表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/174

157.将軍としての出陣を許す

 ニルスとソフィの結婚式会場を貸し出す話は受け入れられ、正直ほっとした。他に思いつかないからね。トリシャのお陰で助かったよ。


 誰かに抗議できる爵位だけあればいい。以前にニルスはそう言ったから、大公の地位を与えた。周囲の貴族がうるさいから、親族だと匂わせて黙らせる。与えた領地は邪魔だと返され、代わりに渡した金で孤児を育てて、僕の周囲に配置する。血の繋がった親兄弟だって、ここまでしないんじゃないかな。


 献身的という単語がここまで似合う奴も珍しいけど、その意味では双子の騎士も近かった。方向性が同じだったら、互いに牽制し合いそうなタイプだったね。


 この10日ばかりで舞い込んだ案件の中で、厄介なものから手をつける。属国同士の戦いは放置、結果が出たら最後の采配だけすればいい。僕が一々出て行くと分かれば、多少の牽制になるかも知れない。だがそれ以上にデメリットが大きかった。


 僕がトリシャと過ごす時間が削られる。皇帝の仲裁が恒例化すれば狙われるし、離れた隙に鳥籠を狙う泥棒猫が出る可能性もあった。危険は芽のうちに摘むべきで、今後は各国に監視員を派遣する予定だ。それによって戦争や紛争の火種を事前に把握できる。火種のうちに消せば被害も出ないからね。トリシャが願ううちは、善政を敷く皇帝陛下でいるつもりだよ。


 数枚の書類を処理し、椅子に寄り掛かる。専用の厨房で菓子を焼きたいから、と昨夜は拒まれてしまった。確かに結婚前は午前中に菓子を焼いて、午後のお茶に出してくれたけど……もっと甘い味を知った僕に、待てをするなんて。


 相手がトリシャだから頷くしかないんだけど。押し倒して有耶無耶にしたい葛藤を抑えて眠るのは、とても大変だった。夫に我慢させているのに、彼女はすやすやと寝息を立てる。その無防備さに、僕が暴走しなかったのは奇跡だね。君への愛が成せる技だけど、何回もやったら効かなくなるよ。


 ソフィの婚礼衣装の手配は明日の午後だし、ニルスは普段から式典用の採寸をしているから問題ない。あとは急ぎの仕事はない……かな? 頭の中であれこれ整理する僕の耳に、慌ただしい足音が聞こえた。


 男性禁制にしていた離宮だけど、結婚を機に信用できる者に許可を与えた。ほとんどは近衛騎士とニルスの育てた侍従だ。力仕事を手伝うため、侍女との交流が進んでいるようで、結婚の許可を求める書類が届いたとニルスが笑ってたっけ。


 ノックの音の後、アレスの声で入室の許可を求められる。ということは侍従の誰かだろう。


「いいよ」


「失礼いたします。皇帝陛下に幸あれ。ご報告がございます。属国セルベルに攻め込んだオリアンに、レンヘルム王国が加勢しました!」


 セルベル国とオリアン国は、フォルシウス帝国の配下だが、レンヘルム王国は違う。漁夫の利を狙った加勢か、またはオリアンが裏切っていたか。


「アレス、聞いた?」


「はい」


「将軍としての出陣を許す。セルベル国に加勢し、オリアンとレンヘルムを叩きのめせ。ああ、オリアンの王族はまだ生かしておいてね。レンヘルムは併合しちゃっていいよ」


「拝命いたしました」


 圧倒的武力を誇る帝国の騎士を動かす必要なんてない。近隣国は喜んで兵を差し出すからね。僕が動く事態になる前に片付けろ――命じた意味を受け取ったアレスの口元が弧を描いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ