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85話─馬上の攻防戦!

『よーし、早速戦闘さいか……わひゃっ!?』


「乗れ、近くをウロチョロされてると邪魔だからな。お前も踏み潰されたくないだろ?」


『そ、そうですね……それは嫌です』


 打倒レクペルを成し遂げるべく、気合いを十分に入れるユウ。そんな彼の元に接近し、首根っこを掴んで持ち上げるグレイシー。


 自分の前に座らせ、魔力を流し込んでユウが掴むための取っ手を鞍の前部に作り出す。これにて、戦いの準備が完全に整った。お互い銃使いなので、二人乗りでも邪魔にならない。


『よぉし。さあ、気を取り直して……行きますよ! 【庇護者への恩寵】発動!』


『庇護者への恩寵を与えます。動体視力及び体感バランス、反射神経を強化します。さらに寒さと斬撃への耐性を向上させます。おまけに、馬の持久力とスタミナ回復速度を強化します』


「へえ、これが噂の。いいねえ、ワイルドジャックまで……ん!」


「そちらが仕掛けぬのであれば、我から行かせてもらおう! ぬぅん!」


 久しぶりの共闘を円滑に行うため、自身のチート能力を発動するユウ。その直後、それまで泰然と構えていたレクペルが動き、攻撃を仕掛けてくる。


 ユウたちの準備が終わったと判断し、先制攻撃をしてきたのだ。取っ手をしっかり握るよう伝えた後、グレイシーは愛馬の脇腹を軽く蹴り合図を送った。


「ハッ、騎馬戦でもやろうってか? 望むところだ、ついてきな! どこまで併走出来るか試してやるよ!」


『わひゃぁぁぁ!! は、速いですぅぅ!』


「面白い。アストラルI、疾走せよ!」


「ブルルルルルル……!!!」


 ワイルドジャック号を走らせ、レクペルの攻撃をかわしたグレイシー。相手を挑発した後、町の外にある雪原へと駆けていく。レクペルは挑戦を受け、追走を始める。


『追ってきてますね、とりあえずこれでシャロさんたちはあの影たちの相手に専念出来ますよ!』


「ああ、後はオレらがあの鎧野郎をぶっ倒しゃあいい。……奴め、速度を上げてきてるな」


『え、後ろを見てないのに分かるんですか?』


「長年馬に乗ってると分かるのさ。肌で感じられるようになるんだよ、相手の速度、動き方、位置……その全てがな!」


 そう口にした直後、グレイシーは右手を手綱から離す。左脇へと腕をスライドさせ、銃を後方へと向け前を見たまま発砲した。彼女と会話するため後ろを見ていたユウは、弾丸がアストラルIに直撃するのを見た。


『わ、凄い! 前を向いたまま弾を当てるだなんて!』


「……撃ったのは三発。ヒット音は一回。揺れで軌道がブレたな……二発外したが、より相手の位置を把握出来た。次は全弾当てるぜ」


『ええ、ボクもお手伝いし……! 気を付けてください、相手が加速しました! 横並びになるつもりです!』


「ハッ、面白え。いよいよガンマンと騎士の騎馬戦が始まるぜ!」


 手応えはあったが、致命傷には至らない。アストラルIはグングン加速していき、ついにワイルドジャック号と横並びになった。その瞬間、レクペルが攻撃を仕掛ける。


「ようやく追いついたぞ。挨拶代わりの一撃を受けてみよ! スピンバントル!」


「来た、伏せなボウズ!」


『はいっ!』


 素早くハルバードを突き出し、先端の槍身による刺突攻撃を放つ。グレイシーの叫びに反応し、ユウは素早く身体を前に倒して攻撃を避ける。


 グレイシーは身体を反らして攻撃を避け、ワイルドジャック号に新たな指示を与える。相手から距離を取り、ハルバードの射程から逃れる腹積もりだ。


(奴はオレの左に位置している……。得物を持ってるのは右手、持ち替える必要があるな。ほんの少しだけでいい、時間を稼げりゃあいいんだが……)


「逃がしはせん、お前の狙いは見えているからな! 銃の持ち替えはさせぬぞ!」


(無理そうだな、仕方ねえ。ならプランBで行くか!)


 ついでに、スムーズに攻撃を行えるよう銃を左手に持ち替えようとする……が。その狙いはバッチリ読まれてしまっており、ピッタリ追随されてしまう。


 距離を離せない以上、敵の攻撃に対処出来るように馬を操るのに集中しなければならない。そこで、彼女は自身による攻撃を諦めユウに託すことに。


「ボウズ! オレァワイルドジャックを操るのに集中する、死ぬ気であいつを引き離してやっからお前が攻撃をブチかましてやれ!」


『はい、分かりました! トラッキングマガジンを使って攻撃を続行します!』


「我が斧刃より逃れることは叶わん! グランデススイング!」


 ユウがファルダードアサルトを構えたその瞬間、レクペルはさらにアストラルIを加速させ距離を詰める。そして、ユウとグレイシー、ワイルドジャック号を纏めて葬らんとハルバードを薙ぐ。


「死ねえぇい……なにっ!?」


「ハッ、随分単調な攻撃じゃねえか、え? その程度ならよぉ、こうやって避けられんだよこっちは!」


「ヒヒィィィィーーン!!!」


『わひゃああ!? と、跳んだぁぁぁ!?』


 攻撃が迫るなか、グレイシーは手綱をピシャリと打って合図を送る。直後、ワイルドジャック号は大きくジャンプしてレクペルの攻撃を回避してみせた。


「今だ! 撃ちなボウズ!」


『ハッ! はい、行きますよ! スネークレイン!』


「来るか……ぬうっ! なかなかにやりおる、これは楽しめるな」


 予想外の回避方法に、ユウもレクペルも唖然としてしまう。そんななか、グレイシーの声かけでユウは我に返る。即座にファルダードアサルトを連射し、レクペルとアストラルIを押し返す。


 自身の攻撃を華麗にかわし、反撃に繋げてきたグレイシーの手腕。敵ながら天晴れと、レクペルは賛辞を送る。その間に、グレイシーは愛馬を加速させ距離を離していく。


「よくやった、おかげで距離を稼げる。こうなっちまえばこっちのもんだ……よっと!」


『また相手が距離を詰めてきてます、どうしますかグレイシーさん』


「任せろ、射撃も乗馬も……オレに勝てる奴ァいねえってのを教え込んでやるさ! スティンガーショット!」


 レクペルが追い付くまで猶予がある。そう判断したグレイシーは、再度プランAへと切り替え銃を左手に持ち替える。そうして、ハチの毒針の形をした弾丸を放った。


「来るか、だが我の鎧とアストラルIの装甲は簡単には砕けぬぞ!」


「ああ、だろうな。だがよ……知ってるか? ハチの武器はパワーじゃねえ。カクテルのように複雑に混ざり合う猛毒なんだぜ!」


「ブル……ル、ヒィィン!?」


「!? どうした、アストラルI! まさか今の攻撃が……!?」


 弾丸が直撃するも、アストラルI持ち前の装甲の前には無意味。そう思われた矢先、異変が起きる。着弾した箇所を中心に、装甲が腐食し始めたのだ。


「ハチはあらゆる毒素を集めブレンドする……酒のようにな。そうして生まれた複雑怪奇な毒は、オレですらどんな効果をもたらすのか分からねえのさ」


「やってくれるではないか。なれば、アストラルIが限界を迎える前に仕留めてくれようぞ! むぅぅん……ライトニング・ピアッシング!」


『グレイシーさん、来ます!』


「チッ、ワイルドジャックを狙ってきたか! しゃあねえ、相棒を喪うのはごめんだ。ボウズ、跳べ!」


 アストラルIをやられた以上、相手の足を奪わねば圧倒的な不利に陥る。そう判断したレクペルは、ワイルドジャック号へとハルバードを投げ付けた。


 大切な相棒を殺されるわけにはいかないと、グレイシーはユウ共々跳躍する。その瞬間、魔法で愛馬を厩舎へ転移させて辛くも攻撃から逃れた。


「ブル、ブルル……ヒウッ!」


「限界か……ここまでご苦労だった、アストラルI。よく休め、ここからは我一人でも十分なり」


「ハッ、二人を同時に相手取るつもりか。面白え、時代遅れの騎士なんぞがガンマンに勝てると思うなよ」


「時代遅れ? フッ、それこそ片腹痛い。弾丸が尽きれば丸腰も同然の銃使いなぞ、我が恐れるに足らんわ!」


『むっ、言ってくれますね。なら教えてあげますよ、ボクたちガンナーの怖さを!』


 両陣営共に下馬し、雪原にて相対する。魔法で手元に戻したハルバードを構え、ユウたちを見据えるレクペル。戦いは今、第二ラウンドへ突入した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 銃器の誕生と進化によって騎士の時代が終わりを告げたのは歴史が証明してるけど(ʘᗩʘ’) ここに侍かぶれが居なくて良かったな(٥↼_↼) 話が拗れてる頃だ(⌐■-■)
[一言] まだ決着と行かぬか・・・これは手を焼きそうですな。所で、ヒロインにならず前作のヘルガみたいな頼りになる助っ人ポジになりそうなグレイシーですが・・・戦闘力(おっぱいの大きさ)はいか程で?
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