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195話─天の襲撃、地の迎撃

「さあ、行くぞ。一人残らず射ち落とす……まずは一人!」


 巨大ポータルを破壊するため、上空へと舞い上がるユウとミサキ。二人を見送りつつ、ドルトは弓に矢をつがえる。そして、不可視の狙撃中継衛星『バイナリースター』へと矢を放つ。


「ハッハハハァ! さあ、地上に降りてさつりくっ!?」


「なんだ!? どっから矢が飛んでき……あがっ!」


「チイッ、守りを固めろ! 魔法障壁を纏って矢を弾き落とせ!」


 衛星を介し、矢はドルトの射のままに軌道を変えて空高く飛翔していく。そして、射れば射るだけ闇の眷属たちの頭に矢が生えその命を絶たれる。


 地上からは次々と砲弾が撃ち出されているということもあり、闇の眷属の騎士たちは矢の飛来に気付けなかった。一人、また一人と射ち落とされていく。


「よし、これで矢は怖くな」


「ふふ、残念だったね。矢の次は私の剣で屠られてもらおう! 九頭龍剣技、参ノ型……地ずり昇竜斬!」


「うぎゃあっ!」


「な、貴様は!? チッ、もう迎撃が」


『ボクもいますよ! これでも食らいなさい! スネークショット!』


「がはあっ! ふ、二人も……だと……」


 運良く矢と砲弾の餌食になっていない者たちは、全身を障壁の如く分厚い魔力の層でコーティングする。これで一安心……かと思いきや、そうは問屋が降ろさない。


 時間差でやって来たユウとミサキが敵陣の真っ只中に飛び込み、矢を凌いで油断していた竜騎士たちへ攻撃を見舞ったのだ。これには、さしもの闇の眷属たちもたまらない。


「クソッ、初っ端からやられてたまるかってんだよ! お前ら散開しろ、銃のガキはともかく剣士の女は遠距離攻撃出来ねえはずだ、遠くから攻撃して潰しちまえ!」


「フッ、いい判断だ。でもね、得物だけで相手を判断するのはよくないことだよ。出来るのさ、私にも……遠距離攻撃がね。さあユウくん、少し離れていておくれ。この三カ月の修行の成果、チェルシーのように見せてあげようじゃないか!」


『分かりました、ボクは他の敵が邪魔したこないよう露払いします!』


『思いっきりやるがよい。そこまで豪語するのだ、さぞかし凄いものを見せてくれるのだろうと期待しておくぞ』


 ユウたちの武器を見て、まず剣士であるミサキから始末せんとする闇の眷属たち。一斉に距離を取り、魔法や飛竜のブレスで仕留めんと画策する。


 そんな敵たちに対し、ミサキは不敵な笑みを浮かべる。右腕を横に伸ばし、愛刀を斜め下に向けながら魔力を練り上げていく。少し離れたところに移動しつつ、ユウは魔力の濃度に目を丸くした。


『わ、凄く濃い魔力……これは地上に被害が出るかもしれませんね、念のため……チェンジ!』


【ブロックモード】


『それっ、インビジブルプレート! これで様子を見ておきましょうか』


『む、気を付けろユウ。始まるぞ、奴の攻撃が』


「……さあ、見せてあげよう。リンカーナイツとの戦い、そしてこの三カ月の修行で磨き上げた私の剣を! 九頭龍剣技、裏弐ノ型! スターリィライトスラッシャー!」


 地上に攻撃の余波が及ぶ可能性を考慮し、不可視の巨大なプレートを下方に打ち出し守りを固めるユウ。その直後、闇の眷属たちが動こうした刹那。


 ミサキは練り上げた魔力を刀に纏わせ、白い輝きで満たす。そのまま刀を斜め上へと振り上げ、光の斬撃を闇の眷属へと向けて発射した。


「ぎゃああっ! ざ、斬撃を……飛ばし……」


「な、なんて野郎だ……だが! 数はこっちの方が上なんだ、纏めてかかげはっ!?」


『忘れるな、地上には俺や騎士団もいる。そんな魔力のコーティングなど、すぐに適応してブチ抜くさ。今やったみたいにな』


 リンカーナイツとの戦いという長く険しい修行を経て、ミサキオリジナルの剣術……裏の九頭龍剣技が完成しつつあった。そこに、地上にいるドルトの念話と矢が届く。


『諦めなさい、悪しき闇の眷属たち。今ならまだ間に合います、尻尾を巻いて暗域に逃げ帰るならそのまま逃がしてあげますよ』


 ミサキの隠し球に仲間が両断され、さらには魔力コーティング対策を済ませたドルトの攻勢が強まり。闇の眷属たちは数以外の優位性を完全に失った。


 戦意を喪失しつつある彼らに、ユウは最後の慈悲をかける。何も、敵を殺し尽くすことだけが戦いを終わらせる方法ではない。敵を退散させれば、犠牲を出さず勝利出来る。


 戦わずして勝つ、それが時に戦果を挙げるよりも重要となることをユウは父から教えられていたのだ。彼の言葉に、闇の眷属たちは……。


「ぐう……どうする? こんな状況じゃいくら援軍を呼んでもやられるだけだぜ」


「だが、今になってフィービリア様を裏切るわけには……」


「おう、そーいうこった、よーく分かってるじゃねえか。それによお、裏切って逃げようなんてまず無理だぜ。将軍閣下が仕掛けを施してるからなあ!」


 すでに何人かの心が折れかけており、逃亡してしまおうかと悩みはじめていた。が、そんな彼らの後方からよく通る大声が響く。ポータルの中から現れたのだ。


 神々の指輪を奪い、その力を宿した簒奪者たちの一角。かつてユウに宣戦を布告したプラウダーが、前線の指揮官としてその姿を見せたのである。


『来ましたか、プラウダー。相変わらずうるさい声ですね、そんな大声を出さなくても聞こえてますよ』


「よう、久しぶりだなぁ、え? ルネーアが世話になったな、もうアイツはバラし終えたか? ん?」


『生憎、そういう血生臭いことは我らの管轄外でな。知りたいなら、貴様があの世に行って聞いてみたらどうだ』


「ハッ、魔魂片だったか? リンカーナイツ共の忘れ形見風情がイキるんじゃねえぜ。テメェの……おっと!」


「忘れないでほしいものだね、今は戦いの真っ最中だってことをさ! その首、私が貰い受ける!」


「フン、喧嘩っ早いこって。おめぇら、俺が道を開けてやる。さっさと地上に降りて戦果を挙げてきやがれ!」


「は、はいぃ~!」


 ユウやヴィトラとバチバチに舌戦を交わしていたところに、ミサキが飛翔してプラウダーを斬り付けた。攻撃を軽くかわし、不甲斐ない部下たちをプラウダーが怒鳴る。


『何をするつもりかは知りませんが、やらせはしませんよ! チェンジ!』


【トラッキングモード】


『全力で妨害してやります! そーれ、スネークガトリング! こゃーん!』


「いいぜ、来やがれ。今回は顔見せだなんてヌルいこたぁ言わねえ。その目ぇかっ開いてよーく拝みやがれ。光明神の指輪の力をなぁっ!」


 追尾能力を持つ弾丸を連射し、地上へ向かう竜騎士たちを撃墜せんとするユウ。その直後、プラウダーが宿す指輪の力……その全てを解き放つ。


 すると、突如として突風が吹き荒れ弾丸や砲弾、矢を吹き飛ばしてしまう。あまりの勢いに、ユウとミサキはバランスを崩して墜落しそうになるも辛うじて堪えた。


「くっ、この風……気を抜くと地面に真っ逆さまだね、厄介な……」


『それだけではないぞ、奴の部下共はまるで突風の影響を受けていない。敵と味方を識別し、影響範囲を変えられるようだな。流石、神の力なだけはある』


「クハハハハ! その通り、光明神が司るのは大地の恵みと災い! つまり、その力を使えば……こうやってあらゆる自然現象を! 操ることが出来るってわけだ! サーフサイクロン!」


『うわっ!』


 指輪の力で巻き起こした突風に乗り、プラウダーは急加速してショルダータックルを繰り出す。狙うのは、宿敵にして敵の総大将であるユウだ。


「まずはテメェだ! 将を射んと欲すればまず馬を射よって言うがよ、俺には関係ねぇ。さっさと将を討ちゃあ、残りは烏合の衆になっちまうからなぁ!」


『やれるものならやってみなさい! 破壊の力で返り討ちに』


「おっと、そいつは使わせねえぜ。アンチヴェルドコード起動!」


 咄嗟に上昇してプラウダーのタックルをかわしたユウは、終焉の力を解き放ちケリをつけようとする。が、それを見越していたプラウダーは右手に装備していたバングル型のアンチヴェルドコードを起動した。


『ぐっ、またこれを……!』


「ユウくん、ここは私に任せて! 君は地上に向かう敵を、ドルトたちと一緒に食い止めるんだ!」


「させると思うか? 雑兵にゃ興味ねえんだよ、引っ込んで……ぐおっ!?」


「雑兵? 心外だね、三ヶ月前と同じように逃げ帰るとでも? 男子……ではないけれど、三日合わざれば刮目して見よ、と言うからね。あの日のリベンジをさせてもらう、プラウダー!」


『ミサキお姉ちゃん、頼みます! こっちは任せてください、地上の騎士さんたちは一人も傷付けさせませんから!』


 終焉の力の解放を妨害しつつ、追撃を放とうとするプラウダー。そこにミサキが割って入り、妨害装置の効果範囲外にユウを逃がすため行動を開始する。


 今度はミサキがタックルを繰り出し、相手の首根っこを掴んでさらに上空へと飛翔していく。ユウはミサキの無事を祈りつつ、地上へ降下する。


 第二の簒奪者、プラウダーとの戦いが今……始まる。

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まだまだ新ガジェットは出来てないから自力修行に頼るしかない(٥↼_↼)
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