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194話─戦争の時、来たれり

 「お待ちしておりました、ベウゼリス将軍閣下。我ら一同、貴方様を歓迎致します」


「ご苦労だった、ルガンド。フィービリア様より話は聞いている、侵略の下準備を整えてくれたことを感謝するぞ」


 翌日の早朝、簒奪者たちが築いた拠点に一人の闇の眷属がやって来た。現れたのは、白銀の鎧を纏う男。精悍な顔付きと左眉付近の大きな傷痕が、歴戦の戦士であることを示している。


 男……ベウゼリスは短く刈り揃えた緑色の髪を撫でた後簒奪者たちのリーダー、ルガンドへ労いの言葉をかける。フィービリアの右腕たる将軍の到着に、闇の眷属たちは沸き立つ。


「さて、状況についてはすでに聞いている。聞いてはいるのだが、何故ルネーアがこの場にいない? フィービリア様はお前たち六人には待機を言い渡していたはずだが」


「ハッ、どうなら手柄を独り占めしようと先走り……ユウ・ホウジョウとその一味に敗れ捕らえられたようです。監督が行き届かず申し訳ありません、将軍閣下」


「やれやれ、仕方のない奴だ。やはり、あやつのような協調性の無い者は実力があるとはいえ精鋭に加えるべきではなかったか。まあいい、奴がいなくとも侵攻作戦に不自由はせん。部隊長を全員召集せよ、作戦会議を始める」


 口を覆うヒゲをゾリゾリと撫でながら、ルガンドの報告にため息をつくベウゼリス。すぐに思考を切り替え、ルネーアのことは秒で忘れ去ることを選ぶ。


 彼の目的は、フィービリア軍の総大将としてクァン=ネイドラを征服すること。余計なことを考えてる余裕はカケラも存在しないのだ。


「すでに会堂に召集しています。が……会議の前に一つ、不穏な情報がありまして。どうやら、以前理術研究院を滅ぼしたサモンマスターなる者たちがこの大地にいると斥候が報告しており……」


「……サモンマスター、か。話には聞いているが……生憎、理術研究院の者ら以外でかの者たちと刃を交えた闇の眷属はほとんどいない。その実力、我らを阻むものかどうか……未知数だな。それに、結界が反転したというのにどうやってこの大地に入り込んだ?」


「そこも含め、現在斥候たちが情報を集めています。もうしばらくお待ちいただく必要があるかと」


「ま、よい。逆に言えば、斥候が戻るまでゆるりと作戦を練れるというわけだ。会堂に案内しろ、ルガンド。サモンマスター……そして、パラディオンたちを滅ぼすための作戦会議を始める」


 不確定要素を頭の片隅に入れつつ、ベウゼリスはルガンドに案内されて拠点の中へと進む。ユウたち連合軍との決戦の時は、すぐそこまで迫ってきていた。



◇─────────────────────◇



『……まだ敵が現れたとの報告は来ていませんね。もうそろそろ動き出す頃合いかと思っていましたが』


「恐らく、この大地をどう攻め滅ぼすか作戦会議をしているってところかな? 動きが無いのはいいことさ、こちらも万全の態勢で迎え撃てるからね」


『そうですね、ミサキさん。……ところで、どうしてボクはミサキさんに耳かき……こやあぁぁぁ』


「ふふ、私からのご褒美さ。ユウくんはいつも一生懸命だからね、もうすぐ決戦も近いしリラックスしてもらおうと……ん、次は右耳だ。ごろんてしてごらん」


 一方、ユウはミサキと共に対フィービリア軍総司令本部と化したパラディオンギルド本部にてイチャイチャ…もとい待機していた。いつ敵軍襲撃の報が来てもいいよう、準備しているのだ。


 現在、シャーロットたちは援軍である星騎士やサモンマスターと組んで各国の防衛に当たっている。敵がどう攻めてきても対応出来るよう、厳正にメンバー割り振りを行い。


「……随分とまあ、仲がいいんだな。キルトとルビィさんの日常風景そっくりだ」


『仲良しっぷりでは負けませんからね、えっへん。……というのはまあ置いといて。よろしくお願いしますね、ドルトさん』


『弓の名手にして、拠点防衛のスペシャリストだとキルトなる者から聞いている。貴様の働き、期待しているぞ』


 ユウとミサキもまた、サモンマスターと組んで三人チームを結成している。彼らと共にいるのは、ドルトと名乗る物腰柔らかなエルフの青年。


 またの名を【サモンマスターアーチ】というドルトの得物は、エルフらしく弓。その実力の高さを、ユウたちはキルトから何度も自慢げに聞かされていたのだ。


「はは、期待に添えるよう全力を尽くすよ。まあ、見ていてほしい。俺の得意技は、超遠距離からの監視と狙撃。一度狙った相手は外さないさ、必ず頭を射貫く。それが俺の信条だ」


「へえ……それは楽しみだ。私はまだ、シャーロットたちと違ってサモンマスターの……ん、この警報は」


『伝令! 伝令! ガンドラズルとリーヴェディア国境より南東二十四キロ地点、上空にポータルの出現を確認! 至急出撃しポータルを破壊せよ!』


『来たな。連中め、地上ではなく上空から部隊展開を狙ってきたようだな。ま、地上は粗方ポータル開設を阻害する小型装置を置いてあるからな、どう足掻いても降下作戦を採らざるを得まい』


『ええ、そういうことです。さ、行きますよミサキさん、ドルトさん。クァン=ネイドラ防衛作戦の始まりです!』


 のんびりと話をしていたその時、ギルド全体にけたたましい警報が鳴り響く。ついにフィービリア軍が侵攻を開始し、クァン=ネイドラ各地へ現れたのだ。


「来たか、なら……早速見せてやるさ。この俺、サモンマスターアーチの狙撃術を。一人として、この大地に住む者を傷付けさせはしない」


 ユウの言葉に頷き、ドルトは虚空から呼び出した弓型のサモンギアを指で撫でる。ワープマーカーを使い、一行はアナウンスされた敵の出現ポイントに向かう。


 そこではすでに、地上に降下せんとする闇の眷属たちとそれを阻まんとするリーヴェディア王国の騎士団が交戦を始めていた。空より来たる飛竜部隊を、騎士たちが大砲で狙っている。


「次弾装填! 細かい狙いはつけなくていい、とにかく撃って撃って撃ちまくれ! 地上に到達させなければ我々の勝ちだ!」


「ハッ、承知し……あ、隊長! あそこをご覧ください、パラディオンの方々が到着なされたようです!」


「ん? おお! こんなにも早く加勢に来ていただけるとはありがたい! よし、彼らに戦況を伝えてこい。力を合わせて戦うのだ!」


 応戦していた騎士の一部が、ユウたちに気付き駆け寄ってくる。彼らから戦況を聞き、現在どちらが優勢とも言い難い状況であることを少年たちは知らされた。


「よし、なら俺の出番だ。レールタイバー、仕事の時間だ。今日も力を貸してもらうぞ!」


『カカカキュイ!』


『サモン・エンゲージ』


 ドルトはデッキホルダーに宿る相棒に声をかけた後、カードを取り出し弓に取り付けられたカードスロットに差し込む。すると、音声が鳴り響き……沈黙の狙撃手が姿を現す。


「へえ、凄いものだね。サモンマスターの変身とはこういうものなのか。では、お返しに私たちの変身も見せてあげよう。ダイナモギア・ソウルアクセス。マギドラマヴリオン、スタンバイ!」


『行きますよ! ビーストソウル・リリース!』


 ドルトに続き、ミサキとユウもそれぞれの力を解き放つ。白銀の竜の如き装甲を、銃の魔神の力。それぞれが纏い、遙か天の彼方を見上げる。


 その先にあるのは、軍勢を送り込んでいる巨大な円形のポータルだ。ソレを破壊しない限り、延々と敵が湧いてくる。敵の撃滅だけでは、いずれジリ貧に追い込まれるだろう。


「二人とも凄いな、これは俺も負けていられないぞ。……地上からアシストする、二人はあのポータルを破壊してきてくれないか」


『フッ、言われずともそうするさ。して、貴様はどう我らをサポートするのだ?』


「こうするのさ、まあ見ててくれ」


『リレイコマンド』


『インビジブルコマンド』


 ヴィトラに問われたドルトは、二枚のサモンカードをスロットインする。直後、ユウは見えない何かが大量に出現し、上空に散らばっていったことに気付く。


『ドルトさん、今何かを呼び出してあちこちにバラ撒きましたよね?』


「ああ、今呼び出したのは狙撃中継衛星。それに矢を射てば、勢いを加速させつつ狙った敵の元に矢をぶち込めるってわけさ。透明にしてあるから、敵に見つかることもない」


『なるほど、なら我らは誤射にさえ気を付ければいいというわけだ。行くぞユウ、連中を仕留めてやろうではないか』


「我々騎士団も援護します、共に頑張りましょう!」


『ええ、それじゃあ……始めましょうか!』


 ユウは仲間たちの言葉に頷き、空を見上げニッと笑う。クァン=ネイドラの命運を賭けた、大戦争が今──火蓋を切って落とした。

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― 新着の感想 ―
この場にサモンギア、ダイナモギア、ビーストソウルまで揃って変身とは(゜o゜; 最近見かけないオタクメガネはどうした?(゜ο゜人)) 空想特撮じゃないマジモンの変身だぞ(´-﹏-`;)
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