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69話─死天王との修行!

「と、いうわけでだ。突然で済まないが、彼らの鍛錬に付き合ってはくれないだろうか」


「ウッス! よろっしゃーす!」


「どこかの体育会系の人かな?」


「ホント、適当な返事もここまでくると逆に立派ね」


 演習場に足を踏み入れたユウたちは、ネクロ旅団の最高幹部たる死天王と邂逅する。彼らを待ち受けるのは、アーシアを含む四人。


「フッ、元気なのはいいことだ。それにしても仇討ち、か。並々ならぬ決意を燃やすのもよく分かるよ」


 最初に声をかけたのは、雷の厄災を司る死天王の司令塔リリン。艶やかな褐色の肌が、どこか妖しげな色気を漂わせている。


「おう、思い出すなぁ。アタシもむかーし、おフクロの仇討ちをしたもんだ。チェルシーっつったか、あんたも無事仇をぶっ殺せればいいな!」


「そうですわね、わたくしも応援していますわ。バッチリ実力を向上させてあげましてよ! オーホホホ!」


 二番目に発言したのは、地の災厄を司る死天王の切り込み隊長シャスティ。藍色のシスター服を身に着け、スキットルに入れた酒をガブ飲みしていた。


 その次に高笑いしたのは、炎の厄災を司る死天王のサポーター……アンジェリカ。ショートカットにした銀髪を手でかきつつ、得意気に絶壁の胸を張っている。


「というわけでまあ、全員やる気に満ちているというわけだ。もちろん、余も含めてな。我らの修行は厳しいぞ、最後までついてこれるかな?」


 最後に発言したのは、水の厄災を司る死天王の参謀……アーシア。闇の眷属特有の紫色の肌を持つ、知略と武術に長けた最強の戦士。


 シャーロットやチェルシー、ブリギットにミサキは彼女らから教えを授かることに。一方のユウは、ヘカテリームとの修行だ。


「個別修行用のエリアを解放しておいたからそこを使っていいわよ。派手に暴れて壊しても問題ないわ、自動修復装置が稼働してるから」


『ありがとうございます。ところで、アゼルさんはどちらに?』


「彼ならあそこだ。ほら、今模擬戦闘しているのが見えるだろう?」


 リリンの指し示す方を見ると、髑髏の装甲を纏ったアゼルがホロウバルキリーのインフィニティ・マキーナを着た少女と戦っているのが見えた。


 二人とも非常にハイレベルな攻防を繰り広げており、ユウたちはその練度の高さに舌を巻くことに。その隣では、アンジェリカがドヤ顔していた。


「凄いわね、あんな速度で動き回れるなんて相当鍛錬を積んでいるのが分かるわ」


「あっちのホロウバルキリーアーマーを着てるのが、アンネローゼ様の子孫であるイグレーヌだよ。彼女も、ゼルと同等の強さがあるのさ」


 急旋回や突発的なブレーキ等、並みの人間がやれば多大な負荷でダウンするような動きを連発する少女を見ながらミサキが解説を行う。


 彼女もまた、ヒーローの血を受け継ぐ現代の強者なのだ。


「それは凄いデスね、後で手合わせし……オヨッ!?」


「その前に、まずは私との修行を完遂してもらおうか。自動人形(オートマトン)は身体構造上、雷に弱い。というわけで、お前の相手は私だ」


「エー、ビリビリは嫌デスー! ゆーゆー、助け」


「問答無用、一抜けさせてもらうぞ」


「イヤー!」


 白き戦乙女……イグレーヌとの手合わせを所望するブリギットだったが、リリンに抱えられ個別訓練エリアに転送されてしまった。


 早々にリリンが相手を選んだのを皮切りに、他の死天王たちも自分が見込んだパラディオンを選び果てなき修行へと誘う。


「んじゃ、そこのオーガはアタシが鍛えてやるよ。直感だがよ、あんた得物ハンマーだろ?」


「え、分かるのか?」


「おう、筋肉の付き方見てりゃすぐにな。っつーわけで、お前の担当はアタシだ。仲良くやろうぜ、えーと」


「チェルシーだ、よろしくなシャスティ……さん」


「呼び捨てでいい、んじゃ行こうぜ!」


 続いて、何かしらのシンパシーをチェルーに感じたシャスティが相手を選んだ。二人仲良く、和気あいあいとした雰囲気で訓練エリアに向かった。


「残るは私たち二人ね。貴女たちはどちらを選ぶつもりなのかしら?」


「ふっ、貴女のことはアゼル様を通してコーネリアス様から聞いていましてよ。貴女の得物は魔術と弓矢の合わせ技……つまり! 近距離戦闘のスキルが不足している。違くて?」


「う……そうね、お父様みたいに杖術を使えるわけじゃないし……」


「オーホホホ! やっぱりですわ! ならばわたくしが貴女の格闘技術を磨いて差し上げましてよ! 淑女たる者、デコピンで大岩を砕けないと話になりませんわ!」


「そんな淑女はいないと思うよ?」


 ミサキにツッコまれつつ、アンジェリカはシャーロットを選び去って行った。これで、自動的にアーシアがミサキの担当をすることになる。


「残ったのは貴殿か。貴殿のことはあまり知らぬが……実りある修行になるよう努力しよう」


「よろしく頼むよ、アーシア殿。貴女は槍の達人と聞く、ふふ……私の腕に宿る、呪われた白き炎が疼くね……!」


「んん……? まあいい、よろしく頼む」


 中二病全開のミサキに若干戸惑いつつ、アーシアも訓練エリア入りして修行の準備を始める。一人残ったユウは、ヘカテリームと共に転移する。


「さて、私たちも始めましょう。パラディオン……話だけはミサキから聞いてるわ。どんな力を持つのか、見せてちょうだいな」


『お手柔らかにお願いします、ヘカテリームさん! それじゃあ、早速いきますよ!』


【0・0・0・0:マジンエナジー・チャージ】


『ビーストソウル、リリース!』


 砂漠フィールドになっている訓練エリアにテレポートしたユウ。やる気満々なユウは、マジンフォンを起動して拳の魔神へと変身する。


 すでに魔神としての覚醒を済ませた彼は、本来もうマジンフォンを介して変身する必要はない。のだが、やる気を出すルーチンとして一連のムーヴを続けているのだ。


「あらら、面白い姿ね。片腕が大きくなるなんて」


『もっと面白いことをしますよ! チェンジ!』


【トリックモード】


『それっ、ファントムシャワー!』


「! 分身……なるほど、確かに面白いわ。でも、面白いだけ。『太陽』の魔女である私にその程度のトリックは通じないわよ?」


 トリックマガジンを銃にセットし、七人の分身を呼び出すユウ。それを見て目を丸くしたヘカテリームだが、すぐに余裕を取り戻す。


 直後、遙か上空にオレンジ色の太陽が出現する。太陽から発せられる光によって、ユウと分身たちの影がクッキリと浮かび上がった。


『? なにを』


「僅かに影の濃さが違うわね、本物は……そこよ! ソルライトレーザー!」


 ユウが不思議そうにしていた、次の瞬間。太陽から発せられた六つの熱線が、分身たちの心臓を正確に貫く。何も出来ないまま、あっさり分身は消滅してしまった。


『え? ふえっ!?』


「呆けていてはダメ、例え予想外のことが起きても咄嗟に動くクセをつけなさい。実戦じゃ敵は情けをかけてくれないわよ! ソルライトレイン!」


『わわっ! そうでした、グランザームさんにも言われました……ていっ、こゃーん!』


 ヘカテリームに指摘され、我に返ったユウは降り注ぐ熱線の雨を軽やかに避けていく。グランザームとの修行で、肉体面は大きく鍛えられた。……が。


「動きは及第点ね、でも魔術的な防御力はまだまだ……フンッ!」


『!? す、砂が勝手に動いた!?』


「相当名のある武人から薫陶を受けたとお見受けするわ。だから、次は私が魔法によるプロテクトを教えてあげる。月輪七栄冠から直接教授されることなんて滅多にないのよ? 光栄に思いなさい」


『が、頑張りま……あひゃー!?』


 ヘカテリームは、詠唱を伴わない魔法技術である『クイックキャスト』を使い、砂を操りユウを拘束する。そこに熱線を浴びせ、まずはダウンを取った。


『きゅう……』


「安心しなさい、熱線の威力は大幅に下げてあるわ。直撃しても痛くないでしょう?」


『い、痛くはないですけどかなり衝撃がありますよこれ……』


「それくらいはないと避けようって気にならないでしょ? ネクロ旅団の子たちより有情なのよ、これでも。見てごらんなさい」


 ヨロヨロと立ち上がるユウの前に、ヘカテリームは魔法で他の訓練エリアの様子を映し出す。少年の目に飛び込んできたのは……。


『フハハハハ! さあ逃げろ逃げろ! 不規則な落雷を直感だけで避け続けるのだ! これくらい出来ないようでは強くなれんぞブリギット!』


『ヒエー! こんなの無茶苦茶デスよ、加減ってモンをしてくださいよ雷ババアー!』


『あ゛? いい度胸だな、私をババア呼ばわりする奴はタダでは済まさん。雷を四倍にしてくれるわ!』


『アバーッ!?』


「……ね?」


『はい、ボクは凄く恵まれてるんだなあって理解しました』


 とんでもない数の落雷に晒され、絶叫するブリギットであった。あまりにも苛烈な光景を見て、ユウはぎこちない笑みを浮かべて頷くことしか出来なかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「厄災」と「災厄」が混在しているのは何か意図があるのでしょうか?
[一言] 何気に毎度のキャラ扱いだけど(ʘᗩʘ’) スタンダード、ストロングが完成してる所に魔法要素をプラスして新スタイルを目指すのか( ・ω・) しかしレギュラーメンバーが揃って来ただけにソロソ…
[一言] 大人げないぞ雷オババ・・・アバー!
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