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【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


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126.相談があるんだけど

 帝国内外含めて、もう僕に逆らう愚者はしばらく出てこないだろう。一通りの粛清が終わった今がチャンスだね。皇妃のティアラは新しく作り直させなくては。誰かの髪を飾った物など相応しくない。


「モチーフは百合か鈴蘭、本体は白金細工だね。宝石類は僕が用意しよう。デザイン次第だね」


 手配を命じた工芸師が帰るのを見届け、本日処理すべき最後の書類に署名する。ティアラの予算を通すための決裁だった。金額は多めに確保したし、あとは宝石選びだけ。


「離宮へ戻る」


「お供いたします」


 ニルスは微笑んで後ろについた。ふと気になって尋ねる。


「ヨアキムの件は片付いた?」


「はい。報告書は明日提出できます」


「ふーん」


 ニルスらしくないね。普段ならもう提出しているだろうに。何か気になる点があったか、トラブルかな? もしかしたら最後の結末を待って提出する気だったのかも知れない。


 3日前に吊るした肉の末路はすべて同じだった。帝国からステンマルク方面へ進んでぶつかる山脈に、大きな亀裂があった。現在は橋を掛けているけれど、昔は回り込んでいたらしい。その亀裂に捨てるのだ。墓など作れば利用されるからね。権力争いに負けた者の墓は作らないのが正解だよ。


「今朝の騒動はお耳に届いておりますか」


「侍従が話していた肉泥棒の話かい?」


 にっこりと笑ったニルスは、どうやら僕に事の顛末を話してくれる気はあるようだ。書類整理の最中も口にしないから、隠したいのかと思っていたよ。廊下を歩く僕の前にマルス、後ろはアレスが警護する。彼らにも休みを与えないといけないが、休日出勤するのが困り物だった。


「はい、吊るした肉を持ち去ろうとした者がおりまして、代わりに並べておきました」


 変だなと思う。あのヨアキムに、死体を持ち去って墓を作ろうなんて忠臣がいたのか? 飴と鞭の使い方はなかなかだけど、信望があるタイプじゃない。


「古い肉をしばらく吊るしておきたいのですが」


 なるほど。ニルスもおかしいと考えたらしい。ヨアキムをまだ晒して、誰が食い付くか確認したいのだろう。禍根を絶つ――口にすると簡単だが、ここを疎かにする権力者は足下を掬われる。断る理由はなかった。


「一任するよ。何か見つけたら報告して」


「畏まりました」


 離宮が見える距離で、ガラス窓から外を眺めるトリシャが手を振る。それから身を翻して中に消えた。レースのカーテンが揺れる。


「トリシャが迎えに来てくれるみたいだ、少し急ごうか」


 歩調を早めた僕に、護衛も執事も合わせる。離宮の玄関をくぐったホールで、彼女は優雅にカーテシーを披露した。


「お帰りなさいませ、エリク」


「ただいま。今日はもう仕事はないけど、いくつか相談に乗ってくれないか」


 頼み事をされるのが嬉しいトリシャの微笑みの隣で、ソフィが静かに一礼した。うん、やはりトリシャの隣にはソフィがしっくりくるね。今回は残念な結果になったけど、いずれ帝国内のお婿さんを探そうか。


 ちらりと視線を流し、澄ました顔のニルスに口角を上げる。僕が余計なことをしない方が、うまくいくかも知れないね。その辺もトリシャと話し合ってみようか。

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