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私、青春やり直します!  作者: 綾瀬悠
中学準備編
2/13

第2話:変わらない日常と変わる未来


「あら、起きれたのね。おはよう!悠妃。」


「おはよう。」


「……おはよう。」




「おはようお母さん。お兄ちゃん、お父さん。」



お姉ちゃんから逃げるようにリビングに入ると、あの頃より若返った家族の姿が。


やっぱり戻っているんだなって全員の顔を見て思った。



「ほら、ご飯よ?」


「うん。」



テーブルに用意されているのは朝食。

神田家ではいつも朝は和食と決まっている。


私とお姉ちゃんには甘い卵焼き、お兄ちゃんと両親にはネギの入ったダシの卵焼き。

野菜のおひたし、きのこの味噌汁に今日のメイン、アジの干物があった。


大学に進学したとき、一人分作るには多い量だったため、いつも手抜きだったけど、この頃から朝は基本多めだったからお昼前にはお腹が鳴ってたっけ。


「おはよー、いい匂い…って悠妃!さっきはどうしたのよ?」


「い、いや…なんでもない。寝ぼけてたのかも…。」


「あ?そう?ならいいわ。」



いいのか、お姉ちゃんよ。

自分で言うのはおかしいけど、あの変な質問をして、寝ぼけてた…で済ませるものだったっけ?



「あら、また悠妃は寝ぼけてたの?もー、いつもなんだから。」


「………そう?」


「「もちろん。」」



お姉ちゃんとお母さんに口を揃えて言われた。けどね、ちゃんと見えてるからね。


前の席に座っているお父さんとお兄ちゃんも言葉は発しなかったけど首を縦にふっていた。


私はそんなに普段からボーッとしてるかな…。




「…今日の夕方、話があるから六時には家に居てくれ。」


「え、」


「あら、珍しいね?お父さん。」


「何かあったのか?」


「ふふ、急かさないであげて?ほら、ちゃんと六時には帰ってくるのよ?」


「わかった。」



私たちの父親はとても寡黙な人。

発する言葉は少ないし、何を考えているのかわからない無表情に、初対面の人は少し身構えるほどの強面。


けれどもとても優しくて包容力があることは、子供の私たちはもちろん、近所の人だって分かってる。


ただ不器用なだけ。



それでもお父さんはどうやってお母さんと結婚したんだろう。

永年の謎である。


寡黙で不器用、強面のお父さんと、いつもふわふわしていて緩く、童顔なお母さんは、全くと言っていいほど似ている部分はない。



一度お母さんに聞いてみたら「え?ふふ、…内緒よ」と華麗に躱されてしまった。

いつまでも少女のように若々しいお母さんだ。




まぁそれは置いといて、なにか(少し)深刻そうな顔で告げられた言葉に、私たち兄妹はそろって首を傾げた。











私の休日は午後から行動を開始する。

趣味の散歩は今のこの寒い季節には少しつらいけれど、午後から行くと少しマシではある。



散歩コースは至って平凡。この田舎の高知ではちょっと出掛けるといっても大きな街はなく、私の家は県庁所在地の隣の市なため電車で二十分くらいでつくけども、これといった店があるわけではない。



けれどなにも無いわけではない。



散歩と言えば徒歩…、ということで家から約三十分の距離を黙々と歩きまず始めによるのは某全国チェーンの本屋さん。最近は雑貨も売り出し、改装したばかりでとても綺麗だ。



そこで私はいつも小説や漫画を買う。


私の趣味は散歩の他に読書がある。

それも私はとても凝り性だから、お父さんの書斎の一部を借りて大きな本棚に何百冊もの本を貯蔵している。

ジャンルは問わず現代文学や古典文学、歴史やミステリー、ホラーに恋愛もの、はたまた広辞苑だったり…。

今の私は小学六年生だからおかしいと思われるかもしれないけど、もともと読書家のお父さんから毎年送られる誕生日プレゼントをきっかけにハマっていったのだ。


もちろん小学生らしく漫画も読む。

少年漫画でも少女漫画でもいろいろ。けれども私は、ストーリーも大事だけど一番重要視するのは私好みの絵であるかどうか。


このこだわりのせいであまり漫画は持ってないけど…。



今日は新刊の小説を二冊と、続編の漫画を一冊買って本屋さんを後にした。



次に向かうのは小学生向けの雑貨屋。

特にこれと言って欲しいものはないけれど、陳列された小物を見るのは楽しい。


今日も何も買わずに雑貨屋を出た。



次に行くところは…、そう考えてふと近くのスーパーに入った。

田舎のスーパーの中には服屋やゲームセンター、ファストフードなどがある。


これはほかの県ではそうなのかわからないけど、少なくとも高知の、私の地元にあるスーパーはそうだ。


今日は久しぶりにゲームセンターに入ってみる。

あまり私はこの大音量の音楽の中に入る勇気がないからいつも断念しているけど、今日は特別。


この間発売された新作のお菓子を獲得しようと思っているから。



と、中に入ると大学生の私には久しぶりの、小学生の私には見慣れた顔がいた。




「…あ、いつき。」


「…悠妃か、珍しいな。お前がここにいるのは。」


「うん、新作のお菓子取りたくて。」



いたのは小さい頃から知っている幼なじみの立石たていし樹。


とても仲良くて、中学まで同じ学校でよく一緒にいた。

他の人とは違う、特別な人。

それが恋とか愛とか言われても分からない。

けれども私にとって樹は誰よりも特別な存在。



「樹は遊びに来たの?」


「あ?…まぁ、暇つぶしに。」


田舎の暇つぶしは場所が限られてるし、季節は冬だから外で遊ぶのは嫌なのだろう。

わかる、わかるよ。




「あれ、悠妃ー?」


「本当だ!それに立石くんもいるじゃん!」


「よー、お二人とも一緒だったんだなー。」



次にやってきたのは仲のいいクラスメイトの三人だった。


いつもこの五人で過ごしていることもあり、班を作る時はいつも一緒だった。



「皆も暇つぶしに?」


「そー!さっき合流してね。悠妃たちも一緒に遊ぼ?」


「うん。」「あぁ。」



合流したのち、私たちはお菓子をとるのに苦戦したりコインゲームで樹が連鎖起こしてすごい量のコインを出したり、シューティングゲームで女子組が男子組に僅差で勝ったり…と日が暮れるまで遊んだ。


時計を見ると五時を少し過ぎた頃だった。


小学生だから、そして冬だから私たちはそろそろ解散になった。



「じゃあねー!また学校で!」


「うん、バイバイ。」


「樹ー、ちゃんと神田送っていけよ。」


「わーってるよ。じゃあな。」



そう言うと樹はスタスタと私達の家の方向へ歩いていった。


私はそれを追いかけながら、後ろに手をふった。

…なんだか三人がニヤニヤしている気がするけど、私たちはそんな関係じゃないから。





「じゃあな。」


「うん、また明日。」



会話を挟みつつ隣を歩いて、先についたのは私の家。

樹の家はここからさらに十分くらい歩く。


お互い習慣になった目をじっと見て別れの言葉をいう。

保育園のとき、先生に教えられた挨拶の仕方は今でも私たちの間で続いていた。


流石にもう手をつないで移動なんてしないけど、これだけは止めなかった。













この時間がずっと続くと思っていた。

だって私は過去に戻っているから、この先の人生も大きくは変わらないだろうと思っていたから。



けれど、それはすぐに覆されることになる。





「……東京に引っ越すことになった。」





変わらないと思っていた日常は、簡単に変わる。

知っていると思っていた未来は、簡単に変わる。





変わった未来が私の身に降りかかる。

それは抗えることのできない、運命の定め。












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