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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 料理人は異世界で先生に

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47.料理人、試作品を作る

 領主会議が近づいてきて、少しずつ問題が増えてきた。


「もう私では無理です……覚えられません!」


 料理長の頭がパンクして、全体の把握ができずに味にばらつきが出てきた。

 一気に覚えることが多くて、料理を楽しむということができなくなっていた。


「それに私も何か作りたいです!」

「んー、そうなるとまとめる人がいないんだよな……」


 元々自分で作っていた料理長だからこそ、見習いたちに仕事が奪われる気がするのだろう。

 料理長って店の規模によっては役割が異なってくる。

 各料理に担当者がいる場合、基本的には監督的な立ち位置でいることが多い。

 全体指揮、味見・最終チェック、盛り付けの確認、各担当への指示、メニュー開発などやることが多いが、彼にはそれが向かないのだろう。

 性格的な部分も関係するだろうからな。


 他にも問題は料理長だけではない。


「おい、俺にもメインを作らせてくれよ!」

「お前はデザート担当だろ!」

「俺ももっと目立つことがしたいんだよ!」


 各々の料理担当への不満だ。

 一度全部の担当をやらせてみたが、やはりメインへのこだわりが強い人が多い。

 領主から誉められるのが、ほとんどがメイン料理になる。

 パンやデザート、スープは基本的にメニューが固定されるからな。


「んー、どうしようか。この際、全て元に戻してみるか?」

「「「えっ……」」」


 料理人と言っても、まだまだ見習いだ。

 自分の担当料理がどれだけ重要なのかもわかっていない。

 コース料理を作る上で重要なのが、お互いの専門性を理解してバランスを取ることだ。

 例えば、前菜が軽すぎるとメインが重たく感じてしまったり、味の系統がバラついたりと統一性がないとそれだけで料理が不味くなる。

 それを調整しているのは料理長なんだけど……。


「私が全て作るんですか! 何でもやりますよ!」


 この人もそれを理解しているかと言ったら難しいところだ。


「よし、材料もあるから……今日は全ての料理を一人で作ってもらう! ただし、どれが美味しいかは領主に決めてもらう。もちろん選ばれなかったら……」

「見習い料理人にもなるってことか?」

「「「領主様!」」」


 後ろから声がすると思ったら、領主が厨房まで来ていた。

 ここ最近厨房を覗きに来ては楽しそうに見て帰っていく。

 領主の中でも変わり者のような気がする。


「勝手な判断をしてすみません。どれもすごい重要な役割があるんですが、中々気づいてもらえなくて……」

「ははは、この際ハルトさんも参加すればいいんじゃないですか?」

「ははは、冗談もほどほどにしてくださいよ」

「冗談は言わない性格なんでね。ハルトさんには期待してますよ? 婚約者がダメなら領主の座を渡しましょうか?」

「いやいや、それはもっとダメだろ!」


 領主と話す機会も増えて、だいぶお互いの関係性も変わってきた。

 前はハルト様と呼ばれていたのに、今ではハルトさんと呼ばれている。

 今日も領主になってみないかと、変なことを言い出すからな。

 俺の料理に何か麻薬成分でも含まれているのだろうか。


「じゃあ、夕方までは各々準備をするように!」


 そう伝えて、俺もキッチンカーに戻っていく。

 料理人に教えてばかりだが、俺もメニューを決めないといけないからな。


「やっぱりうどんがいいか?」

「俺はいつでも食べる準備ができてるぜ」

『オイラも!』


 まだ作るとも言っていないのに、相変わらず我が家の食いしん坊は食い意地が張っている。


「なぁ、うどん以外の麺類は食べてみたいか?」

「『食べる!』」


 元々ネフィル山から降りてくる時にうどんは作っていた。

 夜になると寒くなることが多く、体を温めるためにもちょうどよかった。

 ただ、うどんってほとんどの材料が中力粉から薄力粉よりになる。

 付け合わせの天ぷらも薄力粉を使うため、割合としては薄力粉がメインになるだろう。

 それだと両方の領地関係を修復させるために用意するのに、フロランシェ側に付いたように感じる。

 俺はあえて中立の立場で料理をするだけだ。


「よし、やってみるか!」


 俺は一度、強力粉寄りの麺類を作ることにした。

 材料は基本的にあるからな。


「ハルト、その新しい麺はどういう名前なんだ?」

「あぁ、ラーメンって呼ばれるほど人気の食べ物だ」


 俺が作ろうとしているのはラーメンだ。

 ラーメンなら強力粉多めで、ブレッドン寄りのメニューなる。

 それにうどんの出汁に一手間加えれば、ラーメン用の出汁になるからな。


 俺は大きなボウルに強力粉と薄力粉を8:2の割合で用意する。

 水、塩、重曹で打ち水を作っていく。

 ラーメンにはかんすいと呼ばれるアルカリ塩水溶液が必要になる。

 これを混ぜることで、独特のコシ、弾力、風味、そして黄色の色合いになっていく。

 ただ、かんすいの粉がないため、重曹で代用する予定だ。

 重曹もそのまま使っても問題ないが、火にかけて熱分解させるとよりアルカリ性になり、かんすいに近づく。


「ボウルに水を入れて……ゼルフやってみるか?」


 ジーッと見つめているゼルフに声をかける。


「俺か? そんなに言うなら――」

「やりたくないならいいぞ」

「やる! やらせてください!」


 外から見ていたゼルフは嬉しそうにキッチンカーの中に入ってきた。

 見習い料理人もゼルフみたいなタイプなら上手くいっただろう。

 ゼルフって食べることが好きだから、基本文句は言わないしな。


「じゃあ、手を猫のように爪を立てて混ぜてくれ」


 俺は一度見本を見せてみる。


「猫ってもっと獰猛だぞ?」

「おっ……そうなのか?」


 きっとこの世界の猫はライオンみたいな感じなんだろう。

 ゼルフにジェスチャーしてもらったら、ボウルが飛んでいきそうな勢いでかき混ぜていた。


「おい、なんかまとまらないぞ?」

「そのバラバラな感じがいいんだ」


 うどんみたいに固まる感じではなく、少し固まっているが、全体的にバラバラになっているのが中華麺の特徴だ。

 しっかり麺のコシであるグルテンができれば問題ない。

 うどんはしっかり捏ねないといけないからね。

 この状態で袋に入れて、麺を休ませることで水分が馴染んでいく。


「じゃあ、その間に出汁でも作るぞ」


 って言ってもラーメンの出汁はほぼうどんと同じものを使う予定だ。

 ただ、違うのは濃口醤油や鶏の旨味成分、香味油を入れること。

 鶏の旨味は鶏がらスープで問題ないし、香味油は胡麻油と材料はシンプルだ。


「ラーメンのスープは……白玉が味見してくれ!」

『えっ……オイラがいいの?』

「あぁ、ラーメンのスープには鶏の旨味が重要だからな!」


 鶏の旨味が重要と言いながら、コールダックに味見させる俺も中々鬼畜だよな……。


『オイラ、これ好きだぞ!』

「おぉ、そうか……」


 鶏がらスープを好きって言われると、少し罪悪感を抱いてしまう。

 仲間を煮込ませたスープを美味いと言わせているようなものだからな。


「俺にはないのか……?」

「ほら、見てみろよ……白玉が拗ねてるだろ」


 ゼルフばかり手伝っているから、白玉はずっと拗ねて球体になっていた。

 やっと顔を出したのに、ゼルフが味見しようとしたら再び球体に戻った。


「あとで白玉にも手伝ってもらうからな!」

『クゥエ!』


 これでお互いに少しは手伝ったことになるだろう。

 我が家の食いしん坊は思ったよりも、手間がかかるやつだな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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