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私の同居人(ペット)は狼女です。  作者: 凛之介
第4章
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君と支え合って生きていく

 あぁ、疲れた……。

 私は鉛のように重い足を必死に動かして、家を目指して自転車を漕いでいた。

 ミスが多くて怒られるのはいつものことではあるけれど、今日はいつにも増して酷かった。新田先輩がコーヒー差し入れしてくれた時に、苦笑いを浮かべるくらい酷かった。部長の叱責より心に来る。

 ミカンと婚約を結んで浮かれているのだろうか……。ミカンを一生幸せにすると意気込んだくせに、情けなくて涙が出そうだ。

 自責の念に苛まれながらもなんとか足を回して、やっとの思いでアパートに到着する。カンカンと音を立てながら外階段を昇り、うちの玄関扉をガチャリと開けた。


「ただいま〜」

 靴を脱ぎながら声をかけると、すぐにミカンがリビングから玄関まで出迎えに来てくれた。

「おかえり。今日もお疲れ様」

 いつも通り、私の荷物を預かりながらそう労ってくれる。毎日言ってくれているはずなのに、なんだか今日はやけにそれが胸に沁みてしまい、思わず私はぽろりと涙を溢してしまった。

 玄関先でぼろぼろ泣き出す私を見てミカンはぎょっとした表情を浮かべ、オロオロし始める。私は心配させまいとなんとか泣き止もうとするが、涙は止まらない。

「ご、ごめんね。ちょっと、疲れてるみたい」

 ブラウスの袖で涙を拭いながらも笑顔を浮かべて見せると、ミカンは数秒考え込んでから、私をまっすぐ見つめて優しく微笑んで言った。

「着替えたらリビングにおいで」


 私は部屋着に着替えてから、一旦洗面所に寄って顔を洗う。鏡を見ると、目元がやや赤くなっていた。水で冷やしながら、はぁと深くため息をつく。

 ミカンには申し訳ないことをしてしまった、毎日家事を頑張ってくれてるのに 帰ってきた私が急に泣き出したら余計心労をかけさせてしまう。

 自分の不甲斐なさにまた目が潤んでしまい、慌ててバシャバシャと洗い流す。一度深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、私はリビングにようやく向かった。

「ごめん、おまたせ」

「ん。来たか」

 ソファに座っていたミカンが顔を上げ、こちらを向いて微笑んだ。そして、

「おいで」

 と私の方へ両腕を伸ばしてくる。予期せぬその行動に、思わずポカンと立ち尽くしてしまった。そんな私を見かねたミカンが、私の手をぐいと引っ張った。

 されるがままにミカンの膝上に乗り、腕の中で抱きしめられる。安心する匂いに体温、とくとくと伝わるミカンの鼓動。背中を優しく叩かれて、私の涙腺はまた決壊しそうになっていた。

 肩に顔を押し付けてなんとか涙を堪えていると、そっと頭を撫でられる。

「しんどい時は泣いていい。嫁の私に弱みを見せないで、誰に見せる気だ?」

 その言葉に、私はまた涙を溢す。しゃくりを上げて泣く私の背中を、ミカンはずっとさすり続けてくれた。

「いつも私のために頑張ってくれてありがとうな。でも、家では気を抜いていいんだ。私だって、林檎のために生きてるんだから」

 そして私の顔を覗き込みながら、

「病める時も健やかなる時も、っていうだろ?」

 と微笑んでくれた。私はぐすぐす泣きながら、ミカンに一度キスをしてからまたぎゅーと抱きついた。

「私……ミカンにプロポーズして良かった……」

「ははは。私も林檎を嫁として支えられて本望だよ」

 ますます涙が止まらなくなってしまう。私はなんて果報者なのだろう。

 ミカンに背中をさすられながら、私は落ち着くまでその腕の中で涙を流した。

 明日からまた頑張ろう。しんどかったら、家でミカンに癒してもらおう。ミカンがしんどい時は、私が癒してあげよう。

「二人で支え合っていこうな」

「うん、うん。ありがとう、ミカン」

 そうやって、一緒に生きていこう。

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