第11話:少ないのはいつもの事らしい。
今話は少し少なめです。
初日を地獄のような練習で終え、家に帰ると膝が笑っていた。
こんなに運動するのは前も今も初めてのことだったからかな。
お風呂でマッサージをして、いつものように晩ご飯のあと姉さんの部屋でストレッチをしていたら、突然お母さんが入ってきてマッサージ(鬼のようだった)をされた時は、目の前に三途の川が見えた。
いや、本当に。
お母さんの実家はスポーツ病院だからか、そういうマッサージは朝飯前らしい。
それはいいんだけど、突然やられるとびっくりするから。
そして本当に痛いから、いやマジで。
どこにそんな力あったの。
普段のほほんとしてるお母さんから想像もできない力で、いつものようにのほほんと笑いながらやられるから、ここは地獄かと錯覚したよ?
そのあと、神田家にはお母さん最強説が浮上しました。
「……おは、よう……。」
「わ、わぁ……。悠妃、声かすれてるよ……?」
「……なにがあったんだ?」
「うわぁ……、悠妃チャンどうしたの?」
朝、教室のドアを開けいつものように皆に声をかけると、このように。
なんだなんだ、突然。
「……なにが?」
「無表情の中に疲労が……。」
「本当にそれだよ。」
無表情の中に疲労ってなにさ。
そしていつもいってるけど、私は無表情じゃない。
ただ表情筋が仕事しないだけで。
昨日家であったことを話すと、お母さんを知ってる杏里とナオは少し顔を青くした。
「……い、意外だな。」
「…………ふぉう……。」
「え、なになに。悠妃チャンのお母さんってどんな人?」
柊馬はまだ私のお母さんに会ったことないから、普段のことをスマホの中の写メを見せながら説明した。
ちなみに写真は東京に引っ越してきたときのだ。
それを見た三人の反応は、少し腑に落ちないぞ。
「……悠妃ってお父さん似だね?」
「あぁ、そっくりだな。」
「ネ、主にこの無表情さがね。」
…………そこじゃなくてお母さんを見てよ。
そして柊馬!何度も言ってるけど、無表情じゃなくててーーーーーー。
そんなこんなで初日と次の日の朝であったけど、毎日繰り返すうちに慣れ、だんだん体に馴染んできた。
一ヶ月もすれば体力もだんだんつき、マッサージも自分で出来るようになった。
……これは本当にお母さんにやらせてはいけないからもう本当に必死に覚えたのをここで言っておきますよ。
GW明けが仮入部終了。
それまでに、一人、二人と辞めていく子がでて、最後まで残ったのはたったの五人だった。
これには私も驚いたけど、先輩方はいつもの事だと平然としていた。
よく見れば、先輩方の学年も多いわけじゃないですね。
「はい、じゃあ今日から部室を使ってね。」
「「はい、ありがとうございました。」」
本入部届けを松木先生に提出して、職員室を後にした。
まだ朝のホームルームも始まってない時間。
私たちは早く出したいから、と昨晩杏里とメールで早くに来る約束をしたんだった。
結果は良好。
誰よりも早く出すことができた。
松木先生が来るのを待ったから、当たり前といえばそうなんだけどね。
「とうとう入部したねぇ。」
「そうだね、……これからだ。」
「……うん。頑張ろうね。」
私たちは教室に向かう廊下で、決意を新たにした。
「じゃあ、今日からここを使ってね。」
「「「「「はい。」」」」」
私たち一年は部室で自分のロッカーを与えられた。
まだダンス部の練習場がある第一体育館は建ててそんなに経ってないから、とても綺麗。
ロッカーはもちろん、部室だって全て綺麗。
私たちはさっそくそのロッカーを使い、着替えを済ませ練習場へ急いだ。
「……はーっ、今日もハードだったねぇ。」
「……そうね。」
休憩時間、私たち一年は固まり体を休めていた。
「こんなもんでへばってたら続かないわよ。」
「ふふ、でもハードだったものね。」
「……私も、少し辛い……。」
私と杏里の他に、ダンス部の一年はあと三人。
少し気の強い派手系美人の安藤美嘉。
少し言葉はキツイけど真は通ってる。
小学校の頃からダンス部に入っていたらしく、うまい
。
皆を優しく見守る、お母さんみないな新山朋香。
いつも笑顔で、優しくてあったかい。
美嘉の幼なじみらしい。いいコンビだよね。
私と同じであまり表情筋が仕事しない、少しミステリアスな七瀬和泉。
口数が少なく、よく何を考えているかわからないけど、ダンスしてるときは目がキラキラしてる。
私たち五人で、ダンス部一年生。
個性豊かでバラバラだけど、それでも仲良くなれるって思ってる。
さぁ、とりあえず練習再開しようか!




