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76話─かつての仲間は今日の敵

 シャーロットやミサキ、ブリギットが次々と敵を撃破していくなか……ユウは滅びたサーズダイルにて激闘を繰り広げていた。かつての仲間のなれの果て、アストラルHと。


『リリアルさん……どうしてあなたがこんなことになったかは分かりません。でも、かつての仲間として……楽にしてあげます。それが、唯一ボクに出来ることですから』


「えー? 違うよー、ここで死ぬのは……お前だよ、ユウ。お前のせいでアタシたちは苦しまなくちゃいけなくなったんだから!」


 ユウの放つ弾丸をふらふらした動きで避けた後、アストラルH……リリアルは生前の口調で少年を糾弾する。だが、そんな非難などユウからすれば知ったことではない。


 どのような経緯でリリアルがアストラルに改造されることになったのかはユウには分からないが、彼女らの過去の言動からロクでもない理由だろうと考えていたのだ。


『あなたに何があったのかは知りませんが、ボクに八つ当たりされても困ります。……ああ、嫌ですね。昔のことを思い出してしまいました……』


 リリアルが投げてきた赤色のチャクラム四つを避けながら、ユウはかつてラディムたちのパーティーにいた頃の出来事を思い出す。


 かつての仲間三人のうち、もっともユウをこき使っていたのがリリアルだった。依頼の手続きから日常の細々とした雑務まで、あらゆることをユウにやらせていたのだ。


『ねーユウ、アタシの代わりにこの書類書いといてー。アンタならすぐ終わるでしょ?』


『ま、またですか? これはリリアルさんが書いて提出しないといけな……いてっ!』


『っさいわね、新入りのクセにアタシに刃向かうつもり? はー、生意気。罰として買い物もやってね、サボッたら殴るから!』


『あ、リリア……はあ……』


 リリアルは口も手も出してくる、意地の悪い存在だった。イエス以外の返答ですぐ不機嫌になり、ユウに暴言を浴びせたり殴ったりとやりたい放題していた。


 当然、ラディムたちが助け船を出してくれるはずもなく。むしろ、仲間三人から何かにつけていびられる日々を送っていたのだ。


「うるさい……! お前には責任を取ってもらう! アストラルG、ウェポンラックオープン!」


「……了解」


 リリアルの命令を受け、離れた場所で待機していたもう一体の敵……アストラルGが動き出す。敵への警戒心を強めたユウは、一旦距離を取ってアストラルGを改めて観察する。


 獣のように四足歩行の態勢を取り、顔には黒いガスマスクを付けている。それだけでも不気味だが、一際目立つのが背中に載せている巨大な箱型のウェポンラックだ。


 灰色のウェポンラックの側面が開くと、リリアンがテレポートしてアストラルGの側に移動する。ユウは射撃で妨害を試みるも、不可視のバリアに阻まれてしまった。


『攻撃が効かない……!?』


「ざーんねん、アストラルGは常に強力なバリアを展開してるの。元になった異邦人のチート能力でね。だから、側にいれば無敵ってわけ!」


 驚くユウに向かって、得意気に語るリリアル。ウェポンラックから引っ張り出してきたのは、炎を纏う赤い鞭だった。魔法でチャクラムを手元に呼び寄せ、攻撃態勢に入る。


「さあ、覚悟してね。このヒートスマッシャーで叩き潰してあげるから」


『そうはいきません、ここであなたとアストラルGを倒します。それがボクの為すべきことですから!』


【0・0・0・0:マジンエナジー・チャージ】


『ビーストソウル、リリース!』


 ユウはマジンフォンを操作し、銃の魔神の姿になる。リリアルたちを倒すべくアドバンスドマガジンを装填し、反撃に出ようとするが……。


「そうはさせない、これでも食らえ! リングシュート!」


『っと、またそのチャクラムですか! 鬱陶しいので今度は撃ち落とします! こゃーん!』


 そうはさせまいと、リリアルがチャクラムを放ち妨害する。ユウは後ろに跳びつつ、グランザームとの修行で鍛えた動体視力を用いターゲットを目で追う。


 そして、不規則な軌道で飛んでくる四つのチャクラムを全て撃ち落とし粉々に粉砕してみせた。ここまでは順調だったが、そこにリリアル本人の魔の手が迫る。


「やるじゃーん。でも、着地した瞬間は隙だらけだよねぇ! 食らえ、ヒートスマッシュ!」


『くっ……あつっ!』


 即座にユウの側にテレポートし、赤熱した鞭を振るうリリアル。咄嗟に両腕をクロスさせ、頭部への直撃は逃れたユウ。だが、熱は防げずダメージを負ってしまう。


 思わず一歩下がってしまったユウ目掛けて、第二撃が放たれる。下がったところで射程圏外に出られないと判断したユウは、逆に勢いよく前進した。


『てやあああっ!』


「むごっ!? この、離れろっての! クソッ、密着されてると鞭が……」


 鞭の弱点。それは、ある程度距離の離れた相手にも有効な代わりに懐に潜り込まれると何も出来ないということ。ユウの低空タックルを食らい、リリアルはなすすべなく押し戻されていく。


『このまま押し込んでってやります! こゃーん!』


「チッ、調子に乗るな! アストラルG、ウェポン射出!」


「了解……ドリルアーム射出」


 どんどん相手を押し込み、アストラルGにぶつけようと突き進むユウ。焦ったリリアルは、新たな武器を使って反撃を試みる。


 アストラルGのウェポンラックが一旦閉まり、今度は正面が開いてドリルが取り付けられた篭手が飛び出してきた。飛んできた篭手を左手に装着し、ユウの背中に振り下ろす。


「オラッ、食らえ! こいつで風穴開けてやる!」


『あぐうっ! くうっ、流石にこれは……こゃん!』


 いくらなんでも、高速回転し始めたドリルを突き刺されて耐えられる者はいない。ユウはたまらずリリアルを突き飛ばし、攻撃を中断して離脱する。


 背中に開けられた穴を再生能力で治しながら、再度飛んでくる鞭を避けていく。戦況は五分と五分の状態に戻り、熾烈な攻防が幕を開ける。


『このっ、お返しです! 今度はボクが風穴を開けてやります!』


「無理無理、全部叩き落としちゃうもんね! ホラホラァ!」


 背中をボロボロにされた恨みを晴らすべく、左腕のファルダードアサルトを連射するユウ。対するリリアルは、鞭を振るい弾丸を叩き落とす。


 その間にも、ユウは距離を詰める。が、一歩進むとリリアルがその分下がり一向に差が縮まらない。リリアルとしては、また懐に入ってこられたら困るからだ。


(とりあえず時間を稼いで、他のアストラルが合流するのを待つ! 複数でボコれば、ユウなんて簡単に始末出来るしね)


 鞭を振るいながら、心の中でそんな皮算用をするリリアル。だが、彼女は知らない。

すでにアストラルBも、EもFも。ユウの仲間たちによって撃破されていることを。


(むう……露骨に時間稼ぎしてますね。仲間が来るのを待っているのでしょうが……おんなじことをしても芸が無いですし、ここは短期決着を狙うとしましょう!)


 対して、ユウは長期戦を避けすぐに決着をつけることを選んだ。仲間たちはどこにいるか分からず、気配をたどっての転移魔法で合流出来ない。


 だが、アストラルたちはその気になれば簡単に集まれる。シャーロットたちが負けるとは思っていないが、それでも楽観的に考えることはしない。


 戦場では、いつだって予想外のことが起こりうる。それをユウは身をもって知っているのだから。


『悪いですが、一気にケリを付けさせてもらいます! ビーストコンバート!』


「!? 姿が変わっ……てはやっ!?」


【モータルエンド】


『さあ、食らいなさい! イノセンスインパクト!』


 拳の魔神に姿を変えたユウは、相手の虚を突きブースターを吹かして加速する。そのまま懐に潜り込み、必殺のパンチを放つ。無防備なリリアルの懐に、拳が放たれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ザマァ要員でも最近は改心の見込みもある奴も多かったが(ʘᗩʘ’) 見込みはなさそうだな(´-﹏-`;) 早く始末して片付けんと(⌐■-■)
[一言] 駄目だ、倒しきれてないフラグだこれ・・・
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