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始まる航海

すみません。本当は土曜日に投稿するつもりだったのですが、ちょっと土曜日に朝から用事が入ることになりましたので、少し先駆けて投稿させていただきます。

今回はほぼキャラクター紹介ですね。

あと、キャラクターの声は私が勝手にイメージしたものです。

『合わない』と思ったらごめんなさい。

 旭日が目を開けた時、彼の目の前には大海原が広がっていた。紛れもなく、海の上である。

 感動しつつ旭日が振り返ると、まるで城郭かと思うほどに巨大な建築物が見えた。

 いや、巨大なのはもちろんなのだが、とにかく見た目のバランスが悪い。まるで、積み木細工を『あぁでもない、こうでもない』と載せていったような感じの構造物なのだ。

 『それ』を見て、思わず旭日は呟く。

「うわぁ……間近で見ると、なんらかのミスででき損なった天守閣みたいだな」

「はい。私もそうだろうと思います」

 突然声が響いた。雰囲気的には、MG422丁を使って戦う猟犬お姉ちゃんの声に似ているような気がするなどと変なことを考えてしまった。

 旭日がハッと横を見ると、艶やかな黒いポニーテールの、背の高い凛々しい顔立ちの美人が立っていた。

 腰には海軍式の軍刀と、浜田自動拳銃らしき銃が下がっている。

「君は……もしかして、扶桑?」

「はい。扶桑型戦艦1番艦、扶桑が化身、扶桑です」

 よく見れば着込んでいるのは旧帝国海軍の軍服なので、はち切れんばかりに押し上げる胸元が目立って仕方ない。

 彼女いない歴=年齢の旭日からすると目に毒なので、目を一瞬逸らしそうになるが、それも失礼だろうと思いきちんと扶桑の目を見た。

 すると、そんな旭日の心の内を察したのか扶桑もニコリと笑う。

「フフッ。司令官は奥手で初心なお方とは聞いておりましたが、どうやら本当のようですね」

「わ、悪い……その、女性に慣れてなくてな……あと、もう一つ。お前の艦橋をできそこないなんて言っちゃってゴメン」

 旭日が頭を下げると、『頭を上げてください』と穏やかな扶桑の声が聞こえた。

 恐る恐る頭を上げると、穏やかな笑みを浮かべたままの扶桑がそこにいる。どうやら、本当に怒っていないようだ。

「確かに、私の艦橋は『違法建築物ばり』などと言われるほどにバランスが悪い存在ですが、これは致し方のないことです。改装をするにつれ、必要なものが増えていったにもかかわらず、資源や時間のない中でできることをしようとした結果なのですから」

「そ、そういうもんか?」

「はい。それに、私から得た教訓を参考にしたことで、後に続く後輩たちの建造や、金剛先輩たちの改装がうまくいったのですから、私はそれでいいと思います」

 『ほほぉ』と旭日は思わず心の中で感嘆していた。どうやら扶桑は国産超弩級戦艦たちの先達として、とても広い心を持った『お姉さん』らしい。

「やまとなでしこ、っていうのは扶桑みたいな人のことを言うのかもな」

「御冗談を。私はまだまだ未熟に過ぎません」

 謙遜する扶桑の顔は、心からの言葉を発しているように見えた。

 その凛々しさと美しさに思わず見惚れていた旭日だったが、目の前に立ってくれている以上、ボーっとしているわけにはいかない。

「そ、それより……今はどんな状態なの?」

「はい。大蔵司令官がお目覚めになられたら、太陽神様よりの『最後の指針』という言伝がございます」

「最後の指針?」

 つまり、そこからは思うがままに、好きに生きてほしいということである。

「太陽神様曰く、『北西へ進みなさい。さすればあなた方に帰る場所を与えてくれる者と出会えるだろう』と」

「正に神託だな……」

 太陽神様の導きはそこまで、と言うことだ。あとは旭日が自分で判断し、自分で行動しなければならないのだ。

 その『帰る場所』の世話になるか、海を放浪するかは旭日次第である。

「そっかぁ……よし、分かった」

 旭日は頬を軽くパン、と叩くと、キラキラした眼差しで扶桑に声をかけた。

「各艦の艦長を集めてほしい。扶桑の艦内で会議はできるか?」

「そうですね……会議をされるのであれば、私よりも『香取型軽巡洋艦』の方がよろしいかと。あの船は元々練習艦の想定で建造された存在ですので、商船構造故に艦内に余裕がありますから」

「よぅし、決まりだ!扶桑、悪いけど各艦の艦長に通達だ。『総員、〈香取〉会議室に集合』と」

「はっ、かしこまりました」

 敬礼する姿も美しく、『立てば芍薬座れば牡丹』といったものか、などと考えてしまうのだった。

 こうして、司令官となった旭日の呼びかけに応じて、軽巡洋艦『香取』に集合した面々の顔を見た。

 背の高い20代くらいの女性もいれば、小学生くらいの女の子もいる。一番多いのは、中学生から高校生くらいの女の子だろう。

 先ほど扶桑から移動する前に鏡を見た時、自分が10代後半……具体的には18歳くらいの風貌になっていることに気付いた旭日は、『神様が特典ついでに少し若返らせてくれたのかな?』と考えていた。

「なんと言うか……女の子ばかりが並んでいると思うと壮観だな」

 若干やせぎすの、眼の下にクマを作ったスレンダーな白衣の女の子が茶化すように声をかける。

「どの娘から口説こうか悩みますかぁ?」

「そうそう。どの娘から口説こうか……違うわっ‼相手によって接し方は変えなきゃならんだろうがっ‼」

 白衣の女の子はケラケラと笑った。旭日が乗りツッコみをしたのがよかったらしい。

 ちょっと人を小馬鹿にしたような感じだが、不思議と不快感はない。

「(っていうか、なんだか干し芋食べるとか、おっぱい好きそうな声してるな……コイツ)」

「いやぁ、失礼しました大蔵司令。あたしは『夕張型軽巡洋艦』の夕張です。以後お見知りおきを」

 3000t未満の船体に5500t軽巡洋艦シリーズと同水準の武装を詰め込んだ、小柄で細身な軽巡洋艦だったというだけのことはあり、かなりやせぎすな割に背が高い。

 つまりは、バランスが悪そうなのだ。

「おぉ……ちゃんと寝てんのか?」

「ひゃっひゃっひゃ……第一声がそれっすかぁ。ご安心ください。こう見えてキチンとすることしてますからぁ」

「そ、そうか……じゃ、じゃあ、夕張が今自己紹介してくれたから、夕張から時計回りに紹介していってくれるか?えぇと……迷彩服の子から」

 まずは、豊満な高校生、と言った風情の女の子が姿勢を正した。

「私は『雲龍型航空母艦』一番艦の雲龍と申します。隣が順に……」

「天城です……」

「か、葛城、です」

 ちょっと暗そうな感じの子が天城、眼鏡をかけた少し気の弱い子が葛城であった。それを見た旭日は、なんとなくだが彼女たちの心中を察した。

「自分に自信がない?激戦の中であまり戦況に貢献できなかったから」

 一瞬で指摘された3人は驚いたように旭日を見た。

「やっぱりね。雲龍以外の2艦は、2隻とも建造された後は港で待機状態に入ったまま終戦を迎えたからさ。当の雲龍だって、出撃の機会があったとはいえもう載せられる航空機がなくて特攻兵器の『桜花』を載せて出撃して、それでも活躍できずに撃沈されちゃったからね」

「……流石は司令官。私たちのこともよくご存じですね」

「あぁ。軍艦マニアは伊達じゃないつもりだ」

 旭日は『でもな』と続ける。

「気にするな。ここにいる面々は、皆なにかしらの問題や理由があって選ばれたんだ。第二の人生をもらったからには、皆で頑張りたいと思う。それじゃ……ダメかな?」

 その場にいた面々は、いきなりの言葉にポカンとしていた。

 すると、天城の隣に立っていた扶桑に似た顔立ちの、ちょっと天然パーマ気味の女性が『なっはっはっ‼』と高らかに笑った。

 なぜだか、『グビ姉』と大酒飲みで有名な声優さんの声に似ている気がした。

 ちなみに、服装は扶桑と全く同じ軍服だ。

「いいねぇ司令官‼そうだよなぁ!せっかく神様のお計らいで第二の人生を生きられて、しかも『普通の人間』みたいにこうして皆とお喋りができるってんだ!それだけでもいいってもんよぉ‼なぁ、そうだろう皆‼」

 その言葉に、その場の面々は皆少しずつ笑顔になっていた。

 ひとしきり大声を出してから、その女性が『おっと』と思い出したように旭日の方を見た。

「悪い司令官、名乗りが遅れたな。アタシは扶桑型戦艦2番艦、『山城』だ。ヨロシク頼むぜっ!」

「やっぱりな。扶桑によく似た雰囲気だと思ったんだ。山城、それに雲龍、天城、葛城、こちらこそよろしく頼むぞ。せっかくなら、この世界で大暴れしてやろうじゃないか」

「は、はい!」

「が、頑張ります……」

「あ、ありがとう、ございます……」

 ちなみに雲龍たち3人は、『天使』と言われそうな声優さんの声に似ている気がすると旭日は感じていた。

 次は、扶桑の隣に立っているハイカラメイドさん、と言った風の高校生くらい……と言うには胸部装甲が豊かな気がする女の子が居住まいを正した。

「ではお次は私たちが。私は『飛鷹型航空母艦』1番艦、飛鷹と申します。隣に立っているのが、妹の隼鷹です」

「よろしくお願いします、司令官」

 元々は高速貨客船『出雲丸』と『橿原丸』となる予定だった船を改装し、25ノットという商船改造空母としては破格の速力を出せた上に、搭載数も50機を超えた(日本の正規空母で言えば蒼龍型・飛龍型に近い)という優秀な改造空母であった。

 こちらの声は……揚陸艦の古い方にいた気がした。

「あぁ。よろしく」

「では、せっかくなので問題です。私たちはなぜお手伝いさん(メイド)の格好をしているのでしょうか?」

 旭日は間髪入れずに『簡単さ』と答えた。

「飛鷹は日本郵船の貨物船兼客船だった『出雲丸』を、隼鷹が同じく日本郵船の『橿原丸』を徴用して改装した空母だから、じゃないのか?人をもてなす、人のために働く船が大元ってことでメイドさんの格好をしてるんだと思ったけど、あってる?」

 2人ともクスリと笑うと恭し気に頭を下げた。

「正解でございます。ちなみに、化身となりましたるこの身では料理や裁縫の類も可能になりましたので、なんなりとお申し付けくださいませ」

「おぉ、落ち着いたら是非食べてみたいな。頼むぞ。次は?」

 次は、会社のOLさんと言った風情の、20代に見える女性だった。見れば、とても真面目そうな顔をしている。

「私は『大鳳型航空母艦』の大鳳と申します。大蔵司令官の旗下に入りましたること、大変恐悦至極に存じます。以後は司令官のため、粉骨砕身働く所存であります」

 真面目そう、ではなかった。生真面目、と言ってもいいほどに堅い雰囲気の人物である。

 声的には……『本当に、扶桑の魔女って……』と言いそうな感じの狼なお姉さんや、ティーガーⅠを乗りこなすお姉ちゃんの声であった。

「(こりゃあんまり冗談も通じそうにないな……)あぁ、頑張ってくれ。次は?」

 今度は、中学生くらいの、なぜか巫女服を着こんだ女の子だった。

「はい。私は『香取型軽巡洋艦』1番艦、香取と申します。こちらが妹の……」

「鹿島と申します」

「私は香椎でございます」

 高校生と中学生のような風貌の割には、大人びた口調である。だが、それも当然だろう。なぜなら彼女たちは……

「流石は練習用巡洋艦だな。艦内スペースも心持ちも余裕たっぷりだ」

「お褒めに預かり光栄です。前線に立つことはあまり得意とは言えない身ではございますが」

「我ら一同、司令官の御為に」

「身命を賭して働きましょう」

 大鳳と飛鷹型の2人を足して2で割ったような性格のようだ。真面目そうだが、冗談が通じないほど心にゆとりがないわけではないらしい。

 巫女服を着ているのは恐らく名前の由来が神社にあるからだろう。

 声の感じは……ソビエト好きで軍艦娘も戦車乗りも演じた人に似ている気がする。

「色々支えてもらうことになるだろうな。頼むよ。じゃぁ、次が……」

「私は、『阿賀野型軽巡洋艦』1番艦、阿賀野です!よろしくお願いしますっ‼」

「同じく、2番艦の能代!」

「3番艦の矢矧です」

「4番艦の酒匂ですっ」

「「我ら、阿賀野型軽巡洋艦‼高速機動も砲戦も、根性で乗り切るっ‼」」

「お前らはアヒ○さんチームかっ‼だがよろしく頼む‼」

 なぜだろう。豊満な子ばかりと体形は似ていないのに、アニメのあの子たちを思い出した旭日だった。

 思わずツッコみを入れてしまったが、この熱さは恐らくこの艦隊のムードメーカーになってくれるだろう。

 声の感じは……ゲームだと川内型や長門型の声の人に似ている。

 しかし、元気な姉2人と比較すると静かな妹2人に旭日は目をやった。

「矢矧は、なにをしたい?」

 呼ばれた矢矧は気の強そうな目で旭日を見た。

「あの時、私は守れなかった……今度こそ、大切なものを……守れるようになりたいです」

「やっぱな。坊ノ岬みたいな特攻作戦にならないよう、俺は頑張るよ」

 その一言に救われたらしい。矢矧もいい笑顔を見せた。

「ありがとうございます、司令」

「お前はどうだ?酒匂」

 呼ばれた酒匂はというと、先ほどの一瞬見せた元気な表情とは一転して『どんより』というべき雰囲気を放っており、気怠そうであった。

「……アタシは別に、出られればどうでもいいです」

「不満だったか?戦いに出られなかったのが」

「……はい」

 阿賀野型軽巡洋艦・酒匂は大戦末期の燃料不足もあって、一度も実戦を経験しないまま終戦を迎えた。だが……

「お前は戦うことと同じくらい大事なことをした。色々な人たちを復員するのに、お前がどれほど役に立ったか……でも、今度はちゃんと戦わせてやるから、くさくさするなよ、な?」

「……ホントですか?」

「善処する」

「……ありがとうございます」

 そして隣を見ると、明らかに気乗りしない風の女子高生風の2人が立っていた。

 夕張とはまた違う感じだが、やはり痩せぎすな印象の白い髪の女の子とグレーの髪の毛の女の子である。

「えぇ~……この騒がしい人たちの後に自己紹介とか……マジ引くわー」

 グレーの子が少し窘めるように白髪の子に呼び掛けた。

「お姉、自己紹介くらいは……」

「うぅ、わかったよぉ……『重雷装巡洋艦』の北上です……以上」

「私は……姉妹艦の大井です。い、以上……」

 アプリゲームのキャラとはずいぶんと雲泥の差があるキャラクターのようだが、それも仕方あるまい。

 誰だって好き好んで誘爆しやすい魚雷ばかりや、人間の命を粗末にする特攻兵器なんて搭載したくないだろう。

「北上、大井」

 俺は2人の目を強く見つめる。2人はちょっと怯んだようにビクリと肩を震わせた。

「今までのこと、全部忘れろとは言わない。むしろ言えない。でもな、それら全てをひっくるめたうえで、俺に力を貸してほしいんだ。陳腐な言い方になるけどさ……」

 旭日の顔は、少し赤くなっていた。

「君にできるなにかを、ここで見つけてほしいんだ」

 その言葉を受けた2人は、沸騰したかのように顔を真っ赤にした。

「こ、こんな魚雷バカでよければ……」

「頑張ります……」

 一気に可愛らしくなった。なお、声の感じは猟犬お姉ちゃんの戦友でいつもだらしない第三帝国のエースウィッチに似ている気がする。

「うん。じゃあ、次は?」

 見ると、背は高めだがちょっと寸胴な、ツナギを着込んだ女の子だった。

「どうも、『明石』型工作艦の明石です」

「やっぱり、艦の修理が仕事か?」

「それもですけど、実は私、落ち着ける場所ができたら輸送艦の資材とか使って、工廠を立てたいんです。やっぱり技術って、進歩させていかないといけないじゃないですか?」

 ただ直すだけ……現状維持ではダメだ、と明石ははっきり断言したのだ。

 その存在だけで帝国海軍工廠の4割に近い働きをしたという明石ならではの発言だろう。

「じゃあ、新兵器を考える時は君を頼りにしていいのかな?」

「はい。夕張と一緒に頑張ります」

 夕張を見ると、ニヤリと笑ってサムズアップしてきた。

 夕張は元々平賀譲設計技師によって設計された、試験的な意味合いを持つ軽巡洋艦だ。

 そういうポジションだからか、『実験、試験好き』みたいなイメージがゲームでもある。

「(実際は軽巡相当の船体に重装備を詰め込んだせいでほとんど発展の余地がないという軍艦だったんだけど……だからこそ、かな)わかった。拠点を見つけて、補給ができるようになったら兵器開発と研究を頼むよ」

「了解」

 どうでもいいが、声の感じはスピード狂でグラマラスなアメリカウィッチに似ている気が……夕張、おっぱい揉みしだかないだろうな。

 次は、『若女将』という単語が当てはまりそうな20代くらいの女性だった。この人も恐らく、と旭日は推測する。

「私は『間宮』型給糧艦の間宮と申します」

「やっぱりな。皆の食事管理は任せていいか?」

 ソシャゲのイメージだと料理上手のお姉ちゃん、だが、どうやらそれに近いイメージで問題ないようだ。

ゲームの間宮よりさらに背が高くて、若女将もしくは『お母さん』という雰囲気だが、声の感じは……揚陸艦や陸軍の潜水艦、それにカンテレを持ったフィンランド系戦車隊隊長だろうか?と旭日は感じていた。

「はい。お料理は飛鷹ちゃん共々お任せください」

 その隣を見ると、スレンダーな中学生くらいの女の子だ。

「私は『足摺』型給糧艦1番艦の足摺です」

「同じく、塩屋と申します」

「ガソリンや部品の供給でしたら、我々の仕事になります」

「よろしくお願いします」

 この2人はそれほど性格に癖がないようだった。旭日は今までがアクのある性格ばっかりだったからか、なんとなくホッとしてしまう。

 声の感じはリスを使い魔にした魔法少女っぽい気がする。

 そして、その隣に立っているのが一番異様な恰好をしていた。なにせ、全体的にムチムチした体を軍服に納めているのだ。

「私は『伊400』型潜水艦、『伊400』です」

「同じく、『伊401』」

「『伊402』でございます」

 潜水艦という艦種だからか、結構寸胴だ。しかも、排水量の多い『航空機搭載型潜水艦』……いや、『潜水空母』であるせいか、ぽっちゃり系の豊満女子だ。

 でも、『女性はむっちりとしている方が健康的に見える』と思っている旭日としては、『これはこれでアリ』だと思うのだった。

「うぅん……呼び方を考えていいか?番号じゃいくらなんでも……」

「司令官がお望みとあれば」

 少し考えていたが、やがて思いついたらしく、顔を上げた。

「伊400がヨー、伊401がヨーイ、伊402がヨーツ、でどうかな?単純と言うか、安直だけど……」

 というか、ゲーム的なネーミングだ。

「いえ。構いません」

「忍ぶ以上、符号の方が便利ですから」

「以後はそのように」

 どうやらそれでいいと思ってくれたらしい。結構ドライな一面があるようだ。

 声の感じは……むしろゲームの夕張っぽいな。

 次は、扶桑たち同様に軍服を着こんだ女性だ。年齢は扶桑たちより若干年上に見える。

「『津軽型敷設艦』の津軽と申します。シーレーン防衛や機雷の敷設、必要とあれば軽輸送も請け負います」

 必要最低限だから喋った。そんな感じのする喋り方だった。恐らく、元々前線にあまり出るタイプの軍艦でないからこういう喋り方なのだろう。

 だが、その真面目そうな雰囲気だけでも分かる。ツンデレの水使い金髪巨乳や、玉座から引き抜いた大剣を振り回していそうな、凛々しい戦乙女のような声だった。

「あぁ、よろしく頼む」

 旭日が全てわかったような顔でそういうと、津軽は少しだけ笑った。自分のことを理解してもらえたのが嬉しかったらしい。

 最後は、中高生にしか見えない女の子たちだった。

「私たちは朝潮型駆逐艦と」

「夕雲型駆逐艦です」

「「とても影の薄い存在ですが、よろしくお願いいたします」」

「……」

 どうやら、自分たちが他の駆逐艦に比べると影の薄い存在ということを痛いほど理解しているらしい。

「ま、まぁ、性能が劣っていたってわけじゃないんだから……」

 すると、挨拶した夕雲が頬を膨れさせながら怒った。

「でも……話題になるのは吹雪とか響とか雪風ばっかりじゃないですかー!」

「それは……そうかもしれないが……」

 響と雪風。どちらも消耗の激しかった駆逐艦で数少なく生き延びた存在ということもあって、話題性は強い。

 吹雪だって、特型駆逐艦として世界に激震を起こしたという意味ではかなり印象強い船だろう。

 それから比べてしまうと、『艦○れ』の提督諸氏でもなければあまり朝潮型や夕雲型という船は知らない、のかもしれない。

 そんなことはないはず、と軍艦マニアの旭日は思いたかったが、皆、それぞれに思うところがあるらしい。

 だが……

「でもな、だからってお前たちの存在価値がゼロだなんてことは言わせない。どうか、俺と一緒に頑張ってほしい」

 実際に、朝潮型も夕雲型も、『艦こ○』の影響もあってか、むしろその界隈では有名な存在である。

 最近では改二も多くアップデートされていることもあり、声帯の妖精さんも演技が非常にうまいので間違いなくファンは多いのだ。

 それは間違いない。

 旭日の言葉に顔を見合わせた30人は、少しだけ明るい顔を見せた。

「ありがとうございます」

「今度は目立てるように、頑張ります」

 朝潮型は北上たちと、夕雲型は塩屋たちと似た感じの声だと思った。

「あぁ、よろしくな。えぇと、隣の2人は……陸軍の制服?」

 大学生くらいの、真面目そうな女性2人だった。ついでに言うと、中々立派な胸部装甲をお持ちである。

「はい。帝国陸軍輸送船『あきつ丸』及び『熊野丸』と申します」

「おぉ、あきつ丸‼(ゲームでも登場していたが、まさか本当に加わるとはな……)」

 だが、ふと思い出す。

「あれ?摩耶山丸やにぎつ丸は?」

「簡単に申し上げれば、『我々が代表』ということです」

「え?どゆこと?」

 彼女たち曰く、『ランダムに選定された』と言うことで、たまたま1番船と最終船に白羽の矢が立ったのだということだった。

「基本的には司令官殿の指示に従いますが、陸戦の際には私共が陣頭に立ち指揮をとります」

「おぉ、そんなことできるんだ?」

「はっ。お任せください」

 声の感じは……任侠映画好きのドイツ人やリスの魔法少女を鍛えた第三帝国の合法ロリ教官に近い。

「よし、じゃあ陸戦隊は任せるよ。ただ、必要とあれば俺も作戦立案に加わるし、前線にも出るからな」

「心得ました!」

 踵を鳴らして敬礼する姿は、正に軍人、と言った風である。

「えぇと、これで全員かな?」

 旭日の疑問には扶桑が代表して答えた。

「はい。輸送艦の艦長たちは……かつての戦没者たちに任せてあるので」

「あ、皆みたいに化身化していないんだ」

「残念ながら、真の意味で船としての『名持ち』ではありませんので」

 要するに、名持ちの船はそれだけのインパクトと化身化するだけの由来がある、と言うことらしい。

 海防艦などは元々番号で呼ばれるが、中には強烈な戦果を残した海防艦も存在するので、一概には当てはまらないかもしれないが、やはりそういうものなのだろう。

 そんなことを言うと貨物船や客船から転用された輸送艦・輸送船たちに呪われそうな気もするが……ひとまずそういうことであればそれでいいかと考えるしかない旭日であった。

 他にも特設輸送船も多数存在するが、それらも船長がちゃんといる、ということらしい。

「じゃあ、皆。改めて。俺がこの艦隊の司令官となった、大蔵旭日だ。女の子の相手は慣れてないところもあるし、皆を不愉快にさせるようなことも言うかもしれない。そんな未熟な俺だけど、どうかよろしく‼」

 その言葉に、その場にいた全員が頷いた。

「お任せください。大蔵司令官」

 全員を代表した扶桑の言葉に、旭日は『あ、じゃあ1つだけ』と付け加えた。

「名字と階級で呼ぶのは軍人としては大事なのかもしれないけど、親しみを込めて『旭日司令官』って呼んでほしいな。ダメ、かな?」

 女子たちはまたも一瞬ポカンとしてしまったが、すぐにクスクスと笑い出した。

「わかりました。旭日指令」

 扶桑の言葉に続くように山城が口を挟む。

「そもそもさぁ、『旭日』って名前が栄えある大日本帝国海軍の艦隊を率いる司令官にゃぴったりだぜ‼なぁ、皆‼」

 その他の面々もこれは納得したのか、『うんうん』と頷きあっていた。

「では司令、この艦隊の名前ですが、やはり『旭日艦隊』と……」

「待った待った!それなんか引っかかる!絶対引っかかるから!」

 なにとは言えない。だが引っかかると確信できる旭日だった。

「では、艦隊の名前は『大蔵艦隊』でよろしいでしょうか?」

 艦隊の名前はその方が無難だろう。扶桑の最後を率いた西村艦隊然り、レイテ湾突入の際の栗田艦隊然りである。

 どうしても敗戦国なのでいいイメージのない名前ばかりだが。

「そうだな。艦隊名は『大蔵艦隊』で頼むよ」

「はっ。では総員、以後当艦隊は『大蔵艦隊』と呼称します。いいですね?」

 またも全員が頷いた。

「よし、じゃあとりあえず、当面は対空・対水上電探をつけっ放しで行動すること。なにか反応があれば、すぐに報告してほしい」

 太陽神の言葉が正しければ、それほど時間が経たない内に何者かと接触できるのだろう。

 それを信じて、今は北西の方角へと進むしかない。

「ちなみに、そうなると俺の居室ってやっぱり香取とか鹿島の中なのか?」

 それは決めていなかったらしく、全員が顔を見合わせた。

 すると、大鳳が手を挙げた。

「大鳳、意見具申。議論していては時間もかかりますので、『旭日司令が居たい』と思う艦でよろしいのではないでしょうか?それならばこの場にいる面々は納得できると愚考します」

 他の面々も異存がないらしく、それでいいと頷いた。

「司令、どうされますか?」

「えぇ?……」

 その時、一瞬で旭日の脳裏に浮かんだのは扶桑の巨大な艦橋だった。

「……扶桑、君のところに居ていいか?」

 扶桑は驚いた顔をしている。自分が選ばれるとは、微塵も思っていなかったようだ。

「そ、それは大変光栄なのですが、移動も大変ですよ?」

「わかってる」

「艦橋に上るのも大変ですよ?」

「そうだろうな」

「それでも……よろしいのですか?」

 旭日は迷いなく『いい』と言い切った。

「俺が目覚めたのが扶桑だったからさ。俺の居場所は扶桑にするべきなんじゃないか、って思ったんだ。それじゃ……ダメかな?」

 扶桑は『ぶわっ』と顔を真っ赤にしていた。『そんな言い方は……ズルいです』とボソボソ呟いている。

「……わかりました。不肖戦艦扶桑、司令のお体をお預かりいたします」

「うん、よろしくな。じゃあ皆、ここからが本当の航海だ。気を引き締めていくぞ!」

 全員が、ここだけは元気よく『了解‼』と叫んだのだった。

果して、今後どれだけのキャラクターが出番を確保できるのか……それは偏に、筆者たる私の腕にかかっているわけですが……人数多いと重いなぁ。

でも決めたからには頑張ります。


pixivのとある作品もちょこちょこ投稿しておりますので、見れる方はぜひ見てください。


次回は5月28日か29日ごろに投稿しようと思います。

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