色め充ちぬーパングラム⑲
前回パングラム⑱の答えはーみち
三千さまでした。特徴をお伝えしたりなくて、難しかったかと思います。
連載小説を実はしっかり読めていない申し訳ない読者です、ごめんなさい。
私のイチオシは何と言っても、「きみとはなしができたなら」シリーズです。言葉の届け方、心の通わせ方をひとつひとつ、そっと伝えてくださる珠玉の10編。
今日は絵画の話を少しばかり。
昔フランスにいたときに、エコール・デ・ボーザール(高等美術学校、国立の美大って感じ)に通う知人ができまして、課題のプレゼンとか芸術史のレポートとかを手伝ったことがあるのです。
その時得た知識は今のリアル職業にも役立っているのですが、実はこの方の仰ることが欠片でも理解できるのが嬉しい、という細い線が繋がっています。
パングラム⑲
○○○
あさほらけ
せきわをへて
いろめみちぬ
ことはむりなくおたやかにふる
そのひようしゆつまねえす
朝ぼらけ
瀬際を経て
色め充ちぬ
言葉無理なく穏やかに降る
その表出真似得ず
朝霧の川岸で見つかる女性の水死体。
ジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」やジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「シャロットの女」に描かれたものが目に浮かびます。
オフィーリアは入水自殺、シャロットの女はランスロットに目を奪われて呪いが発動、ボートに乗ってキャメロット城へ向かいますが朝には濡れて冷え切った死体で発見されるという悲痛な最期。
下手な拙詩のご感想に、ウォーターハウスが描いた芝生に倒れたオフィーリアを思い起こしてくださったようで、もともと彼ら、ラファエル前派の絵が好きでもあった私はとっても嬉しかったのです。
冒頭にあげました美術学校で、「ビヤン・サチュレ」という言葉をよく聞きました。「色がしっかりのっている」という意味で教授たちが講評に使っていて。英語でウェル・サチュレイティドなので、直訳は「よく飽和している」ですが、褒め言葉でした。
上にあげた絵画に負けず、彼の絵は色濃くたっぷりです。マッスルも(笑)
普通、絵に秀でた方は言葉綴るの苦手だったりするのになーと思うのですが、この方の日本語は恐ろしいほどに滔々と流れます。
(パングラムには「滔々と」がどうしても使えない!のが悔しいところです。とが三つもある)
絵も文もその表現力はどちらも雄弁で、余人に真似のできるものではありません。
じょうのう膜という名の、なんかえっちっぽい膜を装備されているとの謎の報告を受けました。




