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56話─ユウとヴィトラ、再び

『え、まだ復旧作業終わってないんですか?』


「そうなんですよ、フェダーン帝国方面に通じる街道の橋の工事、何者かに妨害されているようで……。原因の究明と排除が済むまでお待ちください。申し訳ありませ~ん」


 二日後、ユウたちはニムテに帰還……出来ておらず、ガンドラズルで足止めを食らってしまっていた。二つほど問題が起きたのだ。


 一つ目は、ガンドラズルとフェダーン帝国を隔てる大河に架かる橋が崩落してしまっていること。二つ目は、橋の復旧作業を何者かが邪魔していることだ。


「参ったわね、ギルドからは橋が元通りになるまではあらゆる方法での通行を禁止するって声明出しちゃったし」


「他の街道でもトラブル起きてんだろ? これあれじゃね、リンカーナイツどもがなんかしてるだろゼッテーよ」


「デスデス、こんなことするのは連中しかいないとワタシも考えてマス」


 ユウたちとしては困ったことに、厳戒態勢を敷いたギルドによる警報が発令されてしまった。橋の破壊、及び復旧妨害の犯人が捕まるまで安全対策のため、方法を問わず付近の通過が出来なくなってしまう。


 ならば、遠回りにはなるが他の街道を使えば……と思いきや。まるでユウたちの帰還を妨害するかのように、別の街道でもトラブルが起きているらしい。


 こうなってくると、もうリンカーナイツの仕業としか思えない。ただでさえ、予定滞在期間をオーバーしてしまっているのだ。これ以上の長居は避けたいのがユウたちの考えだ。


『参りましたね、無理矢理帰ることも出来るといえば出来ますが……』


「まあ、十中八九叱られるわね。ギルドの命令じゃあ仕方ないわ。むしろ、こっちに残って調査を手伝った方がいいかも」


「フ、それはいい考えだね。私たちが……おや? このサイレンは……」


「!? やだ、リンカーナイツ接近の警報ですよこれ! 皆さん、申し訳ありませんが所定の場所へ向かってください! 敵の迎撃をお願いします!」


 ギルド本部にて話し合っていたユウたちの耳に、けたたましい警報の音が響く。どうやら、再度リンカーナイツが攻めてきたようだ。


 目的は恐らく、自力で逃げ延びたユウの捕縛。なれば、迎撃しない理由がない。一同はギルドを飛び出し、街の外へと急ぐ。


『……今のうちに言っておきます。もしかしたら、ヴィトラが来てるかもしれません。もしあいつがいたら……手筈通りにボクは行動します』


「本当は、危険なことはしてほしくないんだけど……あいつを捕らえるには、『ソレ』が一番成功率が高いものね。難儀なものね、まったく……」


 北東にある迎撃ポイントに向かう道中、ユウはシャーロットたちに告げる。この二日、彼はただのんびり街をぶらぶらしていたわけではない。


 いずれ来る魔魂片ヴィトラとの二度目の激突に備えて、準備を行ってきた。その準備の一つが、コリンより託された封魂のランタンの運用法の発案だ。


『大丈夫です、約束します。仮にヴィトラと会うようなことになっても、必ず打ち破って捕まえてきますから』


「ああ、ユウがそう言うならアタシらは信じて待つだけさ。他の連中は任せな、一人残らず叩き潰してくっからよ」


「……ム。みんな、気を付けた方がいいデスマス。前に戦ったハゲ男の気配を感じるデス、あいつもガンドラズルに来ていると見てイイかと」


「フッ、面白いね。確か、倒してもすぐに復活するんだろう? ならば、我が呪われた白き炎で消し炭に……いや、不死鳥だから焼き鳥にしてやろう」


 何やら秘策があるらしく、ヴィトラの捕縛に意欲を見せるユウ。そんななか、ブリギットがユージーンの気配を捉えた。


 二度に渡ってユウたちを苦しめ、ついには敗北させたトップナイトの襲撃。同じ相手へのさらなる敗北は、魔神の一族として恥ずべきこと。


 こちらへのリベンジにも燃えるユウに、ミサキが冗談めかしてそんなことを言う。これには、流石のユウも吹き出してしまった。


『や、焼き鳥って……。絶対美味しくないですよ、筋張ってて』


「ぷふっ! ユウ、お前も言うようになってきたなぁ。え? うんうん、軽口叩けるのはいいことだぜ」


「大方種も割れてるし、四対一なら倒せるかもしれないわ。問題は、相手が何回復活できるのかってことね」


「デスデス、もし無限に復活出来ると仮定した場合面倒なことになるデスよ。モータルエンドはアストラル専用だカラ、普通の異邦人には効かないデスんでね」


 シャーロットたちも、ユージーンへのリベンジをしたい気持ちは同じ。だが、厄介なことに敵のチート能力の全貌が明らかになっていない。


 下手をすれば、不死鳥の如く永久に死と復活のサイクルが可能という最悪のケースもあり得るのだ。そうなれば、勝ち目はほぼないだろう。


「なぁに、大丈夫さ。私たちが力を合わせればね。……別に、奴を倒してしまっても構わないんだろう?」


『……? ええ、そうですが……』


「おっと失礼、このネタは通じないか……日本人なら通じると思ったのに」


『??????』


 ミサキのネタ振りに、サブカルチャーの知識が絶無なユウは残念ながら応えることは出来なかった。残念がるミサキに、ユウははてなマークを乱舞させる。


『! この気配……ユージーンと一緒に来てるようですね、ヴィトラが。プランAで行きましょう、ボクは別行動に移ります!』


「分かったわ、事が済んだら念話を飛ばしてね。それまでは、私たちがユージーンを抑え込むから!」


「作戦開始デス! 腕が鳴るデスよ!」


 もう少しで街を囲む防壁に到着する……というところで、ユウは街の外にいるヴィトラの気配を捉える。事前の想定が当たったため、それに沿って動くことに。


 ユウは仲間たちと別れ、魔力を放出してヴィトラの誘い出しにかかる。今回の作戦のキモは、ユージーンとの分断に成功するかどうか。


 もし失敗したら、今回はヴィトラの捕縛を諦めなければならない。一方、そのヴィトラ自身はというと……。


『フン、あのガキめ。我を誘っておるな、生意気な奴だ。何か策でもあるのだろうがムダなこと、パワーアップした我には勝てぬ』


「待て、ヴィトラ。単独行動は認めん、ミーと共に」


『その必要はない、お前はあのガキの仲間を始末してこい! その後で、肉体を手に入れた我と帰還すればよいだけのことだ』


「……行ってしまったか。仕方ない、こちらはこちらでミッションをさっさと終わらせてしまおう。お前たち、進め! ガンドラズルを陥落させるのだ!」


「ハッ!」


 ヴィトラはユウが自分を誘い出そうとしていることに気付き、単身乗り込むことにしたようだ。ユージーンの制止も聞かず、飛び出していった。


 仕方なく、残ったユージーンはガルドクアッドを駆りながら部下たちに向かって叫ぶ。今回の彼らの任務は、ユウの確保並びにガンドラズルの陥落だ。


「さて、ミッションスタートだ。ここまでは一勝一敗、勝ち越して気分よく目的を達成するとしよう」


 先頭を進みながら、そう呟くユージーン。彼は感じていた。この戦いで、ユウたちとの完全な決着がつくだろうと。三度目の激突の勝敗は、果たして……。



◇─────────────────────◇



『こんなところにいたのか。我をわざわざ誘い出すとは……。勝算があるようだがムダなこと。我が叩き潰してくれる』


『やれるものならやってみなさい! まあ、一度ボクに返り討ちにされてる奴が言っても説得力無いですけどね!』


 数十分後、シャーロットたちと別れ街の北に出たユウはヴィトラと対面していた。彼女を挑発し、自分に向かってくるよう仕向ける。


『フン、我を怒らせるつもりか? 生憎、クチバシの黄色い小僧なんぞの嘲りなんぞで怒り狂うほど我は短気ではない。が……貴様には灸を据えてやる、軽率な発言を後悔させてやろう!』


『来なさい、ボクはこの時が来るのに備えてこの二日間準備してきました。何度来たってこの身体は渡しませんよ!』


『ほざけ、我は力を蓄えよりオリジナルに近くなった! 貴様の肉体を乗っ取るくらい、今の我には訳ないことだ!』


 挑発に対して怒りはしなかったが、癪には障ったようだ。そんな発言を二度と出来なくしてやろうと真正面から突っ込んでいくヴィトラ。


 対するユウは、大きく腕を広げて仁王立ちし、相手を迎え撃つ。距離が縮まるにつれ、ヴィトラの持つ力の強大さを感じさせられることに。


『確かに、あの時よりも力が増していますね。でも、だからって肉体を明け渡すつもりはありません!』


『ならば力尽くで奪うのみ! 覚悟するがよい!』


 ユウとヴィトラ、肉体の主導権を巡る二人の争いが再び始まる。戦いに打ち勝つのは、果たして……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 取り敢えずメタ装備があるから一応大丈夫だろうけど(ʘᗩʘ’) 肝心のフェニックス・マッチョが何処までしぶといやら(⌐■-■)
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