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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章 料理人は異世界で先生に

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37.料理人、クッキー作る ※一部ゼルフ視点

 キッチンに案内されると、目の前には小麦粉だけ置かれていた。


「あのー、小麦粉しか使わないんですか?」

「素材の味を楽しみたいからね」

「それだから美味しくないんですね……」


 領主からの痛い視線が突き刺さる。


「他の食材も借りますね」


 何を話してもボロが出そうで、俺は静かに作ることにした。

 俺はキッチンの冷蔵庫からあるものを探す。

 領主の屋敷だからきっとあるだろう。

 クッキー作りに必要不可欠なバターがあれば……。


「あった!」


 俺は冷蔵庫からバターを取り出す。

 ボウルにたくさん入っているから、普段から料理に使っているのだろう。


「おい、くっつき防止の塊を使うのか?」


 屋敷の料理人だと思われる男が話しかけてきた。


「油の代わりに使っているんですね」

「あぁ、鍋にくっつくときに便利だからな」


 どうやら本当に油の代わりに使っているようだ。

 チーズを作る時に脂をグルグルとかき混ぜて固めてできたものらしい。

 捨てるのも勿体無いから残していると言っていた。

 しっかりバターとして固まっているから、使っても問題はないだろう。

 水分量が多いとサクッとできないからね。


「匂いもチーズぽさが残っているけど……大丈夫か」


 ふわりと乳の香りが漂い、少し酸味の残るバターを手で柔らかく揉みほぐす。

 匂いはどことなくチーズとヨーグルトの中間って感じだな。

 ボウルに小麦粉を入れ、バターの中に少しずつ加えながらベラで切るように混ぜる。

 白い粉と黄みがかったバターがしっとりと混ざり合うのを確認しながら、小麦の量を調整する。

 はかりがあれば簡単だが、この世界ではまだ見たことがないからな。


 小麦粉の味を前面に押し出すように、砂糖を軽く振り入れる。

 そこに少しずつ卵を加えて生地をまとめる。

 卵にも全卵、卵黄、卵白、どれを入れるかで変わってくる。

 卵黄だけなら濃厚な味わいでしっとりするし、卵白だけならサクサク感が出やすい。

 今回は小麦粉が多いため、バランスを整えるために全卵使うことにした。


「ブレッドンのパンみたいな作り方をするんだな」

「ブレッドン?」

「ああ、隣の領地だ」


 どうやらフロランシェの近くにブレッドンという領地があるらしい。

 話からしてお互いに小麦が盛んな地域でフロランシェは薄力粉、ブレッドンは強力粉って感じなんだろう。

 名前もどこかフロランタンとブレッドに近い印象だから覚えやすい。


「一度生地を冷やしますね」


 俺は冷蔵庫にクッキー生地を入れて冷やすことにした。


「そんなこともするのか?」

「その方がサクッとして美味しいですからね」

「そうか。なら、今日はこのまま泊まっていくといい」


 そう言って、領主はキッチンを後にした。

 去っていく後ろ姿がどことなく嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 ひょっとしたら、単に美味しいクッキーが食べたかったのかもしれない。


「そういえば、キッチンカーってどうすればいい?」

「屋敷の庭に置いても良いって許可はお父様に取っているよ」


 キッチンカーをそのまま町の外に停めているため、一度外に取りに行くことにした。

 さすがにドラゴンの咆哮がするキッチンカーを外に停めて置くのも怖いしね。

 防犯のためのセキュリティアラームが鳴ったら、また町の中は大騒動になるのが目に見える。


「あっ、そういえば先生はお父様とお話があるからね」

「はぁん!? なぜ俺が……」


 俺と白玉でジーッとゼルフを見つめる。

 まぁ、あんな態度をしていたら個人で呼ばれても仕方ない。


「まぁ、生きて帰ってこいよ!」

『頑張れー!』


 俺はゼルフを肩を叩くと、白玉とキッチンカーを取りに行くことにした。


♦︎


 キッチンに残された俺はショートと共に領主の元へ向かう。

 きっとあの反応だと俺の存在に気づいているからな。

 俺に媚びを売る……いや、それならすでにやっているか。


「先生、お父様に何かしたんですか?」

「いや、特に何もしてないぞ」

「ならお父様の大事な話ってなんだろうね……」


 俺はここの領主が王族派か反貴族派かは覚えがない。

 中立の立場なら問題はないんだがな……。


「お父様、先生を呼んできました!」


 扉が開くと俺はショートと共に部屋の中に入る。

 俺は視線をショートに向ける。


「可愛い娘よ。少しだけゼルフ様と二人にさせてくれないかい?」

「はーい!」


 領主の言葉にショートはチラチラと気にしながらも、部屋を後にした。


「お久しぶりです。第二王子、ゼルフィウス様」

「俺とは会ったことがあるのか?」

「えぇ、貴族が集まる晩餐会に招待していただいた時に――」

「ってことは反王族派か?」


 反王族派が俺を推すのは、そもそも王族として俺が適してないからだ。

 それに俺が参加した晩餐会なんて、反王族派が開いたものしか行ったことがない。


「いえ……私はずっと中立派にいます」

「そうか」

「幸い私たちは辺境地の貴族なので、そこまで戦力にはならないですしね」


 きっと貴族同士の付き合いで参加したのだろう。

 変な争いに巻き込まれたくなければ、中立派にいた方がいいからな。


「それにしてもなぜゼルフィウス様がこんなところにいるんですか? あっ、いえ……フロランシェは良い町ですが、さすがに辺境地すぎるかと……」

「まぁ、旅だな。あいつらといると毎日が楽しいからな」


 俺が何者かに転移されたと話せば、きっとフロランシェの領主も巻き込まれるかもしれない。

 それにあいつらと旅しているのは実際その通りだからな。


「ははは、ゼルフィウス様も変わられましたね」

「そうか?」

「ええ、あの当時はどこか人形のような……抜け殻でしたからね」


 きっと初めて俺を見た時と今はだいぶ違うからな。

 それは俺も感じている。

 あいつらといると本当に飽きることはないからな。


「俺がここに来たこと、生きていることは黙っておいてくれ」

「わかりました」


 そう伝えて俺はハルトたちの元へ戻ることにした。

 貴族と関わることは碌なことが起きないが、ここの領主が中立派の貴族で良かった。

 もうゼルフィウスは死んだことにすればいいからな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします(*´꒳`*)

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