3.温泉地のにぎわい
「思ったよりもにぎわっているところだな。」
若い女性向けの装飾品店や若者向けのパブもある。
近くに市場があるらしく、多くの人でにぎやかで活気があった。
子供連れの買い物客いるから治安も悪くないのだろう。
温泉を目当てにした療養地だと聞いていたから、静かな年配者が多い地を想像していた。
「研究所ができてから、若者が増えて活気が出てきたと屋敷のものが言っていましたよ。」
同行しているアーサーが答えた。
父王に研究所の視察を命じられてから1週間。
僕たちは視察のために出発した。
同行者は僕にいつもついている近衛兵を含めた10人程度。
もちろんアーサーも一緒だ。
おばあ様の屋敷に居候の身となるから先ほどご挨拶に伺ったが、治療中ということで面会できなかった。
ちなみにおばあ様はひざが悪い。冬になると、関節の痛みが強くなるようで、父が王になってからは療養にでることが多くなっていた。
ここ数年は特にひどいらしく、立ち上がるときには杖が必須、王宮内を移動するときには車いすが必要であった。
おばあ様に会えないのなら…
視察は明日からというわけで、お忍びで街に出てみたのだ。
「家族で移動してきているという家も多いでしょうから、女性もののお店も充実していそうですね。治安もいいのでしょう。」
もう一人の同行者カールが答えた。
カールも近衛隊所属で僕やアーサーと同年代。
落ち着いた茶色の髪に緑の目をしている。
侍女の話によると、騎士の中では珍しくかわいい系であるらしい。
近衛隊のなかでは、アーサーとともに令嬢の人気を二分していると言われる色男だ。
(…しっかし、どこにいってもこの面子だと、目立つよな…)
年齢が近いこともあって、普段のフレッドの護衛にはこの二人とでることが多い。
お忍びのときもだ。
下手に隠すとよけい目立つとのことで、衣服は行く土地に合わせるが容姿は特にいじっていない。
目立つ容姿の二人を連れていて、フレッド自身はあまり気にしていないが、彼も金髪碧眼でイケメンだと国民に大人気である身だ。
どこにいっても、ちらちら視線を感じることになるのだ。
王都ほど人が多いし、目立つといっても、他に紛れてしまうのだが…
「しかし、このぐらいの人だと、余計目立ってしまうみたいですね。」
「昼間だからな。どうしますか?でん…フレッド。」
アーサーのやつ言い間違えやがった。
普段もフレッドでいいといっているのに、騎士の立場だからといって態度が頑ななせいだ。
アーサーが態度を変えてから、昔はそんなでもなかったのに…と落ち込んだこともあったが、アーサーにも立場がある。
しょうがないこともあるのだろう。
さみしいことはさみしいが。
「フレッド?どうしました?」
ふといろいろ考えていたら、カールに声をかけられてしまった。
しかし、もう少しゆっくりいろいろ見たかったが仕方がないだろう。
「…この通りをまっすぐ行って、高台の公園に行こう。そこから街が見渡せるんだろう。その方が、中心街よりも人は少ないはずだ。」
「それもそうですね。」
「天気もいいから、いい眺めだろう。」
護衛の二人の同意を得られたので、移動することにした。




