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私、青春やり直します!  作者: 綾瀬悠
中学一年編
7/13

第6話:入学式にはそんなに必要ありません。





「悠妃ー?準備出来たー?」


「もうちょっと!」



今日はとうとう桐ヶ谷第一きりがやだいいち中学校の入学式。

朝もいつもより少し早く起きて、いつもより余裕を持って準備を終わったとおもったけど、家を出発する時間が近づくにつれて鏡の前から動けなくなる。


中学の制服はセーラー服で落ち着いた印象を与える、私はもの凄く可愛いと思い、実際私の好み通りだった。


この服を買いに行ったとき、姉と母はとても興奮して何枚も写真を撮っていた。


少し家族の愛情が怖くなるのは気のせいだろうか。いつにもましてテンションが高かった。


兄も、あまりそういう事を言わない父も褒めてくれて有頂天。


昨日までは大丈夫だよー、と心配してなかったけど、朝になってドキドキ。


こういう感情を持ってる私はまだ女の子を捨ててない。


まぁ制服は万人に似合うものだから心配はいらないんだろうけど…。




「お待たせ。」


「ええ、大丈夫よ。……うん!似合ってるわ。」


「あ、ありがとう……。」



父は仕事、兄と姉は学校があり入学式は母だけだけど、母もこれないと思ってたから純粋に嬉しい。


まぁ今日の朝、姉が私も行きたい!と入学早々に休もうとしたのは、全力で止めたけど。




「そのリュック使ってくれるのね!」


「う、うん…。」



この間のデパートで連れ回されている時に入った店の中に、この黒の布に金の刺繍がされている、シンプル且つ大人っぽいリュックサックに目が止まった。


それを目敏くみつけたお母さんはプレゼントだ、といって買ってくれた。


…って言っても何もかもお母さんに買ってもらったんだけど。



桐ヶ谷第一はバックなどに指定はなく、自由なため何でもよかった。


……私からしたら選ぶの面倒だから指定があった方が良かったきがする……ってだめだ!


楽な方に進まないって決めたんだから!



……でもこれ、関係あるかしら?まぁ青春を全力でやるんだからおしゃれも必要…だよね?




「悠妃ー?行くわよー。」


「は、はーい!…行ってきます。」



誰もいない家に挨拶をし、母の横に並び学校へ向かっていった。













「す、凄い人数だね……。」


「そうねぇ、さすが東京(?)ねー。」



到着し、校門をくぐるとそこには新入生やその保護者、多分在校生の姿が、一面に広がっていた。


高知との規模の違いにこれからも驚かされるんだろうか…、と今すでに少し疲れてしまった。




「じゃあね、悠妃。上から見てるわー。」


「うん、またね。」



係の先輩に指定された席に移動するとき、お母さんは観客席に行った。


そこで入学式をみるらしい……、それはいいとしてお母さん。


その大きな荷物に何がはいってるの…?

カメラならそんなに大きくならないよね…?


変わらず自由奔放な母に振り回されるのはいつものこと、と気持ちを落ち着け指定の席に座った。



「……まだ会場には入ってないのかなぁ。」



辺りを見回すとちらほらと新入生はいるけど、大半はまだ外にいるらしく、私の周りの席は空いたまま。



…少し外にいこうかな。



このまま開始時間まで座って待つのも退屈だから、外で時間をつぶすべく、私はドアの方へ進んだ。








「……ふぅ。」


近くの洗面所に行き、お手洗いをすませ、体育館へ戻る道を進む。



その途中でみつけた中庭に少し入ってみると、大きな桜の木が一本、堂々と立っていた。


風でまう花びらは幻想的で、桜の木がこの入学式を祝っているみたい。




ふと腕時計をみると開始時間まであと十五分に差し迫っており、急いでその場を後にしたけど、また来たいなともう一度振り向き、桜の木を見て、今度こそ体育館へ足を進めた。








中に入ると先ほどと打って変わって人が結構入ってきていた。


のんびりする訳にはいかない、と急ぎ足で席に戻る。

私の周りの席は埋まっており、公立だからかみんな知り合いが近くにいるらしく集まってお喋りをしていた。



私は田舎からきたからもちろん知り合いがいるはずもなく、この間であった穂波ちゃんのお兄さん、尚志くんを探すわけにもいかない、いやむしろ、探しても話しかけにくいから、いいんだけど。



「……あ、あの…。」



頭の中でいろいろ考えていたら、私より少し高めの声がした。


ふと隣をみると、少し小柄な女の子が私を見上げていた。



「…はい?」


「え、えっと…!あの、私佐々本杏里ささもとあんりっていいます!よ、よかったら…その、」



しどろもどろに言う姿はとても可愛く、穂波ちゃんを連想させる。



「神田悠妃です。…よろしくね。」


「う、うん!…あ、杏里って呼んでくれる?」


「うん、私も悠妃でいい。」



「あ、ありがとう!これからよろしくね!」



嬉しそうに笑った杏里はとても可愛く、そこから始まるまで私たちは会話を続けた。



杏里は都内に住んでいたけど、引っ越し地元を離れたため、ここに入学したらしい。


私も引っ越ししてきたから同じだね、というとほにゃりと柔らかい笑顔を向けられた。



杏里は少し天然がはいってるらしく、お母さんに似た雰囲気を持っていて、どこか私に妹ができたみたいに感じた。

甘え上手で素直だから、上に兄弟がいるのかとおもったけど、なんと下に弟がいるらしい。


…なんと人は分からないものだなぁ。としみじみ思っていたら首を傾げられたけども。






「では、これで今日はお終いです。明日の予定を確認して、学校に遅刻しないように来てください。」



入学式が終わり、教室に移動した。

家族も一緒に話を聞くらしく、私の隣にはお母さんがきた。


杏里は私の後ろの席で、となりに杏里に似た女性がいた。




教科書や必要書類の配布などを済ませ、体操服や授業で必要なものを購入表に丸をして、先生に渡したあと、解散となった。



予めリュックの中身はほとんど何も入ってなかったから入ったけど、結構な重さだった。



「悠妃!」


「杏里、どうしたの?」


「一緒に帰ろ!」



廊下にでると後ろから杏里が駆け寄ってきた。

杏里のお母さんはその後ろをなんとも嬉しそうに笑って近づいてくる。



断る理由もないし、杏里と帰れるのは嬉しいかったので一緒に帰ることに。


お母さんはもう友達が出来たのに感動したのか笑顔が満開だった。



帰り道、途中まで方向は同じらしく前に私と杏里、後ろにお母さんたちが並んで帰っていた。



お母さんたちも盛り上がっているらしく、笑い声が後ろから聞こえる。



「悠妃、どうしたの?」


「…え、何で?」


「ぼーっとしてたから…。」


「あら、杏里ちゃん。悠妃はいつもぼーっとしてるわ。」


「…ちょっと。…そんなつもりはなかったんだけど。」


「ふ、ふふ。面白いね、お母さん。」


「…そうだね。」



コロコロ変わる表情は、私にはないものでとても癒された。

もしかして杏里から癒しの空気でも出ているんだろうかってくらい。



お父さんに似た私は、そんなつもりはないんだけどポーカーフェイスらしく、よくどうしたの?って聞かれる。





「悠妃!また明日!悠妃のお母さんもまた!」


「悠妃ちゃん、杏里のことよろしくね?」


「はい、また。」


「気をつけてお帰りになってね。」



交差点で杏里と杏里のお母さんと別れ、二人になり、家への帰路につく。



「…新しい友達、出来て良かったわね。」


「うん、…私東京きてよかったって思ってるよ。」


「!…そう、よかった。」



まだ高知にいるとき、行きたくないと涙を流してしまったから、お母さんは気にしていたらしい。


よかったね、という顔に安堵が浮かんでいた。




明日から変わった未来の中で、青春を楽しんでやるんだから…!















「…お母さん、なにそれ」


「入学式のビデオ!よく撮れてるわねぇ!」


「あーあ、私も行きたかった!」


「仕方ねぇだろ?学校あったんだから。」


「……入学おめでとう、悠妃。」


「うん、ありがとう……。」




ビデオを撮っていたのは知ってたし、家に帰っても見るのは分かってたけど…。



このビデオの量はなに?

なんで3台ももっていったの?


ちょっとそろそろおかしいよね?











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