表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/174

161.凱旋式の意味を分かってる?

 フォルシウス帝国のために戦った軍を労う凱旋式は、派手に行われる。目立つ席にトリシャと並んで座り、大きなつばのある帽子で顔を隠したトリシャが、さらに扇で口元を覆う。後ろから立て掛けた日傘が影を作り、全体に見えづらくしていた。


 裾の長いドレスは、一人では歩けないよう引きずる設計だ。これは僕が必ずエスコートし、女性騎士が控える場で映えるように作られた。さすがは騎士の奥方達だ。夫の凱旋式に参加した経験から、皇族の席がどう見えるか熟知していた。


 長い階段の上に用意される皇帝の席は変わらないのか、事前に確認された時は何かと思ったけど……感心してしまう。砦に寄りかかる形で用意されるひな壇で、トリシャは優雅に裾を靡かせて座った。しばらく貴族の間で流行りそうだ。姫君の足を歩けないよう潰す風習のある異国の話を聞いたことがあるけど、庇護されなくては生きていけない姫を守りきる自信と財力の表れかも知れないね。


 当然、僕はトリシャに勝手に歩き回って欲しくない。誰かに攫われたり、触れられ、見られるなんてぞっとするよ。でも彼女を傷つける気はなかった。自ら逃げ出したとしても捕らえて閉じ込めるだけ。足を切るなんて野蛮な真似はしない。一人で歩けないトリシャという状況に、心惹かれる部分はあるけど。


 彼女が自らの意思で僕の傍らで羽を休めてくれる。その方がもっと素敵だよ。飛ぶ翼を持ちながら、僕を選んで扉の開いた鳥籠に留まってくれる。ほら、最高じゃないか。


 見下ろす先で、騎士や兵士が入場する。騎乗して先頭を進むアレスへ、その後も緩やかに手を振り続けた。命懸けで戦った彼らが主役なのに、どうして手前で騒ぐ貴族が得意げなのか。


 この場は戦場で命を危険に晒し、勝利をもぎ取った者への褒美なんだよ? 後ろで戦いもせず、助けもせずに休んでた連中が参加するのはおかしい。手前のあの席は家族や功労者に与えたはずだけど。凱旋式の意味が分かっていないのか? この式典は戦った者の家族や、後方支援をした商人らの栄誉を讃える場だよ。


 眉を寄せた僕の耳に、ニルスがそっと声をかける。潜めた声が告げた内容に満足し、頷いた。すぐに足元で騒動が起き、近衛騎士に捕らえられた貴族が排除されていく。代わりに兵士や騎士の妻子、物資の調達や運搬の危険を担った商人らが通された。本来の景色に戻った観覧席は、大いに盛り上がる。


「ニルス、祝勝会も同様に采配して」


「かしこまりました。すでに皇帝陛下のご意思として下知しておりますが、徹底させます」


 ニルスの仕事は早い。安心して任せられるね。凱旋式の不手際は何かと思ったけど、まあ足元の掃除には役立った。悪虐皇帝の名を甘く見る連中には、いい仕置きになっただろう。


「エリク……悪いお顔をなさってますわ」


「おや? トリシャの好きな顔だろうに。昨夜もそう言ってくれたじゃないか」


 仕事を終えて戻るなり、トリシャを風呂場へ誘った。恥ずかしがる彼女を宥めて身体中を丁寧に洗い、のぼせたトリシャをベッドに運んで貪る。もちろん僕を求めてくれるよう、優しく体に説得したけどね。焦らされた、なんて朝怒ってた顔も可愛かったよ。


 夫婦の秘密を匂わされ、トリシャが真っ赤になる。ソフィは自ら耳を塞いで目を逸らしたが、ニルスは黒い笑みを浮かべて囁いた。


「陛下、デリカシーのない男は嫌われますよ」


 それは困る。すこし控えることにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ニルスはもちろんデリカシーも兼ね備えているので、ソフィを任せても安心ですね?笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ