表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/174

43.蝶は小鳥となり鳥籠へ

 フォルシオン家の血筋は、代々嫉妬深い。婚約者が他の男に見惚れたからと、相手の男を殺して彼女の目を抉るなんて話もあるくらいだ。僕はそこまで病的ではないと思ってきたけれど。


 トリシャを見ていると、時々耐え切れない衝動を感じる。彼女が僕の愛を拒んだら? 手足の腱を切って部屋に閉じ込めるかも知れない。その声で僕を罵ったら、首を絞めずに我慢できるかな。僕に嫌悪の眼差しを向けるなら、薬剤で視力を奪うだろうね。


 出来るだけトリシャという人間を傷つけたくない。痛い思いをさせたくないし、怖がらせたくもなかった。だから我慢しているんだ。君が僕以外を愛さないように、隠した。離宮という鳥籠は、君を閉じ込めるだけじゃない。僕という壊れた男から、君を守る場所でもあるんだよ。


 両手で掬い上げて、大切に包んで持ち帰った蝶は……僕の愛を受け入れてくれた。これからは小鳥のように僕に愛を囁いて。僕はトリシャが美しく健やかに過ごせるよう、鳥籠を整えよう。いつでも僕だけが触れられる、愛しい人でいて。


 裏切れば――僕は何をするか分からないよ?


「愛してるよ、トリシャ」


 意図して使わなかった言葉を投げかける。これが最後のチャンスだ。拒むなら今しかない。理性が優っている間に、逃げてもいいから……追いかけた僕に捕まらない場所まで。


 涙を流して微笑むトリシャを受け止める。膝から崩れ落ちた彼女は軽くて、背に羽が生えて飛んでいくのではないかと心配になった。ぎゅっと抱き締めて、思う。


 ――ああ、もう逃してあげられない。君は引き返せなくなった。


 細い体を抱き締めて、彼女の涙が止まるまで動かない。少し肌寒いのか、トリシャの肩が震えた。風邪をひいたら困るね。肩に僕の上着を掛けてあげたいが、それだと彼女を離さなくてはならない。考えた結果、抱き上げることにした。


「トリシャ、僕の首に手を回して」


 困ったような顔で、素直に従う可愛いトリシャ。僕の首を絞めて殺そうなんて、考えたこともないんだろうね。今の君の立場をどれほど羨ましがる輩がいることか。抱き着いた彼女の胸が僕の鼓動を高鳴らせるけど、今は屋外だ。これ以上可愛くて素敵な僕の小鳥を、護衛を含めた男の目に触れさせる気はない。抱き上げて驚いた。


 僕の予想よりさらに軽かった。やはり食べさせなくちゃダメだね。ソフィからの報告では、これでもふくよかになったらしいけど。まだ全然足りない。スタスタと抱えて歩く僕は、不思議と高揚していた。両手を塞いで歩くなんて、どのくらい振りだろう。


 いつだって襲撃や危険回避のために手を空けている。なのに塞がってることに、恐怖も動揺もなかった。ただ誇らしい気がする。トリシャを抱き上げられる体力と腕があってよかった、と。


 離宮内に入っても降ろさず、焦る彼女を堪能しながら階段を登る。護衛の女騎士が斜め後ろに控えた。万が一があるからね。正しい選択と位置取りだった。自室まで歩いて、迷ったのは一瞬だけ。


 トリシャの寝室ではなく、間にあるリビングでもない。僕の寝室へ足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 蝶は小鳥になって、幸せな鳥籠の中でまた変わって行くのか楽しみです♪ エリク様のヤンデレ愛が深いです(≧∀≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ