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キッチンカーと巡る異世界グルメ~社畜と無愛想貴族、今日も気ままに屋台旅~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一 キッチンカーで異世界へ

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14.料理人、町に到着する

「やっとここからおさらばできそうだな」

『オイラは楽しかったよ?』


 俺と白玉はやっと見えてきた山の下り坂にわくわくしている。

 峠から町の灯りが見えたため、あともう少しだと思っていたがあれから二日もかかった。

 山道は途中で崖になっていたり、木が多すぎて通れなかったりと遠回りしながら下りることになった。

 それにやたら大きなクマに遭遇したり、電気を放つシカがいたりと大変だった。


「もう少し喜んだらどうだ?」

「あぁ……そうだな」


 その一方、ゼルフは町に近づく度に笑顔が少しずつ減った。

 最近は何かを考えているのか、食べている時も深刻そうな顔をしている。

 ただ、食欲は減らないようでおかわりは常に要求されるというわけのわからない状況だ。


――プスッ……ププッ……


「あー、そろそろキッチンカーもダメだな」

『ここでお別れになるのか?』

「そうだな……」


 回り道をしながら山を下れば自然とガソリンをたくさん使ってしまう。

 今もガソリンのメーターは底をつきそうだ。


「お別れか……俺も――」

「せっかくだから町の近くで出店できないか?」


 町まであともう少しで着くだろう。

 キッチンカーと離れるなら、せめて一回でもいいから出店をしたい。

 それがキッチンカーを譲ってくれた店主に対しての恩返しにもなる気がした。


「町の中じゃなければ商業ギルドに所属しなくてもいいはずだぞ?」


 どうやらこの世界でも保健所みたいなところに営業許可がないと、町の中では出店できないらしい。


「それなら町の外でやろうか!」

『オイラもちゃんと手伝うぞ!』


 白玉もやる気満々のようだ。

 ただ、ゼルフの表情は曇ったままだった。


「そろそろ町に――」

「止まれ!!」


 突然、目の前に大きな声を出した人が現れた。

 鎧を着ており、まるで騎士のような出立ちだ。

 俺は急いでブレーキを踏む。

 ただ、ガソリンが少ないからか、いつもよりもブレーキが重たく感じた。


「大丈夫ですか!?」


 止まったキッチンカーから急いで外に出て、ケガをしていないか確認する。

 人を轢いていたら、キッチンカーを出店する前に捕まってしまうだろう。


「お前らは何者だ!」


 突然、何かが頬の横を通り過ぎた。

 視線を向けると槍のようなものが俺に向けられていた。

 ゼルフが普通に剣を持っているような世界だ。

 俺が狙われてもおかしくない。


「俺らは怪しいものでは――」

「これのどこが怪しくないって言うんだ!」


 男の指先はキッチンカーに向いていた。

 確かに見たことがなければ、突然大きな物体が近づいてきたら驚くだろう。


「あー、これはご飯を作るやつでして……」


 男は俺をジィーッと観察するように見てきた。

 これはかなり怪しまれているだろう。

 槍を下げるつもりもないしな。


「俺たちはあの山から下りてきた」


 キッチンカーの扉が開いて、ゼルフが降りてきた。


「ネフィル山だと!?」


 男の声に俺とゼルフは顔を見合わせる。

 やはり俺たちがいた山は〝ネフィル山〟という予想は合っていたようだ。


「お前ら悪魔か!」


 だが、それが原因でさらに怪しまれてしまった。

 俺はジィーッとゼルフを見ると、顔を逸らした。

 ひょっとしたらゼルフは何かを知っていて、隠していたのかもしれない。

 ただ、今は悪魔ではないことを伝えないといけない気がする。


「すみません、こいつの顔はちょっと悪魔みたいに無愛想ですけど、ちゃんとした人間です! なぁ?」


 俺は急いでゼルフの頭を下げさせる。

 しかし、頑なに頭を下げようとしないため、無愛想が加速して、男を睨みつけるような目になってしまった。


「やっぱりお前らが悪魔――」

『ハルト、オイラ腹が減ったぞ!』


 シートベルトがうまく外せなかったのか、遅れて白玉が降りてきた。


「せっ……聖鳥様!?」


 白玉を見た途端、男は頭を下げた。


『出店はどうするんだ?』


 当の本……本鳥は特に気にしていないのか、俺に詰め寄ってくる。

 こんな状況でも腹が減ったと言ってくるのは白玉ぐらいだろう。


「聖鳥様、そやつらは悪魔で……」

『ハルトは悪魔なのか!? うーん、確かにあの美味し料理は悪魔みたいに誘惑されるものではあるぞ!』

「やっぱり悪魔じゃないか!」


 白玉が出てきたことで、さらに悪い方向に進んでいる気がする。

 それにゼルフは未だに頭を下げようとしないからな。


「おい、何やってんだ?」

「外が騒がしいわね……」


 次第に町の人たちも気になったのか、近寄ってくる者も出てきた。

 これは明らかに良くない展開だろう。


「あっ……そうだ!」


 あることを思いついた俺はすぐにキッチンカーに乗り込み、荷台部分が見えるように向きを変えた。


「なっ、やっぱりお前らは悪魔じゃないか!」

「だから、悪魔じゃないってあいつが言ってるだろ! 俺はグランベル王国――」


 俺は荷台部分を町から見えるように開けた。

 ゼルフが何か言おうとしていたが、今はそれどころじゃない。


「今からキッチンカーでおにぎりを販売します!」


 俺の言葉に視線が集まってきた。


「何をするんだ?」

「キッチンカーって知ってるか?」

「そもそもおにぎりが何かも知らないぞ?」


 興味が出てきたのか、町から外に出てくる人も増えてきた。

 あとは興味をかき立てるだけだ。

 すぐにガスコンロの火をつけて、作り置きしてあるおにぎりに豚バラを巻いて焼いていく。

 匂いで誘うようにタレは甘辛い照り焼き風にパンチを効かせて、すりおろしニンニクを入れる。


「良い匂いがするな……」

「私もおにぎりを食べてみようかしら?」


 気づいた頃にはキッチンカーの外には小さな列が出来ていた。


「お前ら、そいつらは悪魔で――」

「悪魔なら聖鳥様がこんなにはしゃいでいないわよ!」


 最前列を見たら、羽をバタバタさせている白玉がいた。

 よほど肉巻きおにぎりが好きなんだろう。


「おい、お前はあとだぞ!」

『クゥエ……クゥエエエエエエ!?』


 今まで一緒に食べていたから、後回しにされると思っていなかったのだろう。

 驚いた白玉はその場で羽を広げて固まってしまった。


「なんと……神々しいんだ……」

「妻の病気が治りますように……」


 次第に白玉を囲む人たちも集まっていた。

 やはり聖鳥は高貴な動物って印象なんだろうな。


「じゃあ、この悪魔みたいな顔のやつはなんだっていうんだ……」

「「「……」」」


 男はゼルフを指さすが、ここにいる誰も答えることができなかった。

 明らかに今のゼルフと目が合ったら殺されると思っていそうだ。

 それだけ怒っているのが伝わってくるからな。


「あー、そいつは俺の家族だ! 大事なスタッフだからいじめるのはそこまでにしてくれよ!」


 咄嗟に出た言葉は〝家族〟だった。

 一緒に命がけでここまできたら家族のようなものだろう。

 その言葉に当の本人も嬉しそうな顔していた。


「ヒィ!?」

「やっぱり悪魔じゃないのか……」


 ただ、その無愛想な表情で笑うとせっかく並んだお客さんは後退して、町に帰って行ってしまった。


「はぁー、お前ら働く気あるのか?」


 最初で最後の出店は一筋縄にはいかないようだ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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