよくわからないのか、2人の反応を見てポカンとしている。

「あ、あの……どうされたのですか?」

「どうされたもこうされたもない‼あの銃は、『火縄銃の8倍以上の距離』で、『火縄銃以上の威力と命中精度を見せた』のだぞ‼」

「は、はぁ……?」

「しかも、列強であるヴェルモント皇国のスナイドル銃の有効射程は確か……よくて300mくらいだったはず!それと同じ距離で命中弾を出し、しかも威力が落ちないということは……あの銃は、弱く見積もっても下位列強国の銃より強いということになる‼」

 この2人の武官の推定数値通りで、大日本皇国が配備している(正確には大蔵艦隊の陸軍部隊が持っていた物を、生産ラインを設立して生産を始めている)九九式小銃の方が遥かに高性能なのだ。

「で、ですが……爆炎も煙も少なくて、威力はそんなに高そうに見えませんでしたけど……」

「バカモノ!貴殿らは『銃』についてあまり研究していないからそのような呑気なことが言えるのだ‼いいか?爆発によって生じる『力』は、音や炎、衝撃波と言った様々な形で逃げようとするが、それをなるべく逃がさないようにすれば威力も上がる!……しかし、それだけではあの異様な『命中率』の説明がつかないっ‼一体どうすればあのようなことができるというのだ‼」

 その権幕の凄まじさに他の国の武官や技官たちはオロオロするしかない。

 彼らからすれば、雷管やアンビルなどの機構を備えたドングリ型の鉛弾と、ライフリングのある銃はまだまだ先の考え方であった。

 そんな彼らの様子を知ってか知らずか、日本の兵士は次の実演を見せようとした。

「続いてはこちらの、『九九式軽機関銃』です」

 次に掲げられたのは、先ほどの『九九式小銃』と同じくらいの長さの、しかしより無機的な雰囲気を漂わせる銃であった。

「こちらは機関銃という小銃の発展型なのですが……機関銃をご存じの方はいらっしゃいますか?」

 その場にいた全員が首を横に振った。

 だが、そんな中でなにか思い当たる節があったのか、ボンパコ共和国の武官が手を上げた。

「機関銃というのはよくわからないが……『回転式魔導砲』という連発兵器ならば知っております」

「回転式魔導砲ですか……どういった兵器ですか?」

「はい。列強国であるヴェルモント皇国に配備されている魔導兵器なのですが、6つの銃身をクルクルと回転させることによって、1分間に200発もの魔導弾をばらまくことができるという、皇国の先進兵器です」

 それを聞いた陸軍兵は『あぁ、なるほど』と納得した。

「それはいわゆる、『ガトリングガン』と呼ばれる兵器の魔導技術版ですね。その兵器はもしや、『据え付け型』ではありませんか?」

「そ、その通りです‼」

「であれば、こちらの軽機関銃の方が上ですよ。なにせこれは、『人の手で持ち運びできる』機関銃ですので」

「なっ!?」

 連射できる飛び道具を知識として知るボンパコ共和国とケナシュルム王国の概念からすれば、船に据え付けた副砲であったり、地面に置いて大軍を蹴散らしたりするための決戦兵器のようなモノだった。

 日本では北上しようとした新政府軍を苦しめた、『長岡藩が購入した2門のガトリングガン』の話が有名だろう。

 その後の日露戦争、特に旅順要塞攻略ではイギリスの開発したマキシム機関銃による機関銃陣地が猛威を振るい、乃木希典率いる日本陸軍が多大なる被害を出している。

 機関銃陣地と塹壕による戦場が中心となっていた第一次世界大戦頃でさえ、どちらかと言えば陸上の機関銃は地面に置いて使用するモノであった。

 もちろん、その頃登場した新兵器である戦車や飛行機に搭載されたりすることで戦術的な汎用性は大きく高まっていたが、それでも『人が持ち運べる大きさ』と言うにはまだ難しかった(ドイツが開発した短機関銃など、ないわけではなかったが)。

 しかし、それは第二次世界大戦頃になって変化する。

 旧日本軍でもそれは研究されていたため、開発された機関銃の1つが『九九式軽機関銃』や『一〇〇年式短機関銃』であった。

 機関銃を人が持ち運びできるようになったことで汎用性はさらに高まり、様々な戦いの中でその力を示した。

 第二次世界大戦後は自動小銃が『人が持ち運びしながら運用できる軽機関銃』の地位を持って行ったような形になるが、スイスの開発した分隊支援火器MINIMIなどは現代に残る軽機関銃として有名だ。

「で、では……この機関銃は歩いたり走ったりしながら撃てる、ということなのですか?」

「えぇ。では、御覧に入れましょう!」

 九九式軽機関銃を持った陸軍兵の前には、無数の的があった。

「突撃ィ‼」

 黒部少尉の命と共に走り出した陸軍兵士は、そのまま引き金を引いた。



――ダダダダダダダッ‼ダダダダダダダッ‼



 目の前にあった的の大半は粉々に打ち砕かれてバラバラと地面に落ちる。

「な、なんという……」

 各国関係者たちは、その圧倒的な威力を思い知る。

 自分たちの国の兵士たちがあの機関銃を持った兵に立ち向かおうとすれば、文字通りの屍の山を築き上げることになるだろう。

 さらに機関銃のみならず先ほどの九九式小銃などが支援すれば、その能力はさらに跳ね上がるに違いない。

 故に彼らは気付いた。自分たちがそれまで思い描いていた戦術や思想とはなにもかもが違い過ぎて、『話にならない』と。

「あれを……売ってもらえるのか?」

「もしそうなら……戦術の変更も含めて教導してもらう必要がありそうだな」

「しかし、あの威力と連射力は、既存の火縄銃の銃兵十数人分に匹敵する。1人の人間がそうなるのであれば、これは大きな力だ」

「でも……あれはかなり値が張りそうだぞ……」

「確かにな……これほど高性能で、複雑な工作工程を経るような兵器であれば……値段も格段に上がるに違いない」

 ざわついている各国武官や技官を横目に見ながら、黒部少尉はさらに見せつけることにした。

「まだまだありますよ。今度はこちらへ来ていただきます」

 今度案内されたのは、訓練場からそれほど離れていない海岸であった。

 船の姿はなく、軍のための訓練用の場所であることがうかがえる。

「今度はこちらの兵器の実演と参ります」

 各国関係者の目の前には、彼らが知っているモノよりもスラリとした砲身の大砲が鎮座していた。

 ちなみに今回、扱いが難しいだろうということと、運用できるだけの地盤があるかどうか不明なこともあって戦車についてはパフォーマンスを行わない予定だ。

「おぉ~!」

「これは魔導砲ですな‼」

「しかし……我らの知る魔導砲よりはるかに長砲身だ。それに、明らかに軽そうだぞ?」

「それに、台座に据え付けていないな。ヴェルモント皇国には車輪で移動可能な魔導砲が存在するとは聞いていたが……似たようなものか?」

 ニヤリと笑った黒部少尉は、ここぞとばかりに説明を始める。

「これは我が国が使用する大砲の1つで『九〇式野砲』と申します。感じておられる疑問通り、馬で牽引することも可能な大砲です。ところで……皆様はヴェルモント皇国の大砲の射程は何kmかご存知ですか?」

 ざわつく武官たちの中から、またもケナシュルム王国の武官が手を上げた。

 やはり、かつて大砲を持っている国の属国だったというだけあってその辺りの事情にはそれなりに詳しいようだ。

「オルファスター王国の魔導砲の射程が2kmであったことを考えると……少なく見積もっても3kmはあるかと」

 この推測は大当たりであった。

 ヴェルモント皇国の採用しているアルムスロト・カノンと呼ばれる魔導砲の射程は3kmあり、しかも既存の装甲戦列艦の装甲を撃ち抜ける船舶用の大砲として、皇国内部では画期的な発明とされていた。

「そうですね。先ほどお聞きした回転魔導砲……ガトリングガンのことを考えますと、それくらいの射程はあってもおかしくはないでしょう。では、この大砲はどうか……とくとご覧下さい」

 武官と技官たちが注目する中、配置についていた砲兵たちが素早く砲弾を装填していく。

「動きが早い」

「それだけではない。どの兵も自分がなにをするべきかを理解している。だからこそ、『先を読んで』動くことができている。あれは相当に訓練を積んでいて、練度が高い証拠だ」

「あとは大砲の威力と射程か……」

 各国武官たちが口々に呟く中、砲兵たちが発射準備を終える。

「発射用意完了‼」

「撃てーっ‼」



――ドォンッ‼



 38口径75mmの砲身から撃ち出された砲弾は、初速毎秒683mの速度で飛翔する。

 さすがに平成や令和の時代に作られた榴弾砲などと比較してしまえば、まだ無駄を削り切れていない部分が見られる。

だが、それでもこの世界基準では非常に優秀な大砲である。

 特にこの『九〇式野砲』は富士の演習場で3km近く離れた畳一枚分の的に砲弾を命中させたこともあるという伝説を持っており、その精度の高い砲撃を見舞えるその能力から、『三式中戦車』の主砲にも抜擢されている、と言えばその能力の高さがうかがえる。

 そして、黒部の期待通りに各国武官たちの想定よりはるか彼方で水飛沫を上げたのだった。

「なっ、なんという射程の長さだ‼」

「5km……いや、10km近くは飛んだぞ‼」

「く、黒部少尉!あの九〇式野砲の最大射程はどれくらいあるのかね!?」

「九〇式野砲の最大射程は10kmを超えます。一応記載されている数値上は10.389mになっていますね」

「「「な……」」」

 もはやヴェルモント皇国のアルムスロト・カノンなど目ではない。

 この長大な射程と、上がった水飛沫から想定される威力の高さは、上位列強レベルと言っても過言ではなかった。

「なんということだ‼これはもはや、今の我々の常識の埒外に存在するとんでもない兵器だ‼」

「これほどの能力……さぞや値段も高いのではないのだろうか?」

「先ほどの機関銃なども、高い能力故に値が張りそうだな……」

 技官たちがチラリと黒部の方を窺うと、黒部はニコリと微笑んだ。

「皆様、どうやらお値段を気にされているようですが……知りたいですか?」

「それはもちろん!」

「あまりにも高額なようであれば、採用を見送らなければならないかもしれませんからな……」

「まぁ、そうでしょうね。では……お値段は我が国の現在の貨幣価値に照らし合わせて『このくらい』となります」

 各国関係者は提示された値段を見て唸る。

 弱小国家と言っても、その経済規模にはかなり差があるため、歩兵の携行兵器であるこれらは『あ、意外となんとかなる』という国もあれば、『これは高い‼』という国もあるのだ。

 特に、人口20万人しかいないというトンボロ共和国などは厳しいだろう。

 そして、そんな国々に対してさらに救済措置を提示するのも今回の黒部少尉の仕事であった。

「確かに。このお値段では『数』を揃えられないという国も多いでしょう。そこで皆さん。今から1ヵ月後に東洋国家間会議が開催されますよね?」

 東洋国家間会議とは、第3大陸の外洋に存在する文明圏外の国が大日本皇国に集結して行う国家間会議である。

 これまでの主な議題は列強国の動きと各国の近況報告であった。

 しかし、今年は大日本皇国がオルファスター王国の撃破に成功しているため、会議そのものが大きく変わると考えられている。

 某召喚小説の文明圏外国家の行う会議と異なるのは、一部とはいえ文明圏に属する国も参加していることである。

 文明国の中には、それなりの国力を誇る日本などを警戒する国もあるため、それらを探る意味でも会議に参加する国があるのだ。

「えぇ。我々もオルファスター王国を打ち破った日本の当事者から説明が受けられるということで楽しみにしております」

「その席で、我らが大日本皇国第0艦隊司令官にして軍事教導顧問の大蔵旭日司令官が提案し、既に天皇陛下がお認め下さったとある草案があります」

「とある草案?」

「それは……こちらになります」

 それは、旭日がこの世界で日本が生き残るためにと考えた大東亜共栄圏ならぬ、『大海洋共栄圏』の簡単な草案であった。

 紙にはこのようなことが掛かれている。



○この共栄圏に加盟した国は経済・軍事を問わず互いに協力し合い、国々の発展を促すことに尽力するべし。

○大日本皇国を始めとする加盟諸国間で取引される物品(食料品・兵器を問わず)の関税を撤廃する。

○加盟国に緊急事態(この場合は軍事的・非軍事的問わず)が発生した場合、他の加盟国はその国に対する救済措置を講じること。

○各国の行き来において、入国審査などは病気の検査や持ち物の検査など、必要なものに限定すること



 などだが、兵器を売る立場である日本から独自に発せられたこのような条文もある。



○日本から兵器(陸海空問わず)を購入する場合、『共栄圏加盟割引』を、さらにまとめて一定数以上を購入することによる『まとめ買い割引』を適用するものである。

○加盟国が日本から兵器を購入した場合、教官の派遣を優先するものである。

○加盟国が望む場合、大日本皇国の負担によって組み立てのための設備を建設し、兵器のノックダウン生産を許可するものである。

○加盟国には、大蔵艦隊より伝授されたインフラ整備を優先して行うものとする



 大日本皇国の軍事のみならず各種技術がこの1年ちょっとで大幅に向上していることは各国ともに疑いようがなかったため、武官や技官の多くはかなり乗り気であった。

 しかも、それだけではない。

 これによって日本の兵器を多く購入するようになれば、量産効果によってさらに値段も下がる。

 日本にとってもそれらの兵器を配備しやすくなるメリットがあるのだ。

 また、各国にとってもノックダウン生産によってまずは組み立ての技術を手に入れることができる。

 さすがに大きな設備を必要とする戦車や装甲車は難しいかもしれないが、小銃や大砲などはある程度可能なはずだ。

 軍艦に関してはドックを設置する必要があるため、港湾の開発から行わなければならないという難点はあるものの、一度設置してしまえば大型船舶……具体的には大型の客船なども入れるようになるため、観光や商売による経済活動が促進されることにもつながる。

 また、余裕のある国には飛行場も設置する予定だ。

 旭日が現在考えているところとしては、旧オルファスター王国の属国であるボンパコ共和国とケナシュルム王国の2か国のどちらかがいいのではないかというところだ。

 そしてこれらの提案に乗ってくれれば、日本は兵器輸出で大儲けできるうえに、各国の武力強化と弾薬の共通化による補給の利便化を可能とする。

 せめて九九式小銃と九〇式野砲を買ってくれるだけでも、今までの文明圏外国家とは比較にならない力が得られるはずなので、その点は考慮して欲しいものだった。

 舞台は更に海へ移り、輸出軍艦の説明をすることになる。

さて、大東亜共栄圏と異なるところは天皇崇拝を押し付けないところなどですかね。

政治体制は完全に各国の自由にする代わり、問題が起こればすぐに輸出差し止めやそれら技術の撤収が図られるようになります。

まぁ、私もこういう条文に詳しいわけではないので上手く書けているとは言い難いのですが……


次回は11月23日に投稿しようと思います。

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