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88話─任務完了、その後に

 レクペルを打ち倒したユウたちは、その後も度々現れる黒太陽と影人間……そして、リンカーナイツの刺客である異邦人たちと戦いながら任務を続けた。


 途中から帰還したチェルシーとミサキが第二陣として加わり、ルケイアネス王国各地にいる生存者たちを救出していった。任務を始めてから、一週間後……。


「よし、これで生存者を全員ガンドラズルに送ることが出来たな。パラディオンの諸君、ご苦労だった! 君たちのおかげで尊い人命を守ることが出来たよ」


「ふう、なんとか無事にやり遂げられたわ。黒太陽が鬱陶しいったらなかったわね、ホント」


 無事任務を達成したユウたちは、サーズダイル跡地に集まりギルド職員から労いの言葉をかけられる。報酬を受け取り次第、現地解散となるのだ。


「ボウズ、楽しかったぜ? お前との任務はよ。オレァまたソロでの活動に戻るが……」


『あ、メモ……通話番号?』


「オレのマジンフォンの番号を渡しとく。何かあったら呼びな、手助けしてやる。お前といると退屈しなさそうだからな」


「あら、ありがたい申し出だこと。……近々、また力を借りることになるかもね。その時は頼むわね、グレイシー」


『この一週間、ありがとうございました。一緒に働けて楽しかったです!』


「……ハッ。前世を考えりゃ、オレも随分フヌけたもんだ。じゃあな、またどっかで会おうぜ。お互い生きてりゃ、な」


 報酬を受け取った後、そう言葉を交わしグレイシーは魔法陣に乗って去って行った。お礼を言ったユウたちも、魔法陣を使いニムテへ帰る。


「久しぶりの我が家、一週間ぶりね~。帰ったらお掃除をしておかないと」


「オヤ、珍しいデスね。シャロシャロがお掃除やる気満々デスマス」


「すでにイエローカードを食らってる見だからねえ、フフ。次掃除をサボったら大変なことになるから必死なのさ」


「もう、ミサキったら他人事だと思って……」


『????』


 以前あったマリアベルとのアレコレを知らないユウは、首を傾げ疑問符を浮かべる。知らなくていいのよと優しく釘を刺し、シャーロットは話を打ち切った。


「この話はもうおしまい。掃除をしたら食材の買い出しに」


「やあ、シャロ。久しぶりだね、元気そうで何よりだよ」


「元気、一番。マリス、嬉しい」


「ええええええ!? お、おおおおおおおお母様!? それにマリスのおば様までぇぇぇぇぇ!?」


 玄関のドアを開け、シャーロットを先頭に居間へ入る。誰もいないはずの居間には、二人の女性がいた。一人は、褐色の肌と銀色の髪を持つ凛々しいエルフの女性。


 もう一人は、どこか眠たそうな顔付きをした馬獣人の女性。どうやら、エルフの方がシャーロットの母親らしい。まさかの事態に固まる娘をよそに、エルフの女は座っていたソファから立ち上がる。


「お初にお目にかかるよ、パラディオンの諸君。私はテレジア・オーレイン。シャロの母にして、十二星騎士の一角【双児星】さ」


「マリスはマリス。コリン、マリスの夫。十二星騎士、【人馬星】。よろしく」


『は、はい。こちらこそ……。それにしても、どうしてお二人はここに?』


「ああ、アタシとミサキが依頼してさ。来てもらったんだよ。例のベルメ」


「ちょっとチェルシィィィィィ!? そういう大切なことを何で! この一週間! 私に言わなかったのかしらぁぁぁぁぁ!?」


 テレジアとマリスは、ユウたちに自己紹介をする。お辞儀をした後、ユウは何故シャーロットの家にいるのかを尋ねる。すると、代わりにチェルシーが答えた。


 寝耳に水の事態に、シャーロットは寄生を発しながらチェルシーに飛びかかる。こめかみに拳をぐりぐりと押し当て、万力のように挟み込んでお仕置きを行う。


「うごあああああ!! オメェのおフクロさんに頼まれたんだよ、驚かしてやりたいから黙っててほしいってよぉぉぉ!! ギブ、ギブ! 頭が、頭が壊れるぅぅぅぅ!!」


『シャ~ロちゃん、あんまりいじめないであげなよ~。ボクたちを呼びにいろいろ頑張ったんだしさ~』


「? どこから声が……ユウくん、ではないよね?」


「ああ、今の声は私の双子の妹……アニエスのものさ。私とアニエスは、一つの肉体に二つの魂が同居していてね。こうやって……」


「入れ替わることが出来るのだー! やっほーシャロちゃん、元気してる~?」


 お仕置きをしているシャーロットに、誰のものでもない声がかけられる。ミサキが不思議そうにしていると、テレジアに異変が起きた。


 顔立ちが大人びたものから子供っぽいものに変わり、双子の妹であるアニエスに肉体の主導権をシフトさせたのだ。それを見て、ミサキは興味を惹かれている。


「へえ……星騎士の話はいろいろ聞いているけれど、こんな摩訶不思議なことを出来る者もいるとはね」


「ま、それは置いといて。どうしたの、お母様にマリスのおば様。チェルシーたちに依頼されたって……」


『順を追って話そう。数日前、リオくんから私たちに連絡があってね。暗域の深部にいるベルメザなる異邦人を、どうにか表層に追い出してほしいと』


『え、パパから?』


「おう、あの方はフォルネシア機構の手伝いしてるからさ。アタシらが掛け合っても動かねーだろうから、代わりに掛け合ってくれるよう頼んだんだよ」


「私たちが尋ねた日、運良くリオ様が機構での仕事をしに来てね。これ幸いと頼んでみたのさ」


 何故にシャーロットの母たちが家にいるのか。その理由は、至ってシンプル。リオ経由で届いたチェルシーたちの依頼に応え、ベルメザを暗域の表層に引きずり出すことに成功したのだという。


「あいつ、弱い。引きずり出す、簡単。第一階層世界、闇の瘴気弱い。大地の民、複雑な対策いらない。すぐ乗り込める」


『ってわけで、例の人物はコリンくんが所有してる無人のコロシアムに閉じ込めてある。マジンフォンがあれば、私たちが始末してもよかったんだけどね』


「あれ、シショーですら貰えてないんだよ。『お主らには星騎士の力があるから不要じゃろう』だってさ。あの猫ババア、けちんぼなんだから」


『こら、アニエス。悪口はいけないよ、相手は地獄耳の持ち主……遠く離れた大地にいてもたぶん聞こえてるよ?』


「悪口そのものを咎めてください、お母様……。こほん、とりあえず事情は分かりました。協力してくれてありがとうございます、お母様たち」


 双子とマリスの協力により、人知れずベルメザは深層から表層へと引きずり出され。現在は厳重な警備の元、コリンが所有する建物内に閉じ込めてあるらしい。


 転生して逃げられるのを防ぐため、そしてチェルシーが因縁を終わらせるため。わざわざ生け捕りにしてくれたのだという。シャーロットは、頭を下げ感謝する。


『いいのさ、我が子の役に立てればそれだけで親は嬉しいものだよ。ねえ、アニエス』


「そうそう、シャロちゃんを産んだ時に表に出てたのはお姉ちゃんだけどさ。ボクの子でもあるわけだからね、ダブルママでパワー二倍だよ!」


「オー、美しい親子の愛情デース」


「これ、渡す。闇の瘴気、遮るお守り。これ使う、暗域でも活動出来る。でも、あまり深く潜る、ダメ。濃い瘴気、対応出来ない。逃がさず、仕留めろ」


『ありがとうございます、マリスさん。これで、どうにかベルメザを倒す算段がつきましたね』


 微笑ましい親子の一幕をよそに、マリスは手作りのケンタウロスを模したお守りをユウたちに渡す。特殊な糸を編んで作られたお守りを手にしただけで、力が湧き上がる。


 再度ベルメザに逃げられれば、彼女らの助力が水の泡になる。必ず一戦で仕留める……そう決意を固め、ユウは決戦の日を翌日に定めた。黒太陽の主との決着をつける時は、近い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらず自宅の防犯が笊な所があるけど(ʘᗩʘ’) 来るのが身内では文句も言えん(´-﹏-`;) ましてや最初に来たのがあの人物ではな(⌐■-■)
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