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【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


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120.引っ繰り返してやる(SIDEヨアキム)

*****SIDE ヨアキム




 クソみたいな国王の下についたのは、いつか蹴落とすためだ。フォルシオン帝国の属国に過ぎないアースルンド王国の、そのまた地方領主――生まれた場所が悪かった。そう考えて諦める気はない。


 実力があり、機会が巡ってきたら下克上を果たす。あんなガキが皇族に生まれた幸運だけで、皇帝の座に就いた。おかしいだろう。俺の方が実力は上だ。血筋とスタート地点の差が、そのまま今の差だった。なら引っ繰り返してやる。


 どこかで見つけた女に夢中で、血の粛清を始めた皇帝の足元を揺らして、俺が上に立つ。その時、クソ生意気なガキを、あの赤い壁に吊るしてやるよ。


 王族になれば、皇帝が住む宮廷への出入りが可能になる。年に一度は顔見せと称して滞在できる上、荷物の持ち込みも出来た。側近や護衛はじっくり調べるくせに、俺の私物が入った箱はほぼノーチェックで運べる。この状況を利用しない手はなかった。


 反乱に必要な武器を大量に詰め込み、上に服や宝飾品で蓋をする。重さを誤魔化すために賄賂を渡した。ただそれだけだ。皇帝の側近で危険なのは、頭脳担当の執事より双子の騎士だった。圧倒的な武力と技量を誇る彼らを突破する方法を考えながら謁見し、皇妃候補を利用する手を思いつく。


 頂点に立つ実力がある者には、神が閃きを与えるらしい。この俺に皇帝を倒せと言うのだろう。謁見の際に叛逆を匂わせても、平然としていた。自分が奪われる側に回るなんて、考えたこともない坊ちゃんのようだ。泣いて助命嘆願する様を拝んでやりたい。


 皇妃候補は銀髪の美女だが、彼女に用はない。皇帝が大切に守る花に手を伸ばせば、指を切り落とされるだけ。ならば……花の下にひっそりと添えられた小花はどうか。帝国の女公爵の肩書があれば、王族が妻に望んでも不思議ではない。実際には興味のない女だが、皇帝の周辺を掻き乱す楔として使えるだろう。澄ました顔の大公の婚約者なら、なおさら利用価値が高かった。


「私を王妃にしてくださると伺いましたわ」


 自ら罠にかかる女公爵に、蕩ける笑みを向けた。この笑顔で多くの女を手に入れてきた。今回も俺の魅力と色気で口説き落とせないはずがない。まずは手を握るところまで、翌日は一気に押し倒すか。一度抱いたら、女など自由に操れるさ。


 王妃という光に集る愚かな羽虫……その顔が絶望に歪んだところで、赤い壁に吊ってやろう。代々の皇族や帝国貴族に染められた血の色は、皇位簒奪をする俺により濃さを増す。その日が楽しみだった。


 準備を終えた部屋に、手練れを潜ませる。明日の決戦で俺はこの大陸の頂点に立つのだ。帝国を手中に収め、属国を従わせる皇帝陛下――そうしたら、あの皇妃候補の女も味見してやろうか。あの皇帝の前で犯したら、さぞいい声で鳴くだろう。手元のグラスにワインを注ぎ、芳醇な香りを楽しんだ。


 すべては明日……。

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