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【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


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121.前夜に緊張する時期は過ぎた

 ソフィの報告が入ったのは、夕食後だった。簡潔にまとめられた報告に目を通し、双子の騎士に指示を出す。動くのはマルス、僕の警護はアレスに決まった。今夜のマルスは徹夜になるね。部下も含めて褒賞を弾むと明言しておいた。


「トリシャ、ソフィの仕事は明日終わりそうだよ」


「本当ですか? 刺繍の糸の処理で分からない部分があって、聞きたかったので助かります。ソフィはとても上手なんですよ」


 リビングで寛ぐトリシャの隣に腰掛け、手元を覗き込んだ。ステンマルク国では、貴族令嬢の嗜みのひとつに刺繍が挙げられる。見事な技術で刺繍された花は生き生きとしていた。


「綺麗だね、トリシャよりソフィの方が上手なの? 僕は君の刺繍に釘付けだけど」


 見事な出来栄えだと思う。お世辞と惚れた欲目を抜いても、立派だった。赤や黄色など鮮やかな花に、緑の葉が美しく彩りを添える。薄いブルーの生地に、小花が咲き乱れる光景が描き出されていた。


「ソフィはもっと繊細です。私はまだ未熟ですけど……もう少し上達したらエリクに差し上げてもいいですか」


「っ、もちろんさ。これはどうするの?」


「私が使います」


 誰かにあげないならいいか。本当はトリシャの刺繍が入った布はすべてコレクションしたいけど、あまり無理を言ってはいけないね。微笑んで頷いた。トリシャの指を触って確認する。うん、指を刺したりはしてないみたいだ。


「あの、エリク?」


「君の綺麗な指に傷があったら悲しいからね」


 穏やかに笑い合う時間はゆっくり流れ、就寝するために部屋に戻るトリシャを見送った。風呂に入ったり、体を洗うのに侍女を呼ぶかと聞いたが、慣れているから大丈夫ですと断られる。彼女が以前に置かれていた状況を思って、見えない位置で拳を握った。トリシャが気にしないよう表情を取り繕い、頬へのキスを交わして扉を閉める。


「僕は我慢してる方だと思わない?」


 苦笑いしてぼやき、気持ちを切り替えた。返事をくれるニルスは席を外している。彼には明日の準備をしてもらうから、侍従を含めて労ってあげないと。


 僕のすべき仕事は終わっているから、十分に休むのが今の役割だった。明日、きっちり片付けて……双子や侍従達に休みをやろう。ニルスとソフィにも自由な時間を与えて、僕はトリシャと過ごす。そのために頑張るのだと思えば、明日の断罪も楽しくなると思わないかい?


 機嫌よく湯を使い、ベッドに向かう足をテラスへ変更する。本宮の部屋の半数はまだ灯りが点いていた。あの中のひとつが、謀略を練るヨアキムの部屋だろう。彼は興奮して夜明けを迎えるのか。ふん、と鼻先で笑ってベッドに潜り込んだ。眠りはすぐに訪れた。

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